人文社会系研究

東アジアの激動の時代を記録するBrillの電子コレクション

2018.05.15

Brill社が提供する東アジア近現代史関連のデータベース群をご紹介します。著名な東アジアのジャーナリズム史研究者、武蔵野大学Peter O’Connor教授が監修するこれらのデータベースが提供する資料は、19世紀から20世紀中頃の東アジア史研究に有用な重要資料でありながら、良好な状態で保存されている原本が非常に少なく、長らく原本の発見と利用公開が待ち望まれていました。近現代史、アジア地域研究、政治・紛争史研究などにご利用ください。

※Brill社のデータベースは、大学等教育機関向けにご提供する有料サービスです。

North-China Daily News Online

字林西報:19~20世紀を代表する中国の英字新聞

本データベースが提供する英字新聞North-China Daily News(字林西報)は、1864年に、東アジア最大の国際都市であり、中国経済、政治、文化、教育の中心地となりつつあった上海で創刊されました。いわゆる不平等条約体制の一世紀間の中国および東アジアを研究する際に最も重要な文献のひとつです。

同紙は、中国全土と東アジア各地の特派員が同社に送りこむニュース、ゴシップ、外国人租界での政治と文化事情、貿易、統計、物価、中国語による文芸、地図、写真等々、夥しい情報を英語で発信し続けました。また、人種のるつぼであった上海の新聞として、英国人のみならず、フランス、デンマーク、イタリア、ドイツ、オランダ等の諸外国人の現地コミュニティの情報も網羅しています。

日露戦争以降、東アジアにおける日本の動向が注視され、特に1930年以降、日中が事実上の交戦状態となる中、この新聞は欧米の東アジア情勢に関する世論形成に大きな力を有しました。海外メディアが伝えた日本を研究する資料としても有用です。

※North-China Daily Newsは、日刊紙の宿命で良好な状態で保存されている原本は非常に少なく、これまで利用・入手が非常に困難な資料でした。そのため、Brillが提供するデータベースの収録コンテンツにも、欠号が少なからず存在します。これらの欠号に関し、Brill社は原本発見の努力を継続しており、原本発見次第電子化し、データベースへの追加収録を予定しています。その際、既にご購入いただきましたお客様には、コンテンツ追加に伴う追加チャージは発生いたしません。

North China Standard Online

華北正報:1920年代における混乱期の中国を記録

北京で刊行されたNorth China Standard(華北正報)は、アジアにおける勢力拡張とリーダーシップを主張した戦前期日本の新聞の1つです。1919年12月から1930年までと、刊行期間が短かったにも関わらず、Japan TimesやJapan Mailと並び立つ英字新聞です。

国際通信社の総支配人で近代日本のプロパガンダ計画の設計者ともいえるJohn Russell Kennedyにより創刊された同紙は、日本の権益を主張するための単なる宣伝機関紙になりかねなかったところを、才能ある3名の編集者によって救われ、真のジャーナリズムに裏打ちされた本物の新聞へと変身します。これらの編集者、Satoh Kenri(佐藤顕理)、John S. Willes、George Gorman は質の高い現地ジャーナリストを雇い、自らも筆を執りました。SatohとGormanは日本の肩を持つ老練なジャーナリストでしたが、日本の立場を向上させる最善の道は真の議論を通じてこそ、という姿勢により、第一次大戦後の中国内外の読者に良質なニュースを提供しました。同紙は国際会議の資料としても選定され、会議の参加者に無料で配布されたことも知られています。

1920年代の混乱期の中国を知る上で、価値ある一次資料です。

※収録コンテンツには、原本の入手状況および状態により、ページイメージの欠損、 欠号がございます。

Japan Chronicle Online

神戸発、大正から昭和にかけて日本外字紙界に君臨した日刊英字新聞

本データベースは、神戸で創刊された英字新聞Japan Chronicle を、入手が困難な号、これまで電子化されたことのない号も含めて収録します。さらにJapan Chronicleの前身にあたるKobe Chronicle(1900-1901年)や、補遺版、書籍もあわせて提供します。

Japan Chronicleは、明治35年(1902年)に東洋最大の条約港として栄えていた神戸で創刊されました。明治24年10月(1891年)に、イギリス人Robert YoungがJapan Chronicleの前身にあたるKobe Chronicleを創刊、明治30年7月(1897年)より海外向けの週刊版を発行開始、明治32年(1899年)にHiogo Newsを買収、その後Japan Chronicleと改題されました。軍国主義の風潮が高まる日本において、近代的な新聞経営で生き残りをはかるべく表舞台に登場してきた新聞の1つです。大正から昭和にわたり、第一のイギリス系英字新聞として日本外字新聞界に君臨、言論の自由を掲げ、日本関係のニュースを国際的に取り上げました。昭和15年12月(1940年)にジャパン・タイムズ社の傘下に入り、昭和17年1月末(1942年)で終刊します。

Japan Chronicleは、20世紀前半の世界を舞台に、近代化を目指す日本と、戦争を通じて起きた東アジアの政治的、社会的な変化を記録した資料として、東アジア史の研究者から、長らくその価値を認められてきました。明治27年10月から翌28年にかけて小泉八雲が編集に関わったことでも知られます。

Manchuria Daily News Online

南満州鉄道株式会社が刊行した英字新聞「満州日報」と関連出版物

Manchuria Daily Newsは、南満州鉄道株式会社(満鉄)の機関紙「満州日報」から独立した英字新聞です。在満日本人の世論形成と、駐在欧米外交官や新聞関係者を通じて日本の主張と正当性を国際的に宣伝する役割を担った「満州日報」は、同地への外国人の往来が増加するのに伴い、英字欄を創設、その後日露戦争での勝利をきっかけとして、満鉄調査部の厖大な情報と潤沢な資金をバックに創刊されました。

本データベースはManchuria Daily Newsを、不定期で刊行された関連タイトルManchuria Magazine、Manchuria Month、Contemporary Manchuria、Manchuria Information Bulletinとあわせてご提供します。Manchuria Daily Newsは、1908年初頭から1912年までと、1919年10月から1921年2月の刊行中断期を除き、1912年から1940年の刊行分を事実上完全に収録します。

収録タイトル

  • Manchuria Daily News, 1912-1940
  • Manchuria Magazine (Manchuria Daily Newsの隔週刊行誌), 1936-1939
  • Manchuria Month (Manchuria Daily Newsの月刊誌), 1930, 1940-1941
  • Contemporary Manchuria (Manchuria Daily Newsの隔月刊行誌), 1937-1939
  • Manchuria Information Bulletins, 1932-1944

Mobilizing East Asia Online
Newspapers, magazines and books from the 1900s-1950s

軍事化する東アジア-日露戦争から太平洋戦争とその後まで

2つの大戦とその前後の時期にあたる1900年代から1950年代にかけて、東アジア各地で発行された英語の新聞、雑誌、パンフレットを収集した電子コレクションです。他では入手が不可能なタイトルなど、稀少な出版物1,200点強100,000ページ分を厳選提供します。収録されている新聞およびイラスト入り雑誌には彩色刷りのものも多く含まれており、これらすべてをフルカラーのページイメージで収録します。

日露戦争と日韓併合、満州事変から日中全面戦争を経て太平洋戦争へと続く十五年戦争、中国本土の政治体制の転換と東アジアにおける冷戦時代の幕開けまでを網羅する本データベースにより、アジアの国で初めて西欧列強のひとつを破った日本が第二次世界大戦で惨敗するまでの道程と、戦後東アジアの地殻変動ともいうべき状況を多様かつ斬新な切り口から捉え直すことが可能になります。

収録定期刊行物

東アジアにおける紛争の揺籃、満州から

  • Manchuria Month (Manchuria Daily Newsの月刊誌), 1930, 1940-1941
  • Manchuria Magazine (Manchuria Daily Newsの隔週刊行誌), 1936-1939
  • Manchuria Information Bulletins, 1932-1944
  • Contemporary Manchuria (Manchuria Daily Newsの隔月刊行誌), 1937-1939
  • Manchuria Daily News, 1912-1940
    南満州鉄道株式会社より1908年に大連で創刊。東京からの潤沢な資金提供と満鉄調査部の厖大な情報をバックに中国における日本のプレゼンスをあらゆる方面において示しました。

狭隘化する日本の中枢から

  • Contemporary Japan, 1932-1953
    半官機関の日本外事協会(Foreign Affairs Association of Japan)が年4回刊行した雑誌。昭和研究会の蝋山政道などの思想家が監修。創刊号において、満州や上海における日本の活動を強く擁護する外務大臣芳澤謙吉の言葉が掲載され、徹頭徹尾、日本の東アジア政策を代弁すると明言してはいるものの、当時の混沌としたジャーナリズムにおいて理性的な論述が特徴。寄稿者のなかには心底からの汎アジア主義者も多かったものの、かれらは中国との戦争、さらに戦後のいわゆる「逆コースの時代」にその理想が打ち砕かれるのを体験します。本誌は戦後占領期まで刊行されました。

経済誌

  • The Trans-Pacific, 1933-1938
    (副題:A Weekly Review of Far Eastern Political Social and Economic Developments
    The Japan Advertiser Annual Review of Finance, Industry and Commerce,
    October-November 1929, 1930-1931, 1931-1932, 1938-1939
    軍事経済へとシフトする日本がABCD包囲網の下で苦境に陥り、石油、鉄鋼等の物資調達のために戦争遂行が唯一の打開策と考えるに至った過程が読み取れます。日本で刊行された雑誌(アメリカ人により編集発行)でありながら、日本の視点からではない論述が特徴です。

言論の戦士たち

  • Japan Times Weekly, 1938-1943 /  Nippon Times Weekly, 1943-1944
    真珠湾攻撃に続き、中国および南方での戦闘に勝ち進んだ日本は、各地の既存の英字新聞や現地語新聞も掌中におさめ、廃刊あるいは全面的な改変を強いたものの、その時代にあってJapan Times Weekly, 改名したNippon Times Weeklyは大東亜共栄圏における代表的な定期刊行物となりました。

アジア在住の米国人ジャーナリストたち

  • Japan News-Week, 1938-1941
    1938年11月創刊。Japan AdvertiserやJapan Chronicleなどの英字新聞が、日本の外務省から資金提供を受けるようになる中、海外資本が所有し続けた最後の新聞として、反骨の米国人ジャーナリストWillsにより真珠湾攻撃前夜まで東京で刊行。ヨーロッパ情勢の報道については、英独両大使館の見解をそれぞれ”British Version”と”German Version”と見出しを付け並べて掲載。本コレクションでは、米国のWills家が保存していた希少なオリジナルから初めてデジタル化が実現した。
  • China Weekly Review, 1947年7月から1949年2月にかけて刊行された30号分を収録。 /
    China Monthly Review, 1952年1月から1953年7月にかけて刊行された10号分と1957年の特別号を収録。
    China Weekly Reviewはアメリカの敏腕ジャーナリストJohn Benjamin ‘JB’ Powellの下、上海で刊行された週刊誌。Powellは日本軍による拷問を受けて帰国。戦後、息子のJohn William Powellが上海に戻りReviewを初めは週刊誌、のちに月刊誌として復刊。親共産主義であったPowellは、マッカーシズムが席巻する米国で、朝鮮戦争の報道をきっかけに扇動罪により告発されます。本コレクションにはこの事件に関連した刊行物もあわせて収録されます。

その他

  • Hongkong News, 1941-1945
    日本占領期の香港でE.G. Oguraが旧South China Morning Postのメンバーをそのままスタッフとし同じ場所で編集発行。 アジアのあらたな覇者となった日本の声を伝えます。
  • Israel’s Messenger, 1904-1941
    上海租界の富豪サッスーン一族と同じくセファルディ系ユダヤ人だったNissim Elias Benjamin ‘N.E.B.’ Ezraが上海シオニスト協会の機関誌として創刊。米国でも売上は好調で、米国の対外政策への影響も指摘される。日本との関連では、1933年にIsrael’s Messengerが、日本を大東亜のリーダーと評して公に支持し、批判されたことが特筆されます。

※上記以外にも多数の出版物を収録します。

※本データベースでは、新しいコンテンツを入手次第、追加収録を予定しています。既にご購入いただきましたお客様には、コンテンツ追加に伴う追加チャージは発生いたしません。

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