前回の記事では聖徳学園中学校(東京都武蔵野市)の生徒が朝読の時間にiPadを使って電子図書館で本を借り、電子書籍で朝読をしている様子を紹介したが、その電子図書館を管理・運営しているのが図書館だ。聖徳学園では2016年7月から電子図書館サービスLibrariE(ライブラリエ)を導入し、現在約470冊の本を電子図書館に搭載、読書支援に役立てている。
今回は導入に至った経緯、導入後の感想を図書館司書の新倉晃先生に伺った。
iPadの活用・書架スペースの削減のため導入
図書館を管理・運営されている、司書教諭・新倉晃先生
–まず、LibrariEを導入された理由をお聞かせ頂けますか。
iPadを1人1台配布しているので、それを利用するにはうってつけと思い導入しました。ただ、今は中3以上はiPadを持っていないので、利用が中1と中2に集中しています。(※取材時は2016年11月。2017年4月に新1年生が入学し、中学生全員が所持するようになった。)
もうひとつの理由は、図書室が狭くて蔵書がいっぱいなので、何らかの形で処置しないと、という理由です。それでもうこれしかないなということで導入を決めました。
回転塔まで本がぎっしり詰まっている聖徳学園の図書室。とにかく、この書架不足の問題を解消したかった。
–導入して良かったと思う点はなんでしょうか。
生徒に読書の機会が広がったことです。実は図書館の利用者は、導入前と導入後で減っていないんです。以前から図書館を利用していた子は引き続き利用するので、それ以外の子(今まで図書館をあまり利用していなかった子)がLibrariEで本を読むようになっています。結果、読書の機会が増えている。これまで本にはあまり見向きもしなかった子から、興味はあるけどなかなか図書館に来られなかった子まで、読書の機会が増えたのが良かったと思います。
–電子図書館を導入すると図書館に来なくなってしまうのではという懸念をよく聞きますが、そうではないんですね。
-ところで導入にあたり、中1と中2しかタブレットを持っていないという環境の格差に対して、反対意見は無かったのでしょうか。
いえ、予算があっても本棚が一杯で本が買えない、というどうにもならない理由がありましたので、特に反対といったものはありませんでした。だから選択の余地はほとんどなかったんです。(笑)
–特に利用の多いコンテンツはなんですか?
やはり読みやすいもの、ライトノベルが多いですね。ライトノベルは紙の本だと場所を取ってしまうので電子で購入しているんですが、利用が多いですね。ですが、それとは対極にある、ブルーバックスとか勉強の本も娯楽の本と同じくらいの割合で読まれています。どれくらい読まれるかなという気持ちで入れてみたのですが。
紙の書籍とのバランスは?
–購入するコンテンツについては、「これは電子、これは紙」と決めていらっしゃるのでしょうか。
事典とか調べものの本は紙の方が良いということはありますので、そういうものは残しつつ、読み物は電子書籍中心にしています。
聖徳学園の電子図書館。読み物中心に約470点(2017年6月現在)を購入。
この時は英語多読の本を特集している。
–少し外れてしまうのですが、将来的に高校も含めて全生徒がタブレット持ち、ほぼ全員が電子書籍を利用できるようになった時、ここの図書室というのはどんな風になっていると思いますか?
やはり小説などの読み物は少なくなっていって、事典や調べ物の本が中心になっていくのではと思います。あと、「紙の方が良い」という子もやはりいるので、そういった子の存在も尊重したいと思います。全部電子になりました、というわけにはいきません。
–生徒さんと話をしたとき、「自分は紙派だ」という子がやはりいました。紙の本に親しんでいる子の存在も大切にされたいという事ですね。
導入後の変化 ―装備、督促の手間がなくなり楽に
–図書館業務にはどのような変化がありましたか?
楽になりました。まず装備の手間はありませんし、返却が遅れて督促するという事もありません。生徒も紙の本ですと失くしてしまうことがよくありますが、それもなくなりました。
–逆に大変になったことは何ですか?
特にないですね。最初に選書する時だけ沢山入れましたが、その後はぱらぱらといった感じで入れているので、管理も特に大変ということはありません。
図書館管理者用の選書ぺージでスピーディーな選書が可能。購入前に全文試し読みをすることができる。
聖徳学園では図書委員の生徒も選書に参加している。
–生徒さんにはどういう広報をされたのでしょうか?
図書室だよりを作っているので、それに「利用してください」と書いて配りました。あと、新刊案内を定期的に出しています。それから電子の環境でも広報をしていて、「サークルボード」という所に掲示を出しています。それを何人が見て、そのうちの何人が既読したかまでわかるようになっています。8割方の生徒が見ています。
–アカウント(ID・PW)は学籍番号ですか?
今年は全員ID・PWを両方学籍番号で初期登録して、パスワードはマイページで任意に変えるように指示しました。
今後について ―コンテンツの増加に期待
-LibrariEに今後期待することはなんですか?
それは何と言ってもコンテンツです。電子になっていない本、買えない本というのがまだまだ沢山あるので、特に最新の本を増やしてほしいです。とにかくすぐ読めるような新しいものの幅が広がればいいなと思います。
–特にどういうジャンルのコンテンツを期待していますか?
小説関係ですね。あとは科学分野です。日々進歩していますから、電子書籍で最新のものを入れて読ませたいなと思います。
【聖徳学園図書室の情報】
蔵書数:紙の書籍…18,000冊
電子書籍…400冊(2017年3月時点)
スタッフ:専任1名 非常勤1名
電子書籍の購入予算:約80万円/年(2016年度)
貸出期限:紙の書籍…2冊まで/電子書籍…1冊まで
貸出期間:紙の書籍…2週間/電子書籍…1週間(延長1回1週間)
開館時間:12:00-18:30
【LibrariE、記事についてのお問い合わせはこちら】
紀伊國屋書店 ICT営業本部 電子書籍営業部
ict_ebook@kinokuniya.co.jp TEL:03-5719-2501
(紀伊國屋書店 電子書籍営業部 荒川)
第3回に続く (次回:ICT支援員・横濱先生に聞く、聖徳学園のICT教育)