図書館をつくる

関西大学図書館のSDGsへの取り組みについて

2021.10.27

はじめに

関西大学図書館では、2019年度から「KU Library thinks SDGs」と銘打って、学生に訴求できる題材としてSDGsを取り上げ、大学図書館としてどのようなことを提示できるかを考え、企画展示を行っています。

関西大学では、2018年12月に、当時の芝井敬司学長を座長とするKANDAI for SDGsプロジェクトが設置され、全学的にSDGsを推薦していく方向性が示されました。

今回はこの場をお借りして、教員と事務職員、そして図書館の現場で勤務されている紀伊國屋書店スタッフの方々と協力して作り上げている関西大学図書館のSDGsへの取り組みの一部をご紹介させていただきたいと思います。

教員推薦図書の展示

企画展示を通して、SDGsを学生に浸透させる最も効果的な方法は、学生にとって身近な存在である先生方にご協力をいただくことではないかと考え、今までに学長・副学長をはじめとする多くの先生方にSDGsに関連する図書を推薦いただきました。

2021年10月から予定している今年度の展示でも、大学運営に携わる執行部の先生方、そして全学部の先生方が入れ替わりで、各自の研究とSDGsとの関係を講義する「SDGs入門」という授業をご担当される先生方から、図書の推薦をお願いしました。合わせて推薦図書のコメントもお願いし、現場スタッフの方々にお願いして推薦コメントを入れた特製の帯を作ってもらい、展示しています。

この教員推薦図書の帯の効果は顕著に表れ、今までの展示では、展示コーナーに「貸出中」と書かれたPOPが8割近くを占め、常時半数の図書は貸出されているという図書館員にとって大変嬉しい結果につながりました。

2020年度 教員推薦図書: KU Library thinks SDGs 2020
2021年度 教員推薦図書: KU Library thinks SDGs 2021

教員推薦図書の展示コーナー

教員推薦図書に付した帯

テーマを決めた企画展示

先生方に推薦いただいたSDGs関連の図書の展示の他にも、現場の紀伊國屋書店スタッフの方々にアイデアを出していただき、企画展示を行っています。今までに行ったSDGs企画展の内容は次の通りです。

2019年度企画展テーマ:「わたしたちは世界を変えられる」
(KANDAI for SDGs推進プロジェクトによる教員推薦図書を中心に、17の目標を達成するためのヒントとなる本を5期に分けて展示)

2020年度企画展テーマ:「向き合う、広がる、新学期」
(春学期がリモート授業となってしまい、思い描いていた新学期を迎えることができなかった学生に向けて、「新学期」をメインテーマとした展示を4期にわたって実施)

そして、今年度はテーマを「考える。大阪・関西万博×SDGs」として、2025年に実施される大阪・関西万博にスポットを当て、大阪府・大阪市が万博開催に向けて掲げている「万博のインパクトを活かした大阪の将来に向けたビジョン」に着目し、その中で紹介されている大阪府の将来像から、「課題が多いと考えるゴール」「強みを活かせると考えられるゴール」にテーマを分けた展示を実施する予定です。

2021年度企画展テーマ:「考える。大阪・関西万博×SDGs」

企画展示コーナー

企画展示ポスター

SDGs電子図書館

本学では、2018年度より『新入生に贈る100冊』という読書啓発の取り組みを実施しています。これは、若者の読書離れを危惧して、学長と大手書店である丸善雄松堂、紀伊國屋書店が協働して、新入生にぜひ読んでほしいお薦めの100冊を掲載した冊子を、入学式で新入生に配布しているというものです。(この取り組みは、以前「教育と研究の未来」にもご紹介させていただいております。詳細はこちらをご参照ください。)

今までの『新入生に贈る100冊』で取り上げた電子書籍の中でも、SDGsに関係する図書が多いことに着目して関連書籍をピックアップし、2020年度からSDGsの企画展と連動した『koaLABO e-book Selection: KU Library Thinks SDGs』という電子図書館のコーナーを図書館ホームページ上に立ち上げました。

いかにしてアクセス数を増やしていくかという課題と向き合いながら、今年度も『koaLABO e-book Selection: KU Library Thinks SDGs 2021』と銘打った電子図書館での展示を実施します。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、思うように大学へ足を運ぶことができない学生に、図書館を利用してもらい、そしてSDGsについて関心を深めてもらうためにも「電子図書館」という展示方法についてこれからも検討していかなければならないと、担当者として考えています。

おわりに

新型コロナウイルスの猛威は収まることなく、関西大学でも夏休み終了後9月21日から始まる2021年度秋学期は、10月11日まで原則として遠隔授業を行うことが決定しています(原稿作成時9月)。本学図書館も、コロナ禍前と比べ入館者数が減り、色々な図書の展示を行ってもなかなか学生に手にとって見てもらえないという現実があります。また、本学図書館のSDGsの取り組みも、開始した当初は国連広報センターの担当者の方に講演に来ていただいたり、紀伊國屋書店にご協力をお願いして天王寺ミオ店で本学SDGsキャンパスサポーターによるトークイベントを実施したり、梅田・札幌・新宿・神戸・福岡といった大都市でSDGsに関連する教員推薦図書の紹介ブースを設置したりといった様々なアプローチを行ってきましたが、コロナ禍の日々が続く中で、新しいスタイルの企画が求められています。

今回この記事を書かせていただきましたのは、コロナ禍の中で関西大学図書館が今までのようなSDGsの取り組みを実施できない中でも、SDGs電子図書館など実際に図書館に足を運ばなくても提供できるサービスに取り組んでいることを、少しでも多くの人に知っていただければと思ったからです。

今回の記事を通して、本学図書館が行っているSDGsへの取り組みについて、少しでもお知りいただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

(関西大学図書館事務室 サービス担当)