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【洋古書】ナジアンゾスのグレゴリウス《講話集》初版

ギリシア教父グレゴリウスの三位一体論に関する講和を含む講和集、初の刊本

関連ワード:アルドゥス版 キリスト教 ギリシア教父 ビザンチン 三位一体論 古書 洋書  更新日:2025.09.25

ナジアンゾスのグレゴリウスは、キリスト教父の中でも特に「教会博士」として尊敬され、その神学理論は後世に大きな影響を与えた人物です。1500年代初頭、アルドゥス書肆から出されたこの刊本は、それまでギリシア語写本で伝わってきたものを初めて印刷本にまとめたものです。古典刊本の傑出したコレクションを集めたことで知られるヘンリー・ドルーリー の旧蔵本。黄色のモロッコ革製本は十九世紀初め、名工として知られたチャールズ・ルイスの手になるものです。

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—以下、「紀伊國屋書店 古書目録 2020」より—

ナジアンゾスのグレゴリウス《講話集》初版
GREGORIUS NAZIANZENUS. Orationes lectissimae xvi. Venetiis, in aedibvs Aldi, et Andreae Soceri, mense Aprili, 1516.

¥836,000 売却済

8vo, leaves (7), 311, (1); lacking the last blank leaf of the preliminaries; woodcut Aldine device to the title and the terminal leaf, text in Greek, a few headings printed in red; lower margin of title-leaf reinstated, upper corner of L1 and L4 repaired, occasional light thumbing and soiling, but a very good copy; bound by Lewis in citron straight-grain morocco, elaborately panelled in blind with the Aldine device gilt to the covers, title lettered in gilt to the spine (rubbed and worn, top of spine restored); from the library of Henry Drury, with his inscription and manuscript note to upper corner of the fly-leaf. Legrand 50; Renouard pp. 75-6; Ahmanson-Murphy 144; Adams G1157; EDIT16 CNCE 21740.

紀元四世紀後半に活躍したナジアンゾスのグレゴリウスは、皇帝テオドシウス一世の信任厚く、コンスタンティノポリスの主教として紀元381年の公会議では議長を務めましたが、途中で辞任を余儀なくされ故郷ナジアンゾスに帰っています。バシレイオス、ニュッサのグレゴリウスと並んでカッパドキアの三大教父に数えられるこの主教の最大の功績は正統派教会を護持し、三位一体を巡る当時の論争に決着をつけた点にあり、正教会で今なお「神学者」の称号を付して讃えられるのはその故です。

グレゴリウスの現存する著作としては晩年の詩作や書簡もありますが、筆頭にあげられるのは四十五篇にのぼる講話でしょう。かつてカエサレアとアテネの学院で修辞学の研鑽を積んだグレゴリウスは、その技巧を惜しみなく駆使しながら説得力に満ちた議論を展開しています。特に紀元380年コンスタンティノポリスにおける三位一体論に関する五つの講話(第二十七篇から第三十一篇)は有名。

ギリシャ語原典の初刊本にあたるこのアルドゥス版は、この三位一体論五篇に加えて「ユリアヌス論駁」(第四・第五篇)、神の顕示、光、洗礼といったキリスト教神学の根幹に関わる考察(第三十八篇から第四十篇)、復活祭とペンテコステの講話(第四十五・四十一篇)、そして少年時代からの盟友であったバシリウスならびにアタナシウスの追悼講話(第四十三篇・第二十一篇)など計十六篇を収録しています。グレゴリウス講話集の古写本には典礼を主題とする十六篇の選集が数多く伝存していますが、アルドゥス版はもとより内容を大きく異にします。

アルドゥスは1504年にグレゴリウスの詩選集 Carmina を希羅対訳で刊行していました。この講話集は1516年、アルドゥス・マヌティウスがこの世を去った翌年の刊行で、義父アンドレアス・トレサーニが上梓。編者はアルドゥスの多くのギリシャ語刊本を手懸けたマルクス・ムスールス。そのラテン語献辞は当時フランスのヴェネツィア大使として赴任していたジャン・ド・パンに宛てられています。

上掲本は古典刊本の傑出したコレクションを集めたことで知られるヘンリー・ドルーリー (1778-1841) の旧蔵。父ジョゼフはパブリック・スクールの名門ハロー校で二十年にわたり校長を務め、その教育水準を飛躍的に高めたことで有名。ヘンリーはハロー校からイートン・コレッジに進み、ケンブリッジで学位を得たのち母校ハローで教鞭を執りました。教え子の一人、詩人バイロンとは後年まで親しく文通を続けています。当時優れた古典学者として知られ、ロクスバラ・クラブの創設会員だったことからドルーリーの古書に対する高い見識は推察しうるでしょう。彼の蔵書の大半は1827年二回の競売に付され、残りは彼がこの世を去った1841年に売却されました。このグレゴリウス初刊本は1827年二月十九日の第一回競売、461番。見返しにはドルーリーの特徴的な書込みが加えられています。

黄色のモロッコ革製本は十九世紀初め、名工として知られたチャールズ・ルイスの手になるもの。前付最終葉(白紙)は切除されていますが、ルヌアールによればしばしば欠落しているタイトル葉は現存。タイトル葉ならびに最終葉にアルドゥスの木版商標「錨に海豚」が見られます。

タイトル葉下部余白に補修、製本は背などに補修。

(学術洋書部)