ヨーロッパのスポーツとしての水泳の歴史は古代ローマ時代に遡ると言われています。が、その後長い間、ヨーロッパ人は泳ぐことを忘れていたようで、ようやく19世紀の初めになり、名門パブリックスクールのハーロウ校で水泳目的のプールが作られるなど、水泳の効能が認識されるようになりました。
このページでご紹介のフロストの水泳教本は、まさにこの時代のもので、12枚の図版でさまざまな練習方法が紹介されています。
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—以下、「紀伊國屋書店 古書目録 2020」より—
【洋古書】フロスト《科学的水泳法》初版
FROST, J. Scientific swimming; being a series of practical instructions, on an original and progressive plan, by which the art of swimming may be readily attained, with every advantage of power in the water. Accompanied with twelve copper-plate engravings, comprising twenty-six appropriate figures, correctly exhibiting and elucidating the action and attitude, in every branch of that invaluable art. London, printed for the author, by Darton, Harvey, and Darton, 1816.
¥528,000
8vo, pp. xvi, 49, (1) directions to the binder, (2) advertisements; 12 leaves of engraved plates, folded (Pl. 6 with clean tear mended, with minor loss to the engraved image); light thumbing and occasional mild spotting, the last few text leaves with repair at inner margin, but otherwise a good sound copy, rebound in quarter sheep on linen boards, red morocco title label to the spine, lightly rubbed.
英国人による第二の水泳文献。著者フロストはノッティンガム、ミドル・フロストの人。伝未詳ですが、巻末最終葉の広告には著者が自宅で水泳の教授をしていることに加え、煙の少ない新型煙突の発明家であることが示され、この煙突に関する著書の予約購読が宣伝されています。ただしそれが出版された記録は見当たりません。
フロストは水泳術習得の効用として、自らの安全が確保できることに加え、健康・衛生の増進、水に対する恐怖心の克服、人命救助などをあげています。本文ではまず腕と足の動きを習得したうえで、平泳ぎと背泳ぎ、立ち泳ぎ、潜水の泳法を解説し、さらに水中での浮き方についても章を改めて説明を加えています。また「悪い泳ぎ方についての考察」や、木の板とコルクで自作し、水中で背筋をまっすぐに保ちながら浮力をつけるための補助器具の使い方も詳しく示しています。
エヴァラード・ディグビーの水泳論 De Arte Natandi がロンドンで刊行されたのは1587年のこと、その八年後に出版された英訳 A Short Introduction for to Learne to Swimme は英語による最初の水泳文献として知られます。1699年以降フランス人テヴノの水泳法が英訳で流布しますが、長く英国人の手になる著作は登場することがありませんでした。このフロストの水泳教本はディグビー以来実に二百三十年ぶりに著されたものとなります。
稀少。本書は二年後ニューヨークでも刊行されました。図版の一つに補修が見られ、ごくわずかな欠損があります。
(学術洋書部)