図書館をつくる

OCLC News 34号

2019.12.05

OCLC News 第34号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。

―OCLCのリーダーたちが知見や経験を共有するブログ Nextより―
公共図書館は命を救う社会関係資本を生み出す

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クリス・シャー (Chris Cyr), Ph.D.

災害に見舞われた時、図書館は人々を助けるために存在します。森林火災と停電により多くの人が家を離れざるを得なかったカリフォルニアで、Folsom Public Libraryのような図書館は充電器が必要な人々、WiFiを使いたい人々、そしてただ行き場所の必要な人々のための避難所となりました。2011年3月、日本の東北地方で大規模地震が引き金となって巨大津波が襲い、何千もの人命が奪われ、数十万もの人が家を失い、数百万の人が電気、水道を失ってその地を離れました。この恐ろしい災害後数か月間、政府、NGO、私設機関、国際機関が地域社会の回復を助けるために奮闘しましたが、住民達はまた、支援を求めて公共図書館へも目を向けていました

何故でしょう?図書館は食糧、水、電気、医療を提供する訳ではないのに。多くの場合、図書館はその周囲と同様の壊滅的被害を受けており、図書館のスタッフは亡くなったり、怪我をしたり、建物が完全に破壊、または使用不可能になったり、資料が台無しになったりしているのに。それにも関わらず何故人々は災害後すぐ図書館に向かったのでしょうか?それは社会関係資本がそこにあるからです。

そして、地域社会の中で作られたこの橋渡し役の仕組み全てを理解している訳ではありませんが、人々がなぜ公共図書館を大切にするのかの、非常に強力な部分である事は確かです。

社会関係資本とは?

社会関係資本についての最もよく知られた著作は1990年代にロバート・パットナムの著書、Making Democracy WorkBowling Aloneです。 パットナムは、Making Democracy Workで同じ政治制度を持つイタリアの複数地域を比較し、行政の有効性について異なる結果を見出しました。パットナムはその違いは各地域独特の歴史的社会的背景によるもので、一部の地域はその他に比べて地域社会への信頼感—すなわち社会関係資本—がより高いレベルであると論じました。

社会関係資本は社会と行政機能を正しく支援します。他人が自分と同様に社会を建設するため努力すると信じている場合、他人は人の努力にただ乗りすると思っている場合よりも多くの努力を費やします。人々がそれを信じない場合、より自分個人の利益に目を向けがちであり、それは時折集団の利益にとって悪影響を及ぼします。

これは地元の問題に当てはめる事ができます—乱獲の池で魚を捕っていないと言っている隣人を信用しないように—あるいは、先進民主主義国における教育のように複雑な何かに。例えば、我々は他人が同様に投資すると信じていれば、教育に対してや自身の学習に対してより進んで投資するでしょう。

図書館はどのようにして社会関係資本を創出するのか

図書館は市民の関与が最も具体的に表れるものの1つであり、社会と地域社会が学習と文化共有に対して行う投資を代表する場所です。この10年程の間でいかに図書館が地域社会における社会関係資本に貢献したかについての研究が増加しています。特に、ブリッジング(bridging)として知られるメカニズムを通じて図書館が創造する社会関係資本についての研究です。このブリッジングは地域社会の中で異なる下位集団に属する人々が集まった時に起こります。

我々自身の研究ではこれが日常どのように働いているかの証左を示しています。オハイオ州WorthingtonにあるWorthington Librariesでの我々の研究において、Visitors and Residentsプロジェクトで図書館利用者に彼らの経験についてインタビューを行いました。インタビューを受けた人々は、最近行われたFreedom Rides(1960年代のアメリカにおける公共交通機関での人種差別撤廃運動)に関する展覧会について言及し、展示の一部として実施したコミュニティーディスカッションを特に重要なものと強調しました。ある人は「長く生活していて知っているべきなのに知らなかった事の連続でした。幸いにも聴衆はいろいろな人種が混ざっていて、それがよかったです。議論の方向はあちこちに及びました。」と語っています。

ボンディング(bonding : 同質グループ内での結束)とは異なり、ブリッジングは異なる下位集団間で起こります。図書館は地域社会のあらゆるメンバーに開かれているので、人々を1つに集める活力のある空間として役に立ちます。このつながりは、単なる理論上のものではありません。最近の研究で、図書館のように身近な公共施設のそばに住んでいる人ほど他人に信頼を寄せる傾向にある事を示唆しています。

Andreas Vårheimはこの分野でトップを行く学者の一人ですが、図書館を会話が行われて、意見が形成される公的な場と見なしています。彼の研究で、図書館は第二言語としての英語、コンピュータ、市民学のような主題の講座に出席する移民と難民の中で社会関係資本が創出されることによってグループ間の溝を埋めるのに役立つものだとしています。OCLCのLorcan Dempseyは最近カルガリーを訪れた際、この事を間近で経験しました。

比類のない空間、絶好の機会

多くの公共図書館は何年もの間、明らかにこの分野で優れた業績を果たしてきました。最近のOCLC Research のディスカッションで登場した「ブリッジング」の例は:

地域社会の障壁を乗り越え、信頼感を創り出すようなすばらしいサービスがいくつもあり、それ以外の方法で障壁は壊せないでしょう。異なる地域、経済階層、世代、文化集団、家柄の人々を彼らの要求にこの上なく適していて—かつ信頼感のある—空間に集合させる。

図書館以外のどこでこのような事が起こりうるでしょうか?次に我々ができる事は:

  1. 図書館が異なる背景のもとで社会関係資本の創造者としていかに機能できるのか をさらに研究する事
  2. 異なる課題に直面している異なる規模の図書館においてもこれらの努力を再現、再生する方法を開発する事
  3. 我々の地域社会、利用者、支援者、資金提供者へこの比類なく強力な優位性を伝え、利用する手段を創り出す事

図書館は社会関係資本を創出する—我々が知っている事は地域社会や国家の成功にとって非常に重要です。我々にはこの価値ある資源をできる限り効果的に監督する事が必要とされており、それは図書館で所蔵する他の全ての資料に対して行うのと同じ事なのです!

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2018 – 2019 OCLC 年次報告

2018-2019のOCLC年次報告が公開されました。

今回のレポートは、「Transforming communities, technology, knowledge」と題して地域社会、テクノロジー、情報の変容とOCLCの取り組みについて取り上げています。以下は各テーマのトピックです。

【Transforming Communities】

  1. OCLC Wise®  公共図書館向け統合システム
  2.  Syndeo® 地域レベル、国家レベルの図書館連携を促進するためのサービスセット
  3. WorldShare Interlibrary Loan の機能向上
  4. WorldCat® Discovery  のオープンコンテンツ機能向上

【Transforming Technology】

  1. WorldCat® 書誌/所蔵レコード数、ナレッジベースコレクション数の増加
  2. WorldShare® Management Services (WMS) が働き方を変える
  3. Tipasa® クラウドでリソースシェアリング管理
  4. 共有プリントコレクションの画期的作業が加速

【Transforming Knowledge】

  1. リンクトデータでのリーダーシップ リンクトデータWikibaseプロトタイプを完成
  2. 図書館の未来を変える「 University Futures, Library Futures:Aligning library strategy with institutional direction 」を公開
  3. RIM (研究情報管理)への新たな機会 「Practices and Patterns in Research Information Management: Findings from a Global Survey 」を公開
  4. 現在図書館で最も広く利用可能な小説のリストThe Library 100: Top Novels of All Time

年次報告オリジナル(英文)はこちらから≫

(紀伊國屋書店 OCLCセンター)