図書館をつくる

OCLC News 37号

2020.01.31
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OCLC News 第37号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。

『OCLC News』一覧 >>

目次

  1. OCLCがリンクトデータ管理構想を支援するインフラ整備に対してメロン財団の助成金を獲得
    「実体管理インフラ」はリンクトデータの使用を促進し、最終的にウェブ上学術資料の発見可能性を改善
  2. CLCの新サービスEZproxy Analyticsが、図書館に電子リソース使用に関する優れた洞察を提供
    新しい分析によって、データの視覚化、レポートのカスタマイズおよび不正使用の検出が可能に
  3. ―OCLCのリーダーたちが知見や経験を共有するブログ Nextより―
    2019年のNextブログトップ10で第7位となった図書館目録に関する記事 (2019.7) をご紹介します。
    OCLCとPCC: 時代の変化を支える目録標準の変更

OCLCがリンクトデータ管理構想を支援するインフラ整備に対してメロン財団の助成金を獲得
「実体管理インフラ」はリンクトデータの使用を促進し、最終的にウェブ上学術資料の発見可能性を改善

2020年1月9日、オハイオ州ダブリン
OCLCは図書館と学術情報流通コミュニティーにおいて進行中のリンクトデータ管理構想を支援する共用「実体管理インフラ (Entity Management Infrastructure )」整備に対し、アンドリュー W. メロン財団から助成金を授与されました。整備完了後、このインフラはコミュニティとOCLCによって共同で情報を収集、整理、公開し、最終的には学術資料がWeb上でよりつながりやすくなり、また発見可能性が向上します。

2年間の助成金は2,436,000ドルで、2020年1月から2021年12月までに行われるプロジェクト作業支援に使用されます。メロン財団の助成金は、実体管理インフラプロジェクトに要する総コストの約半分を占めています。 OCLCは必要な資金の残り半分を負担しています。

「OCLCは長年にわたって図書館のリンクトデータ研究のリーダーであり、私たちの仕事に情報を提供し続けるプロトタイプ、革新的なパイロットプログラム、協力関係を発展させてきました」OCLCの社長兼CEOであるスキップ・プリチャードは述べています。「OCLCの利用により、図書館が協力してメタデータ作成における経済性、効率性、一貫性を実現できます。このプロジェクトに対する寛大なご支援をご提供いただいたメロン財団に感謝いたしますとともに図書館と学術情報流通コミュニティーを代表して、このインフラを構築するために知見と専門知識を是非活用したいと考えています。」

OCLCは助成金を使用して、永続的、集中型インフラの一部として、著作(Work)および個人(Person)に対する統一形式で容易にアクセス可能な実体記述を公開します。このインフラは、外部の語彙・典拠ファイルでそれらの著作や個人が表現されている別形式へのリンクを集約します。OCLCはリンクトデータを実際のメタデータ作業に取り入れようとする図書館を支援するため、APIも提供します。

「これらの実体は、図書館、文化遺産団体、学術情報流通コミュニティーがコレクションや研究成果を管理し、ウェブ上でより容易に発見できるようにするための強固な基盤を確立します。」と、OCLC グローバル・プロダクト・マネジメント部長のメアリー・サウアー=ゲームスは述べています。

図書館は、学術資料やその他のコレクションをウェブ上でより発見しやすくする機会を常に求めています。 また、コレクションを他の関連コレクションに結び付ける機会を増やしたいと考えています。 発見可能で、信頼性があり、持続可能なリンクトデータ実体を提供する集中型インフラの構築は、それらの目標を達成するために働く図書館にとって重要な基盤を提供します。

「リンクトデータ使用が一般的になるために、図書館は拠り所となる重要な実体のために信頼性のある永続的な識別子とメタデータを必要とします。このプロジェクトはそのインフラの構築を開始し、分野全体を前進させます。」と、OCLC副社長、メンバーシップおよび 研究担当、チーフストラテジストのローカン・デンプシーは語ります。

OCLCは、主要な国立図書館、連邦機関、および研究図書館と協力し、インフラの持続可能性とそれらの機関の取り組みとの互換性を確保します。具体的には、OCLCはLD4Pコミュニティー ―スタンフォード大学図書館が主導し、メロン財団も資金を提供するLinked Data for Productionプロジェクトに参加する図書館― に関与し、システムが図書館のリンクトデータ環境の進化に対応できるよう保証します。

OCLCは、実体インフラにアクセスするためのさまざまなオプション― 図書館コミュニティが無料で利用できるものや、サブスクリプションで利用できるもの― を提供する予定です。また、Webを介して実体のURIとメタデータを公開し、図書館スタッフがこの実体のセットを編集、改善、追加するための方法を提供します。 OCLCは、図書館内外の作業フローでこれらの実体の採用と統合を拡大するためのAPIも提供します。

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OCLCの新サービスEZproxy Analyticsが、図書館に電子リソース使用に関する優れた洞察を提供
新しい分析によって、データの視覚化、レポートのカスタマイズおよび不正使用の検出が可能に

2020年1月14日、オハイオ州ダブリン
OCLCはターンキー方式の分析サービスEZproxy Analyticsを発表します。このサービスにより図書館はローカルサーバーを介さないホステッドアクセスのEzproxyを認証サービスで使用し、利用データから実用的な洞察を得て、より多くの情報に基づいて意思決定し、それが及ぼす重要な影響を実証できるようになります。

EZproxy Analyticsは、分析プロセス全体 ―データの蓄積、抽出、補強からレポート作成及び視覚化― を自動的に管理し、電子リソースの投資収益率を容易に理解、伝達します。

「OCLCは企業や協力図書館と連携して、利用者のプライバシーを確保しながら電子リソースの利用に関する貴重な情報を提供するサービスを開発しました。」とOCLC のグローバル・プロダクト・マネジメント部長、メアリー・サウアー=ゲームズは述べています。「EZproxy Analyticsは、使用状況の全体的な視点を提示し、計画と意思決定のために必要とする豊富なデータへの迅速なアクセスを提供します。 図書館が電子リソース使用量自動分析の恩恵を十分に受ける事を手助けするこの貴重な新サービスを紹介できて大変嬉しく思います。」

EZproxy Analyticsは、図書館が不正な電子リソースの使用を発見するのにも役立ちます。 ユーザーの資格情報が侵害されているかどうかを確認できるレポートが提供されるため、図書館スタッフは機密保護違反に対して迅速に対処できます。

OCLCは、EZproxy Analyticsを開発するために、Couperin.orgコンソーシアムと提携しました。このコンソーシアムは、フランス国立科学研究センター情報科学研究所 (CNRS Institute for Scientific Information) と共同でezPAARSEソフトウェアを開発したフランスの非営利組織です。OCLCは、本版環境に移行する前に、EZproxyホステッドサービスを使用している複数図書館において試験的にサービスを行いました。

EZproxyは、利用者のプライバシーを保護するため図書館用に構築されており、この20年間で信頼できるアクセス、および認証方法となりました。 世界中で数千の図書館がEZproxyを使用して、電子コンテンツへのアクセスを円滑に進めています。 EZproxy Analyticsは、EZproxyホストテッドサービスの一部として追加サブスクリプションで提供されます。

EZproxy Analyticsは、南北アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカのEZproxyホステッド版利用図書館で利用可能になりました。 オーストラリア、ニュージーランド、およびアジア太平洋諸国でのサービス提供は、今後2020年中に開始が予定されています。

EZproxy Analytics に関するより詳細な情報は左記リンクをご覧ください。

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―OCLCのリーダーたちが知見や経験を共有するブログ Nextより―
2019年のNextブログトップ10で第7位となった図書館目録に関する記事 (2019.7) をご紹介します。
OCLCとPCC: 時代の変化を支える目録標準の変更
シンシア・M. ウィテカー 目録担当

私が図書館の仕事に携わっている間に図書館の仕事と目録の実務は大小様々な点で大きく進化しました。分担目録作成の標準について論じる際、ほんの些細な変更も数千の機関、数百万のレコードに影響を与える可能性があるのです。

それは共同目録プログラム (PCC) のような組織を持つ事がなぜそんなに重要なのかの理由の1つです。オレゴン大学の図書目録チームリーダーでPCCの元議長、ロリ・ロバレはこう述べています。「PCCには、共同作業、基準、メタデータの専門知識、そしてトレーニングという優れた伝統があります。リンクトデータ環境への移行でこの強みをいかに活用するか検討するという現状は、PCCにとって刺激的な時期です。」続けてロリは、「我々は現在リンクトデータ運用の活発な実験、テストの局面に入っており、それは方針決定、トレーニング、稼働を可能にする活動を伝えるのに役立つはずです。今後については非常に多くの課題がありますが、道筋をつける手助けをしてくれているPCCの仲間と共に働けるのは大変嬉しい事です。」と語っています。

この種の実験は真剣な協力がなくては困難な事です。参照しているシステムやデータが図書館サービスの多くの場面で影響を受ける可能性があるからです。そんな場面に共同目録プログラム (PCC) は登場します。PCCは、書誌の基準とトレーニング方法を改善するための、共同的、国際的なボランティア活動です。PCCの活動には次のものがあります。

  • NACO (名称典拠ファイル共同作成プログラム) 個人、団体、地名、統一タイトル、シリーズ標目の典拠レコードをLC/NACO 典拠ファイルに提供
  • BIBCO (図書書誌レコード共同作成プログラム) 典拠作業済、請求記号付与済で少なくとも1つの件名標目の付与を行った図書書誌レコードを提供
  • CONSER (逐次刊行物共同目録プログラム)  典拠作業済の逐次刊行物及び統合型資料の高品質書誌レコードを提供
  • SACO (件名典拠共同プログラム) 米国議会図書館件名標目表 (LCSH) への件名標目追加の提言、及び米国議会図書館分類表 (LCC) への分類番号追加の提言

私は、個人的にもPCC運営委員会とPCC方針委員会のOCLC代表者ですし、OCLC とBIBCOの調整役 (運用委員会の2人の代表者の1人) ですので、PCCは私にとって重要なプログラムです。メタデータ品質管理担当及びOCLCリサーチの他のスタッフ達もPCCに積極的に関与しています。

文化、技術、図書館職の変化が世界を通り抜ける中で、PCCに参加する図書館員はニーズに合わせた目録作成の進化を導き、新たな学習環境で目標を達成するのに一役買っているのです。

PCCと共にあるOCLCの役割

OCLCは初期の頃からPCCと一体となって関わり、CONSERデータベースをWorldCat内にホスティングし、NACOノードとして機能し、WorldCat内へのBIBCOのレコード作成をサポートしてきました。PCCを構成する熱心なカタロガーのネットワークはOCLCが方針を通知する際の貴重な資料となっています。

プロバイダーニュートラル (同コンテンツでプロバイダー違いの電子資料について同一書誌レコードを使用する規則)、ハイブリッドレコード (RDA以前の基準で作成された、もしくはRDA非準拠の書誌レコードにRDAの目録項目を追加したもの) のようなPCC由来の基準はWorldCatで使用するために採用されてきました。米国議会図書館、英国図書館、カナダ国立図書館・文書館と並び、OCLCはPCC政策委員会の常任委員を擁しています。OCLCと米国議会図書館の代表は、選出された3人の議長 (次期議長、議長、元議長) と共に、PCC運営委員会を構成しています。作業委員会では2名のOCLC連絡役が活動しており、OCLC連絡役は各PCC常任委員会の常任メンバーです。

また、OCLCは、PCCメンバーへの補償として毎年の作業委員会会合への旅費を負担し、プログラムの年間資金援助を行い、米国議会図書館と共に、ALA会議で行われるPCCミーティングに資金を提供しています。

図書館のデータをより広い世界へつなげる

最近の記憶の中で目録に影響を与える非常に大きな変更の1つはリンクトデータ技術の潜在力によるものです。外部サービスやその他の関連情報プールを使用して、より効果的に図書館資料に接続したい場合、リンクトデータ構造が今後必要とされるだろうという意識が高まっています。中でも、WikidataやBIBFRAMEを使った実験により、その進化が将来どのようになるかが少しづつ見え始めています。

OCLCスタッフはリンクトデータ構想(アイデンティティ管理リンクトデータベストプラクティスMARCにおけるURIメタデータアプリケーションプロファイル等)を推進しているPCCタスクグループに積極的に参加しています。

例えば、私達は今ではRDAがリンクトデータへの一歩だったと理解する事ができます。ところが、重要な一歩だったにも関わらず、当時私たちの大部分は「リンクトデータ」という言葉をそれまで聞いたことがなかったのです。その目標とするところは同じで、現在のMARCレコード用語がより完全に移行するようなやり方で拡張する方向性をこの言葉は提示したのです。

OCLCとPCC: 標準を変更し、時代の変化を支える

PCCは目録の進化においてより多くのステップの実装に取り組んでいます。MARCレコードの書誌アクセスポイント内で関連するリンクトデータ資源への接続に使用できる2つの全く新しいサブフィールドコード ―館内目録作成者用の$0と$1― を目にし始めているでしょう。

これを最も非科学的な言い方で説明すると、どのMARCレコードもこれからは一種のデータ「スイッチ」の役割を果たし、図書館のメタデータをその他のリンクトデータの情報源に接続できるという事です。これで文字列を典拠レコード ($0) に参照させたり、実世界オブジェクトURI (Real World Object URI) ($1) に参照させたり、あるいは両方に参照させたりする事が可能となります。例えば、PCCは書誌レコード内の$1でISNI (International Standard Name Identifier:国際標準名称識別子) を使用する事を試験的に行っています。

これは図書館が現在の自身のメタデータとサービスを改善するために他のリンクトデータシステムのデータを活用できるという事を意味しており重要な事です。

図書館メタデータの未来を構築する支援ができます

現在のPCC議長でカリフォルニア大学デイビス校のコンテンツ支援サービス部長、李曉莉 (Li Xiaoli) はこう述べています。「今年はPCCの25周年を迎えます。私達は成し遂げてきた事をお祝いするために時間をかけ、また、次の25年の計画も開始します。現在、MARCからリンクトデータへの移行を加速させる事がPCCの最優先事項ですが、私達単独ではこれを行う事はできません。PCCはパートナーを必要としており、共通の目標を共有する他のコミュニティーに手を差し伸べていきます。」

あなたがカタロガーで、PCC参加に興味がある場合は、是非ご参加ください! 詳細はこちらです。 http://www.loc.gov/aba/pcc/join.html

これをご覧の方がカタロガーでない場合、私達の共同航海をのぞいてみる事がお役に立てば嬉しいです。数十年を掛けて数百人のカタロガーによって行われた、複雑で、詳細な作業ですが、最終的な成果は、必要とする情報に利用者をより上手く結び付けるメタデータです。

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(紀伊國屋書店OCLCセンター)