人文社会系研究

第一波フェミニズムから第二波フェミニズムまで、今甦るフェミニズムの歴史

2020.02.05

女性が女性として解放されることを目指した第二波フェミニズム

19世紀に女性参政権運動として始まった女性権利拡張運動は、第一次世界大戦後、欧米諸国で女性参政権が実現し、女性が法的に人間として認められるに及び、所期の目的を達成しました。

しかし、その後も家族や私的な領域での女性差別が残る現実を目の当たりにした女性は、女性が女性として解放されることを目指し、「個人的なことは政治的である」との認識の下に、女性の権利をラディカルに問い直しました。

こうして生まれたのが女性解放運動(第二波フェミニズム)です。

Women’s Studies Archive: Women’s Issues and Identites

Galeが提供するWomen’s Studies Archive: Women’s Issues and Identitesは、1960年代から70年代にかけて先進諸国で展開された女性解放運動の下で生み出された資料群を収録、広く研究者の利用に供するデータベースです。

アメリカ内外のフェミニズム系団体の定期刊行物のほか、女性史への関心の高まりを背景に広範囲に収集された女性史関連資料、女性解放運動が問いかけた最も重要な問題である出産や産児制限に関する資料を収録します。

左:日本女子大学学長上代タノからのジェーン・アダムズ宛書簡(1924年1月30日付)
中・右:連合国との講和条約締結を前に女性国際平和自由連盟日本支部や日本国内の他団体の女性たちが共同でアメリカのダレス国務長官に宛てた要望書(1951年2月8日付)。単独講和ではなく全面講和、講和条約締結後の即時国連加盟、特定国への基地提供ではなく国連の下での安全保障が要望の骨子。市川房枝、平林たい子、平塚らいてう、上代タノ、武田清子、神近市子らが署名している。

戦間期アメリカ平和運動の記録

空前の死傷者を出した第一次世界大戦は、平和運動の歴史にとっても転換期となりました。アメリカではヨーロッパでの戦争への参戦をめぐり世論が二分する中、参戦反対派は組織的運動を展開、戦後も、新たに設立された女性国際平和自由連盟を通して、各国の反戦組織との連携の下に反戦運動を展開しました。

Women’s Studies Archive: Women’s Issues and Identitesは、アメリカ有数の平和研究機関、スワスモア大学が所蔵する平和運動関係資料の中から、女性反戦党、女性国際平和自由連盟アメリカ支部、女性平和連合の三つの団体の文書を通して、知られざる戦間期アメリカの平和運動を浮き彫りにします。

優生学の最重要資料『ユージェニクス・レビュー』を収録

旧優生保護法の下で強制不妊手術を受けた人に対する一時金を支給する法律が2019年に成立したことに伴い、優生学や優生思想に対する関心が学界の内外で高まりを見せています。

本データベースは、20世紀初頭にイギリスの優生学教育協会により発行された『ユージェニクス・レビュー(The Eugenics Review)』を創刊号から最終号まで収録するほか、マルサス主義同盟の月刊誌『ザ・マルサシアン(The Malthusian)』を創刊号から最終号まで収録します。

フェミニズム一世紀の歴史に迫る

Women’s Studies Archive: Women’s Issues and Identitesには、1880年代から1970年代までの一世紀に亘る、雑誌、新聞、ニュースレターなどの定期刊行物約1,000タイトルが収録されています。

発行地はアメリカに加えて、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ(オランダ領インドネシアを含む)のヨーロッパ諸国です。

所蔵機関は、アメリカの刊行物は全米女性史プロジェクト、ヨーロッパの刊行物は社会主義、労働運動史、政治運動史関係資料の所蔵機関としては世界有数の規模を誇るアムステルダムの社会史国際研究所です。

第一波フェミニズムから第二波フェミニズムまでのフェミニズムの歴史が、これらの定期刊行物を通して甦ります。

収録コレクション

  • Herstory
    女性解放運動のパイオニア『女性解放運動の声』、フェミニズム系雑誌の代表格『ミズ』、ラディカル・フェミニズム系の『女性解放ジャーナル』、ユダヤ教フェミニズム系の『リリス』、イギリス女性解放運動の『シュリュー』、レスビアン・フェミニズム団体「ビリティスの娘たち」の『ザ・ラダー』の他、アメリカ、イギリス、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、チェコスロバキア等の雑誌、新聞、ニュースレター、約200タイトルを収録。(1950年代から1980年代初頭まで)
  • Women and Health/Mental Health
    1968年、カリフォルニア州バークレーに設立された女性史研究センターの所蔵資料の中から、女性と健康・精神衛生に関するコレクションを収録。特に、中絶と産児制限関係の資料が充実。
  • Women and Law Collection
    女性史研究センターの所蔵資料から、メディアにおける性差別、児童保育環境の改善を求める女性の闘い、女性参政権運動、女性反戦運動、従業員給付や育児休暇に関する裁判など、女性に関連する法的問題に関する資料。
  • Grassroots Feminist Organizations, Part 1: Boston Area Second Wave Organizations, 1968-1998
    第二波フェミニズム運動の拠点となったボストンのフェミニズム団体、女性団体の内部文書。
  • Grassroots Feminist Organizations, Part 2: San Francisco Women’s Building / Women’s Centers, 1972-1998
    ボストンと並ぶ第二波フェミニズム運動の拠点、サンフランシスコの女性団体の内部文書。
  • Planned Parenthood Federation of America Records, 1918-1974
    マーガレット・サンガーが創設したアメリカ産児制限連盟と全米初の産児制限臨床施設である産児制限臨床研究局が統合して設立された米国最大の生殖医療関連組織である全米家族計画連盟。全米家族計画連盟の前身の時代を含め、1918年から1974年までの内部文書を収録。
  •  Collected Records of the Woman’s Peace Party: 1914-1920
    キャリー・チャップマンとジェーン・アダムズにより設立された米国の女性反戦党の内部文書(半分以上は書簡)を収録。他の平和団体との関わり、学校の軍事教練への反対活動、良心的兵役忌避者への関与、アメリカ参戦後の食糧支援活動など、女性平和党の活動の実態を明るみにします。米国スワスモア大学平和コレクションの所蔵資料。
  • Women’s International League for Peace and Freedom: United States Section, 1919-1959
    1915年に創設された女性国際平和自由連盟の米国支部と米国内の地方支部、他の平和団体や政府機関、日本を含む各国の支部との往復書簡を収録するほか、米国支部の刊行物や内部資料を収録。米国スワスモア大学平和コレクションの所蔵資料。
  • Records of the Women’s Peace Union: 1921-1940
    1921年創設の米国の平和団体、女性平和連合の内部文書を収録。戦争廃絶を目指し、憲法修正案の議会上程やロビー活動を展開した知られざる戦間期アメリカの平和団体の活動を浮き彫りにします。米国スワスモア大学平和コレクションの所蔵資料。
  • Committee of Fifteen Records, 1900-1901
    世紀転換期のニューヨークで売春とギャンブルを根絶するために創設された15 人委員会の活動の実態を供述書や捜査官の報告書を通して明らかにします。ニューヨーク市政の腐敗、市政改革の試みをもヴィヴィッドに伝える貴重な資料。
  • Women’s Lives
    アメリカ共産党の党員で労働の権利の唱導者であるエリザベス・ガーリー・フリン、イギリスの女性参政権活動家であるメアリ・ガーソープ、世界各国でキリスト教布教活動を展開した女性宣教師、西部開拓期の太平洋沿岸フロンティアにおける女性など。
  • Malthusian, 1879-1921 (formerly Women and the Social Control of Their Bodies)
    家族計画を世界で初めて奨励した団体、マルサス主義連盟の月刊誌『ザ・マルサシアン』の創刊号(1879)から最終号(1921)まで、優生学教育協会の季刊誌『ユージェニクス・レビュー』の創刊号(1909)から最終号(1921)までを収録。
  • Women’s Labour League: Conference Reports and Journals, 1906-1977
    女性の選挙権獲得と社会における女性の地位向上を目指して20世紀初頭に設立され、1918年に労働党女性部として再編されたイギリス女性連盟の年次総会議事録と雑誌(”League Leaet”, ”e Labour Woman” 等)を収録。
  • European Women’s Periodicals
    オーストリア(約20誌)、ベルギー(約15誌)、フランス(約40誌)、ドイツ(約50誌)、オランダ・蘭領インドネシア(約50誌)で発行された女性向け定期刊行物192誌。大半は1880年代から1940年代にかけての刊行物。

    • ドイツ:“Die Frau”, “Die Gleichheit”, “Die Neue Generation”
    • ベルギー:“La Femme Belge”, “De Stem der Vrouw”
    • フランス:“Psyché”, “La Vague”, “La Française”
    • オーストリア:“ Die Österreicherin”, “Der Bund”, “Neues Frauenleben”
    • オランダ:“Evolutie”, “Nosokómos”, “Ons Blaadje”
  • Women’s Trade Union League and Its Leaders
    ラドクリフ大学附属シュレシンジャー女性史図書館が所蔵する女性労働組合連盟と組合指導者の活動に関する資料。

Women’s Studies Archive待望の第二弾リリース!

2020年1月、Women’s Studies Archivesシリーズの第二弾、Women’s Voice & Visionがリリースされました。様々な地域における、女性の経験や社会の影響をとりあげます。特に女性たちの声を発信する媒体として用いられた定期刊行物、書籍、その他女性たちや社会運動団体による出版物に焦点を当てています。

第一波フェミニズムから第二波フェミニズムまで、本データベースの収録コンテンツを通して、フェミニズムの歴史が蘇ります。

(センゲージ ラーニング株式会社)

センゲージ ラーニング株式会社サイトはこちら
紀伊國屋書店サイトはこちら
お問い合わせはこちら