人文社会系研究

海外日本研究図書館における売れ筋和書復刻タイトル(2019年版)

2020.03.03

紀伊國屋書店では海外でも営業所ネットワークを構築し現地の図書館、研究・教育機関等に図書や情報サービスをご提供しております。北アメリカ、ヨーロッパ、台湾、オーストラリアといった地域では日本の文化や歴史に関する研究が盛んであり、国内の出版社、電子資料ベンダーと協力して資料のご案内に努めています。今回は学術研究用に貴重資料の復刻を行っている出版社各社に、2019年の海外図書館での売れ筋タイトルをご紹介頂きました。日本国内の研究トレンドとの重なりと相違にご注目下さい。(以下五十音順・敬称略)

大空社出版

江戸時代庶民文庫 第2期

江戸時代庶民文庫

[解題] 小泉吉永
第1回配本(全5巻・61~65巻) 2018年6月刊
揃定価85,800円(揃本体78,000円) ISBN 978-4-86688-101-0
第2回配本(全5巻・66~70巻) 2018年11月刊
揃定価96,800円(揃本体88,000円) ISBN 978-4-86688-102-7
第3回配本(全5巻・71~75巻) 2019年4月刊
揃定価105,600円(揃本体96,000円) ISBN 978-4-86688-103-4
第4回配本(全5巻・76~80巻)2019年10月刊
揃定価106,150円(揃本体96,500円) ISBN 978-4-86688-104-1
A5判/上製/クロス装

江戸時代の庶民生活の諸相を貴重な版本(影印)で見せる大好評の「江戸時代庶民文庫」(第1期)全60巻・別巻1(既刊)に続く「第2期」。収録分野・領域(ジャンル)がさらに多彩な広がりを見せ「庶民」の諸相に迫る。いま注目の《江戸時代の魅力》を満喫できる。
江戸時代の新たな魅力を発見する一大叢書。江戸庶民の楽しみ、遊び、学び、知恵、工夫、常識、年中行事、都市と地方の生活等々、人文・社会・芸術・科学他広範囲な研究に使える大資料集。各巻分売可。
稀覯・新発見資料を多載/挿画・図版が豊富な史料を多載/鮮明印刷の版本「影印版」。

[出版社コメント]
第1期全60巻には約200点、総約22,800ページにのぼる版本資料を収録した。第2期40巻で合計100巻、どんな分野からも江戸時代に関することなら、まずこの叢書を見る価値があると言われるものを目指している。
また、第2期からは、従来配本単位でしか求められなかったところを、第1期も含めすべて「1巻ごと分売可能」とし好評である。

柏書房

大阪毎日新聞社・東京日日新聞社発行
戦時グラフ雑誌集成 全2回配本

戦時グラフ雑誌集成 全2回配本

[解説]一ノ瀬俊也
各揃定価330,000円(各揃本体300,000円)
第1回配本ISBN 978-4-7601-5105-9 C3321 2019年3月刊
第2回配本ISBN 978-4-7601-5106-6 C3321 2019年9月刊
B4判/上製/クロス装

満洲事変前夜からアジア太平洋戦争の最終局面まで、戦地の日本軍兵士たちを活写し、めまぐるしく変わる戦局を内地国民に伝え続けた大新聞社のグラフ誌を全2回配本で完全復刻!
今回復刻の対象としたのは、大阪毎日・東京日日両新聞社が戦前発行した『陸軍特別大演習画報』(1927年12月)、『済南事変画報』(1928年5月)、『防空演習画報』(1928年7月)、『満洲事変画報』(1931年12月~1932年4月)、『熱河討伐画報』(1933年3月)、『北支事変画報』(1937年8月~9月)、『支那事変画報』(1937年9月~1941年12月)、『大東亜戦争画報』(1942年1月~1945年2月)の全8誌。紙面一杯に大胆なレイアウトで配置された写真が、文字では伝えきれない戦地の日常、戦場の現実、あるいは日本軍のプロパガンダの実態も含めて雄弁に物語る、第一級のビジュアル歴史資料である。

[出版社コメント]
柏書房の海外売れ筋タイトルは、長らく明治・大正期の新聞・雑誌や戦前期の地図や植民地関係の資料集でしたが、2019年は当タイトルが一番の売れ行きでした。戦災の影響もあってか揃いで所蔵する機関が存在せず、古書市場にもほとんど出回らない貴重資料でしたが、解説者の長年の収集が実ってようやく全号を通覧できるようになりました。
解説者同様に懸命に収集していた研究者も多い中、「これだけのものをよく揃えた」とその偉業ぶりが絶賛されています。日本が戦争に向かう最中、国内はそれを煽るかのごとき情報や写真が国民のあいだを躍る中で、極めて冷静に、極めてフラットに事実を伝えようとしたメディアがありました。当グラフ誌はあの時代における報道の在り方として独自の姿勢を貫き、皮肉なことに、そうであったが故に発行部数も少なく、稀少なものとなっていたのです。
写真中心の誌面ですので、次世代につなぐ平和教育の「見たままで事実を理解できる」展示企画として、また、歴史・メディア研究まで、幅広い用途に活用していただけると思います。

クレス出版

戦後映倫関係資料集 全3回 全10巻

戦後映倫関係資料集 全3回 全10巻[監修] 中村秀之
揃定価220,000円(揃本体200,000円)
ISBN 978-4-86670-063-2 C3374
A5判/上製函入/クロス装
刊行年月 第1回 2019年7月
第2回 2019年12月刊
第3回 2020年4月刊行予定

終戦を迎え、戦時色の強い国策映画の制作から解放された映画界は、今度はGHQ統治下にて、表現の制限を設けることになった。最終的には映画関係者によって、1949年「映画倫理規程管理委員会(旧映倫)」を設立、その後の組織改変等を経て、現在の「映画倫理機構」になった。
この「戦後映倫関係資料集」は、旧映倫時代の資料を中心に、表現の自由と自主的な規制の狭間で何が問題視され、どう解釈されていたのか、創作に携わる人々にとっても無視し得ない「基準」となる貴重な報告集。

[出版社コメント]
2019年の売れ筋であった当資料は、内務省による全国統一映画検閲、また連合軍占領下の検閲を経て、1949年に映画産業による自主規制機関として映画倫理規程管理委員会が立ちあがり、さらに1956年に映画倫理委員会(映倫)として改組されるまでの報告・記録集です。資料分析により、映画テクストと法、政治、社会、ジェンダー、文学との関係が明らかになる等、映画研究者のみならず様々な分野の方々にご好評をいただいております。

不二出版

ゾルゲ事件史料集成――太田耐造関係文書 全4回配本・全10巻

ゾルゲ事件史料集成――太田耐造関係文書 全4回配本・全10巻
[編集・解説] 加藤哲郎

揃定価275,000円(揃本体250,000円) 
第一回配本 ISBN 978-4-8350-8298-1 2019年7月刊
第二回配本 ISBN 978-4-8350-8301-8 2019年11月刊
第三回配本 ISBN 978-4-8350-8305-6 2020年4月刊予定
第四回配本 ISBN 978-4-8350-8309-4 2020年7月刊予定
B5判/上製/総約3600頁〔各巻約360頁〕

本集成は20世紀最大のスパイ事件=ゾルゲ事件に関する重要史料を、国立国会図書館憲政資料室所蔵の太田耐造関係文書から精選、復刻するものである。思想検事・太田耐造が遺した本史料群は、これまで明らかにされなかった司法におけるゾルゲ事件立件のプロセスを理解するために、欠かすことのできない第一次史料の宝庫である。「ゾルゲ事件」の射程は、単に最大級の謀略事件というにとどまらず、1930-40年代の戦時日本体制の解明にもつながるだろう。
ゾルゲ研究における新しいステージを切り開く重要史料、いよいよ第1回配本開始。

[出版社コメント]
みすず書房『現代史資料 ゾルゲ事件』(全4巻、1964-1971)刊行時未発見だった史料も多数収録。日本だけでなく独ソ戦、ひいては世界大戦の行く末すら左右したスパイ事件の資料ですが、戦時下における日本の外国籍容疑者の取り調べに関する資料という側面もあります。近年の某逃亡事件で世界の耳目を集めた日本の検察体制、戦前はどうだったのでしょうか?

ゆまに書房

ジャパン・ツーリスト・ビューロー

ジャパン・ツーリスト・ビューローツーリスト 第Ⅱ期 昭和篇 全29巻+別巻1
[監修・解説] 荒山正彦
[総監修] 公益財団法人日本交通公社 旅の図書館
揃定価785,400円(揃本体714,000円)
ISBN 978-4-8433-5642-5 C3326
A5判/上製/クロス装/カバー
刊行年月 2019年12月

大正を経て、より近代的な昭和の「旅行」へ—。全号を唯一所蔵する「旅の図書館」の協力により『ツーリスト』全一八九号、完全な姿にて復刻!!
1912年に鉄道院協力のもと、「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」が創設される。外客誘致機関として発足したビューローは国内外問わず、さまざまな媒体をとおして日本の観光イメージを発信する。ビューローはその事業進展を図ることを目的として、1913(大正2)年に機関誌『ツーリスト』を創刊。グラフィック・デザイナー杉浦非水の図案を表紙に採用し、広く国内外に配布された。和文欄と英文欄があり、和文は日本人国内旅行案内、英文は外国人観光客向けのものであり、外国人に向けての日本の旅行案内である。

[出版社コメント]
ゆまに書房の海外での売れ筋タイトルは主にビジュアル的な資料や、映画・美術関連といったところですが、2019年の売れ筋は当タイトルでした。観光の歴史に関する資料はここ数年、世界中の日本研究機関で需要が高まっていますが、特にこの雑誌には英文の観光案内が載っており、その点でも海外の研究者の皆様にとっては使いやすいのではないでしょうか。

アジア研究学会ブース出展のお知らせ

紀伊國屋書店は3月19~22日にアメリカ・ボストンで開催されるアジア研究学会の年次総会において、日本の出版社・電子資料ベンダーと共同ブース出展致します。ブースでは日本研究資料の最新情報と日本茶サービスでご参加者の皆様をお迎え致します。会場にお越しの皆様はどうぞお立ち寄り下さい。

AAS 2020 Annual Conference- Boston, MA

日時:2020年3月19日~20日
場所:Sheraton Boston Hotel / Hynes Convention Center
ブース番号:714-720

共同出展出版社・電子資料ベンダー(五十音順・敬称略)

  • 朝日新聞社
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  • クレス出版
  • ジャパンタイムズ
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  • ネットアドバンス
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