医療系情報

Wiley Digital Archives王立内科医協会アーカイブ-魅力あふれるコンテンツ その1

2020.05.14
Royal College of Physicians

はじめに

医学の歴史は、生と死の歴史であり、我々すべてに関わることである

The history of medicine is the history of life and death, and we all are connected to it.

Royal College of Physicians

人の生命が存続してきた長い時間、科学者や医師は、それを保持するために働いてきました。過去におけるあらゆる理論、突破口、そして挫折は、今日我々が知っているように、保健や疾病予防お基礎となっています。

過去の医学分野の開拓者たち-ガレノス、ハーヴェー、リナカーその他大勢-は、人体がどのように働くかの理解を深めることから、すべての医師が認可のもとに診療行為を行うことによって患者を危害から守ることへと、保健の一面を変化させてきました。

本稿より複数回にわたり、病気の診断への占星術の使用から種痘の開発、自身の固定観念と戦ってきた女性医師たちまで、近代医学を形成した物語の一部をご紹介します。各々の物語は、歴史を形成し、後に続く我々すべてのためとなる看護の質-そして生活の質-に根本的に影響を与えてきました。

これらの物語、そしてその他の物語について、王立内科医協会(Royal College of Physicians)アーカイブから学ぶことができます。

Wileyサイト:https://www.wileydigitalarchives.com/rcp/
紀伊國屋書店サイト:https://mirai.kinokuniya.co.jp/catalog/royal-college-of-physicians/

はじめてのワクチン

活用分野

免疫学、生物学、医療人文学、非伝統な医学、英国史、公衆衛生、保健教育、科学・医学史、健康における社会的要因、医学研究、国際保健政策、その他の歴史研究

歴史的背景

16世紀から18世紀まで、診療行為は規制がない、もしくはほとんどない状態で、正規の訓練や知識を持たない「内科医」によって行われました。イングランドで医療過誤が蔓延し、無資格の偽医師が医術の無法地帯を利用したために多くの不必要な死を招きました。

WHO(世界保健機関)によると、天然痘は、人類が知る世界で最も深刻な病です。数千年にわたり続いてきた感染症であるこの病は、感染者の1/3を死へと至らしめました。17世紀の天然痘の「治療」には、瀉血、瀉下、新鮮な空気、ベッドのまわりに赤いカーテンを使うことが含まれていました。

The First Vaccine

Edward JennerがRobert Ferryman師にあてた自筆の手紙。
歩行困難に関する彼の発見、Filkinからの手紙、種痘の効能に関する事例証拠に関して。

Autograph Letter Sequence, 9 Nov. 1820, Wiley Digital Archives

エドワード・ジェンナー(Edward Jenner)は、「免疫学の父」(Father of Immunology)として知られます。

ジェンナーが有名な理由

エドワード・ジェンナー(1749-1823)は英国の医師・科学者で、世界初のワクチンである種痘の開発者です。しかし彼は最初から牛痘の感染が天然痘の免疫をつけることや牛痘の接種を主張したわけではありませんでした。天然痘患者から膿をとり、健康な人に接種するプロセスを経て、死の危険を伴うものの、大抵の場合は軽症にとどまり、ときに終生の免疫を獲得するにいたりました。

ジェンナーは、1700年代に、乳搾りの女たちが牛痘にかかり、その後、天然痘の免疫を獲得したという話を聞きました。1796年に、ジェンナーは8才の少年ジェイムズ・フィリップを実験台とし、これら2つのアイデアを結び付けました。牛痘の膿疱から膿を取り出しジェイムズの腕に接種、その後、少年が天然痘の免疫を持つことを証明したのです。ジェンナーは、ラテン語で牛を示すvaccaという単語からvaccine(ワクチン)という言葉を作ることさえしました。

1852年に、‘National Vaccine Establishment’が、予防接種に関する報告書を作成し、予防接種の導入でロンドンにおける天然痘の死亡率は、三分の二減少したことを示しました。さらに、一般大衆がまだ予防接種に納得していないとします。これが今日まで続く反ワクチン運動の始まりでした。ジェンナーは死ぬまで予防接種の必要性を訴え続け、大衆や医師に対し、その利点を伝え続けました。

これらの最初の「反~ワクチン論者」やワクチンに対する噂、恐怖にも拘わらず、1853年に種痘接種が義務づけられ、その結果、1979年に天然痘の絶滅が宣言されました。しかし今日、予防接種は、哲学、宗教的な理由で接種拒否を続ける反~ワクチン論者の間で、依然議論の的であり続けています。

Edward Jenner

Edward Jenner, Oil Painting. Iconographic Collections. Source: wellcomeimages.org

王立内科医協会アーカイブに含まれる関連コレクション&特別コレクション

エドワード・ジェンナーの日記・書簡、関連報告書、文書、Edward Joshua Edwareds、National Vaccine Establishment、王立ジェンナー協会、Dr. J.T.A. Reed、Dr. Amian、王立内科医協会の予防接種委員会他から送られたワクチン接種に関する覚書や書簡

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(資料提供Wiley)