これからの学び

実は会話力も伸びる:英字新聞で英語に触れる大きなメリット – The Japan Times Alpha編集長 特別寄稿

2020.11.25

「なぜ英語を読まなければいけないの?」と聞かれたら、私はこう答える

私は英語学習に特化した週刊英字新聞「The Japan Times Alpha」の編集長を務めている。仕事柄、英語の学習法などについて講演する機会も多く、その際に学習者の方とお話することがあるのだが、英字新聞の購読を勧めると、ごくたまに「英語が話せるようになりたいだけなので、読むよりも話す練習をしたいと思います」と言われることがある。皆さんが仮にAlphaの編集長だったとしたら、こうした発言に何と言って返すだろうか? 私は、英語を読む必要性について問われたら、以下のように答えている。

1.英語の理解力を高めるため
2.使える表現を増やすため

それぞれ順番に説明していこう。

1.英語の理解力を高めるため

こんな経験はないだろうか。「ネイティブスピーカーと話していて、相手の発話が短ければ聞き取れるが、話が長くなると意味が取れなくなる」「リスニング試験で、1つ1つの単語は聞こえるのに、文章全体の意味が分からない」。こうした方々は、一応単語レベルでは聞こえているので、英語を聞き取る耳はできている。だが、入ってきた英語を頭の中で素早く処理して理解する力が不足しているのだ。

そうした素早い理解力を培うのに有効なのが多読(英語をたくさん読むこと)だ。大量の英語を読んで理解するのを繰り返すことで、脳が英語の理解にどんどん慣れていき、結果的に素早い理解ができるようになるというわけだ。この「慣れ」というのが、英語学習においては非常に重要。運動の習慣が無い人が突然体を動かしたらけがをしてしまうのと同じように、日頃から英語を理解する訓練を積んでいない人が、突然英語の意味を理解しようとしても、分かるはずがない。多読とは、ある意味「自分の脳を英語にさらす」活動だ。定期的に英語を読んでいるからこそ、頭の中で素早く英文の意味を理解できるようになるのだ。

2.使える表現を増やす

突然だが、「お酒は付き合いで飲む程度です」を英語で言えるだろうか? 「付き合いで飲む」とは、一人で飲むことはないが、飲み会やパーティーなどの場ではお酒を口にするということ。これはsociallyという語を使ってI only drink socially. と実にシンプルに表現することができる。sociallyを辞書で引くと「社会的に」「社交的に」という意味が掲載されているが、このように「付き合いで」という意味でも使われるのをご存じだろうか。当たり前だが、こうした語を会話の中で使える人、使えない人を分けるのは、「実際にそうした使い方をした例を見たことがあるかどうか」だ。ここに多読のもう1つのメリットがある。たくさんの英語を読んでいるうちに、いろいろな表現を目にする。その結果、自分で使える表現も増えてくるというわけだ。

単語帳を使って単語を覚えている人も多いだろうが、単語の意味だけ暗記する学習は不十分。実際にその単語が使われる場面を見なければ、自分で使えるようになっていかない。例えば、markという語がある。これは文字通り「マーク」という名詞の他、「(出来事などを)示す、記念する」という動詞の意味もある。ただ、この訳だけ覚えていても、実際に自分で使うことはできない。その証拠に、上記の動詞の意味でmarkを使った例文が、すっと出てこないのではないだろうか? markは以下のように、「主語は(markの後ろに続く)何らかの重要なことを示している」という意味で使われる。

◆This year marks the 10th anniversary of the music festival.
(今年は、その音楽フェスが開かれてから10周年に当たる)
◆His retirement marked the end of an era.
(彼の引退は、一つの時代の終わりを示していた)

日頃から英語を読んで、こうしたmarkの使い方を実際に見ることで、自分でも使えるようになっていく。つまり多読を通じて、「知っている語彙」が「使える語彙」に変わっていくというわけだ。

以上のように、英語を読むことで、英語の素早い理解が可能になり、使える表現も増えていく。言うまでもなく、これは会話において必須のスキル。だから、話せるようになりたい人にも、英語を読むという学習は有効なのだ。

「待機児童」は英語で? 英字新聞で“今”を表現する英語力を身につける

ここまでで、多読がいかに重要かということはお分かりいただけたと思う。続けて、特に英字新聞で英語に触れるメリットをお伝えしよう。新聞は、日本や海外で今起きている様々な出来事を報じるものだが、それを英語で読むことで、社会の“今”を英語で表現できる力がついてくる。これは英字新聞の大きなメリットだ。

例えば、以下に様々な分野のニュースでたびたび目にする言葉を集めてみた。それぞれ英語で何というのか考えてみよう。

①待機児童 ②解散総選挙 ③白人至上主義者 ④海洋プラスチックごみ

【正解】

children on nursery school waiting lists:「待機児童」に当たる英語はないので「保育園(nursery school)の順番待ちリストに載っている子ども」のように説明する必要がある

snap election:snap decision(即決)のように、snapには「素早い」というイメージがあり、それが衆院解散後すぐに選挙になだれ込む様子と共通しているので、こう呼ばれる

white supremacist:supremeは「最高の」という形容詞。これに「人」を意味する-istが付いて名詞になったのがsupremacist(至上主義者)

marine plastic waste:wasteは「廃棄物」

英字新聞ではこうした語句が頻繁に使われる。しっかり読むことで、現在の政治、社会、環境などの問題を英語で語れる力がついてくるというわけだ。

他にも、新聞は最新の事象を扱っているため、最新のボキャブラリーが身につくというのも大きな特長だ。以下は比較的最近使われるようになった語句。意味をご存じだろうか?

①post-truth ②freemium ③staycation ④iHunch

【正解】

①「人々が客観的な事実よりも、自分が信じたい情報を信じるようになる状態」:truth(真実)にpost-(後)が付いて「真実以後の」が直訳。例えばSNSでデマが飛び交うような時代を形容してpost-truth era(ポスト・トゥルースの時代)という使い方をする

②「(アプリなど)最初は無料で提供し、その後課金する販売モデル」:free+premiumから

③「旅行などには行かず、近場で過ごす休暇」:stayとvacationを合わせた造語

④「スマホの使いすぎで猫背になった状態」:hunchは「背中を丸める」「背中のこぶ」という意味の語。これにiPhoneなど、デジタル機器を象徴する「i」を付けた語

いかがだろうか。こうした最新語句を身につける場としても、英字新聞は最適だ。特にこれからの時代を担う若い学生には、ぜひ英字新聞を活用して「“今”を語れる英語力」を身につけて欲しいと、編集長として切に願っている。

(「The Japan Times Alpha」編集長 高橋敏之)

執筆者PROFILE

高橋敏之
英語学習に特化した週刊英字新聞「The Japan Times Alpha」編集長。英語講師、英語教材編集者などを経て、2012年より現職。自身も英字新聞で英語力を飛躍的に高めた経験から、実用性と娯楽性を兼ね備えた新聞を作ることを日々追求している。

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