人文社会系研究

19世紀にアメリカで発行された新聞約400紙を搭載する電子コレクション

2021.09.07
Nineteenth Century U.S. Newspapers

専門家が収録紙を選定し、包括的に地域と時期をカバー

Nineteenth Century U.S. Newspapersは、19世紀にアメリカで発行された新聞約400 紙を搭載、フルテキスト検索を実現したものです。

収録新聞に関しては、可能な限り地域と時期を包括的にカバーするよう、ジャーナリズムの歴史、アメリカ史の専門家が選定に当たりました。

地域的には現在のアメリカ50州のほぼすべての州とワシントンD.C.で発行された新聞を収録、また収録紙全体によって19世紀全時期をカバーしています。ワシントンD.C.の新聞として中央政界や議会の動向を報じた『ナショナル・インテリジェンサー』、19世紀ニューヨークを代表する新聞『ニューヨーク・ヘラルド』、19世紀アメリカを代表する挿絵新聞『フランク・レズリー挿絵新聞』、奴隷制廃止運動の機関紙『リベレイター』、現代アメリカを代表する新聞の一つ『ロサンゼルス・タイムズ』等の著名な新聞から、地方都市の新聞まで約400紙を収録します。『カムデン・コンフェデレイト』、『デイリー・リベル(Daily Rebel)』、『デイリー・リッチモンド・エグザミナー』等、南北戦争期の南部諸州で発行されていた新聞も収録されています。

大都市から地方都市まで、19世紀アメリカのどの地域の歴史を研究する場合にも対応可能です。

アメリカ国民創出の現場に迫る貴重なデータベース

新生国家アメリカでは、国民の統合に新聞が独自の役割を果たしました。

同時代のイギリスで、議会報道の自由化をめぐり新聞業界が政府と争い、印紙税や広告税等の課税が新聞の普及を阻んでいたのとは対照的に、アメリカでは建国直後の18世紀末にすでに新聞記者が上下両院に出入りすることが許され、また郵便を使って新聞社が無料で相互の新聞を送達し合う特権を享受するなど、政府が率先して新聞の普及に努めました。こうして大都市だけでなく中小都市でも新聞が発行されるようになった結果、19世紀前半には発行部数でイギリスを上回り、アメリカは世界最大の新聞大国に成長します。

新聞がアメリカ市民の文化と教育の向上に大きな役割を果たしている事情は、同時代に外国人によって「新聞を読む国民としてのアメリカ人」として観察されました。広大な新生国家アメリカにおいて、新聞は、アメリカ国民を創出したと言えるほど、文学以上に国民を文化的に統合する機能を果たしたのです。

本データベースは新聞を通してアメリカ国民の創出の現場に迫ります。

有名な出来事から地方都市の日常の出来事まで

収録されている記事は広範囲に及びます。

トピック例:

議会の法案審議、法律の制定 政党、大統領選挙、大統領の政策 第一次バーバリ戦争、米英戦争から米墨戦争、米西戦争までの対外戦争
貿易、金融、景気、企業、商品広告 奴隷制と奴隷制廃止 移民流入と移民排斥
コレラやインフルエンザ等の流行病 文学、音楽、演劇、大衆演芸 ファッション
アメリカ国内外の旅行 ルイス・クラークの探検隊、チャールズ・ウィルクスの太平洋探検隊、アドルファス・グリーリーの北極地探検隊等の国内外への探検 フィラデルフィア博やシカゴ博等の万国博覧会
蒸気船、鉄道、運河等の交通 電信、電話、蓄音機、カメラ、ミシン、タイプライター、キネトスコープ、電灯等の発明 自由の女神像、ブルックリン橋、メトロポリタン美術館、セントラル・パーク等の建造物や公共施設
『モヒカン族の最後』、『アンクル・トムの小屋』、『若草物語』、『進歩と貧困』、『ベン・ハー』等のベストセラー

アメリカ史の教科書や通史で言及される著名な出来事から、地方都市の日常の出来事、著名人物の訃報、結婚・死亡告知、読者の投書まで、19世紀アメリカ史の出来事が170万ページの中に記録されています。

本データベースは、政治外交史、経済史、商業史、社会史、教育史から文化史、宗教史、文学史、科学技術史、ジェンダー史、公衆衛生史まで、分野を超えて利用できる汎用性の高い電子リソースです。

異文化交流史の資料

収録紙には、アメリカを訪問した外国人に関する記事も収録されています。

イギリス人では、ウィリアム・コベット、ロバート・オーウェン、ハリエット・マーティノー、フランシズ・トロロープ、チャールズ・ディケンズ、ハーバート・スペンサー、マシュー・アーノルド、ウィルキー・コリンズらが訪米、歓迎式の模様や講演が記事にされている例もあります。19世紀には幕末の遣米使節や明治初年の岩倉使節団を派遣した日本に加え、中国清朝や朝鮮王朝やタイも米国に使節団を派遣、アジア諸国からの外交使節団はアメリカで好奇の眼差しを注がれました。

政府の外交使節の他に留学のために渡米した人も数多くいます。収録紙は、新島襄、金子堅太郎、團琢磨、津田梅子、山川捨松、新渡戸稲造、内村鑑三、野口米次郎ら、明治の日本人留学生についても触れています。

本データベースは、アメリカと諸外国の異文化交流史の資料としても貴重なものです。

Nineteenth Century U.S. Newspapers 1-3

左から

  • 1812 米英戦争
    「途方もない勝利!」アンドリュー・ジャクソン将軍がニューオーリンズで英軍を破る。この勝利でジャクソンは国民的英雄になった。(February 6, 1815, Daily National Intelligencer)
  • 1824 独立戦争の英雄ラファイエット、米国を訪問
    「(パレード一行が建国の父の一人)故ジョン・ハンコックの家の前を過ぎると、市長がラファイエットに「そこに閣下の友人の未亡人がいますよ」と言った」(September 7, 1824, Raleigh Register)
  • 1831 黒人奴隷ナット・ターナーの反乱
    「ナット・ターナーの告白」逃亡後拘束され、絞首刑に処せられる前にナット・ターナーが獄中で行なった告白はパンフレットとして出版された。(December 13, 1831, New-York Spectator)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 4-6

  • 1842 チャールズ・ディケンズ、アメリカを旅行 
    ニューヨークではワシントン・アーヴィングらにより晩餐会が催された。(February 25, 1842, Daily National Intelligencer)
  • 1844 ベンジャミン・オンダードンク事件
    米国聖公会の主教の性的スキャンダルは裁判に発展、大きな関心を集めた。(February 24, 1845, Arkansas State Gazette)
  • 1845 ジョン・オサリヴァンの「明白なる使命」
    「古い農民」からの投書。「泥棒になるのが明白なる使命だったからとの理由から罰の減免を泥棒から請われた判事は、盗みのために絞首刑になるのもあなたの明白なる使命である、と答えるだろう」米墨戦争を批判する投書(August 6, 1847, Daily National Intelligencer)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 7-9

  • 1846 米墨戦争
    「メキシコシティ陥落、栄光の勝利」(October 1, 1847, The Semi-Weekly Natchez Courier)
  • 1848 カリフォルニアで金鉱発見、ゴールドラッシュ
    「カリフォルニアから興味深いニュースー金鉱発見」(September 17, 1848, The New York Herald)
  • 1848 女性の権利拡張のためのセネカフォールズの大会
    大会では「すべての男女は平等につくられ、造物主により譲渡不能の権利を付与されている」との「所信の宣言」を採択した。(August 25, 1848, The Liberator)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 10-12

  • 1849 アスター・プレイスの暴動 
    英人俳優マクレディの米国公演は、一部の観客が公演を妨害し、死者が出る大事件になった。記事は公演中止を考えるマクレディに公演継続を求める公開依頼状。ワシントン・アーヴィングの名前が見える。(May 9, 1849, The New York Herald)
  • 1851 ブルーマー旋風
    「北部の新聞を手に取り、大胆で実験的な女性が既成ファッションに対して行なっている新たな聖戦に関する記事を見ない日はほとんどない」(June 14, 1851, The Raleigh Register)
  • 1852 ストウ『アンクル・トムの小屋』出版
    「『アンクル・トムの小屋』が舞台で上演され、毎晩多くの観客で賑わっている」(October 8, 1852, The Frederick Douglass’ Paper)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 2_1-3

  • 1859 ダニエル・エメット、『ディクシー』作曲
    「『ディクシー』はどのようにして南北戦争中、南部のラ・マルセイエーズになったか」(May 15, 1869, Daily Central City Register)
  • 1860 幕府使節団訪米
    「日本使節団の到着に大都市ニューヨークは興奮」(June 15, 1860, The New York Herald)
  • 1861 南部諸州、連邦脱退
    「州議会、連邦離脱を全会一致で可決。歓喜に沸くチャールストン」(December 21, 1860, The New York Herald)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 2_4-6

  • 1863 奴隷解放宣言
    「解放宣言。来年1 月1 日をもって反乱諸州の奴隷は自由に」(September 26, 1862, The Liberator)
  • 1864 アンナ・ディキンソン、女性で初めて議会で演説
    21 歳のアンナ・ディキンソンはリンカーン大統領、下院議長をはじめ多くの議員を前にユニオンと自由のために演説した。(February 19, 1864, The Liberator)
  • 1865 南北戦争終結
    「リー将軍降伏。休戦合意」(April 10, 1865, Daily National Intelligencer)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 2-7-11

  • 1865リンカーン大統領暗殺
    「リンカーン大統領暗殺!犯人は逃亡。リンカーン重体。ワシントンに激震」(April 15, 1865, Boston Daily Advertiser)
  • 1866 音楽劇『ブラック・クルック』ニューヨークで初演
    ニューヨークのニブロズ・ガーデン劇場で上演中の『ブラック・クルック』第2 幕のシーン。(October 6, 1866, Frank Leslie’s Illustrated Newspaper)
  • 1868 アンソン・バーリンゲームの清朝使節団訪米
    ホワイトハウスに大統領を表敬訪問するアンソン・バーリンゲーム以下訪米使節団随行員。
    (June 27, 1868, Frank Leslie’s Illustrated Newspaper)
  • 1871 津田梅子、山川捨松ら、留学のため渡米
    「津田梅子が日本人のキリスト教への改宗、アメリカ流結婚披露宴の導入など4つの提案を日本の英字紙に寄稿したことを伝える記事」(November 12, 1875, Inter Ocean)
  • 1871フィニアス・バーナム、サーカス団を結成
    「州から州へ大陸を横断するバーナム一団一博物館、動物園、キャラバン、曲馬場」(May 20, 1871, Frank Leslie’s Illustrated Newspaper)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 3-1-3

  • 1876 フィラデルフィアで独立100周年記念万国博覧会
    「史上最大の博覧会始まる。あいにくの雨模様でもフィラデルフィアの愛国者の熱意は高く」(May 11, 1876, Inter Ocean)
  • 1881 トニー・パスター、ブロードウェーに14番街劇場を創設
    「トニー・パスターはニューヨークのブロードウェーにある第一級の劇場のオーナー兼経営者であり、自身の周囲に様々な才能を持った最高の芸術家を集めている」(December 15, 1881, The Galveston Daily News)
  • 1881 列車の冷蔵車発明
    各車両に5,000 ポンドの氷を容れる容器を設置、ビールを輸送した。(August 26, 1881, Milwaukee Daily Sentinel)

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  • 1882 中国人移民排斥法成立
    クーリーと呼ばれた中国人移民労働の流入が白人労働者の雇用機会を奪っているとの労働組合の統計報告を記事で報道。(January 9, 1882, Daily Evening Bulletin)
  • 1884 新渡戸稲造、内村鑑三、留学のため渡米
    新渡戸稲造とメアリー・エルキントンの婚約報道。「3年前に二人が出会った時、メアリーはすぐに才気煥発なニトベに強い印象を覚えた」(December 3, 1890, The Daily Picayune)
  • 1885 コカ・コーラ発売
    「ペンバートンのコカ・ワイン!全身に清涼感を拡散する神経強壮飲料。持続的に生命力を回復し、疲労を防止」(December 6, 1885, Rocky Mountain News)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 3-7-9

  • 1886 自由の女神像建立
    クリーブランド大統領をはじめ政府高官が参列した除幕式は盛大に行われた。フランスからは設計者のバルトルディのほか、スエズ運河を建設したレセップスも参列した。(October 29, 1886, The Milwaukee Sentinel)
  • 1890 ウーンデット・ニーの虐殺
    女性や子供を含む多数のスー族を虐殺したフォーサイス大佐以下第7 騎兵隊の行動の正当性を巡っては軍部内でも意見が分かれた。(January 7, 1891, The Atchison Daily Globe)
  • 1893 シアーズ・ローバック開業
    シアーズ・ローバックの急成長の秘密を誠実な経営、事業に対する細心の注意、顧客への忠誠に見ている。(May 4, 1895, Irish World and American Industrial Liberator)

Nineteenth Century U.S. Newspapers 3-10-12

  • 1893 野口米次郎渡米
    「ヨネ・ノグチは最近東部の都市でも注目を集めるカリフォルニアの詩人である。ノグチは細身で活動的な20 歳の日本人の若者で、その漆黒の髪はむしろトスカナ風を思わせる」(September 9, 1896, The Denver Evening Post)
  • 1894 キネトスコープによる初の映画鑑賞
    「エジソンの最新の発明であるキネトグラフとキネトスコープがデンバーのカーティス通りに現われ、連日数百人の見物客が訪れている」(October 26, 1894, The Evening Post)
  • 1898 米西戦争
    「マニラ陥落。郊外炎上。デューイ提督に昇進へ」(May 3, 1898, The Arkansas Gazette)

広大な国土をもつアメリカ合衆国においては地方紙が圧倒的に重要で、特に交通・通信技術が発展途上にあった19世紀においては各都市で発行される多様な新聞が世論や産業、文化に多大な影響をおよぼしました。

Nineteenth Century U.S. Newspapersに収録されたさまざまな発行地・読者層・政治主張をもつ当時の新聞をフルテキスト横断検索することで、19世紀アメリカの歴史と文化を多面的にとらえ直すことが可能となります。

(センゲージ ラーニング株式会社)

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