人文社会系研究

2022年3月、北米先住民関連一次資料データベース第二弾リリースへ

2021.11.15

2022年3月、センゲージ ラーニング社Galeが提供する北米先住民の歴史、社会、文化を取り上げるデータベース・シリーズIndigenous Peoples of North Americaより新たなデータベースが登場します。

The Indian Rights Association, 1882 – 1986は、19世紀後半から20世紀にかけて北米先住民を支援した非政府組織として知られるインディアン権利協会の一次資料を収録します。

  • 収録資料所蔵機関: ペンシルバニア歴史協会
  • 収録量: 約340,000ページ
  • 収録年代: 1882年 – 1986年
  • 対象分野例:北米先住民研究、歴史、法律、経済、心理学、公衆衛生、社会学、文化人類学、宗教など。

収録資料

  • インディアン権利協会が受発信した書簡
  • 協会内の記録
  • 同団体および関連機関が発行したパンフレットや出版物
  • 年次報告
  • 法律の草案
  • 運営ファイル
  • ニュースの切り抜き
  • 協会創設者Herbert Welsh関連文書
  • 西部フィールド調査の写真
  • インディアン問題評議会(Council on Indian affairs)による資料
  • 北米先住民の社会的・文化的伝統に関する原稿、研究ノート

収録コンテンツ全点が新たに電子化された資料です。収録資料には手書文書も含まれますが、手書文字認識(Handwritten Text Recognition)により、全文検索の対象となります。

※本データベースでは、原則としてインディアン権利協会関連全文書を収録しますが、宗教儀式の写真など、文化的な配慮が必要な資料については一部収録を見合わせたものもあります。Galeはペンシルバニア歴史協会と共同で、文化的見地からパート収録コンテンツを精査しています。その他の軽微な例外としては、著作権保護資料、プライバシーが懸念される文書、財務記録、研究価値が認められない領収書など、収録対象外とした文書も一部あります。

インディアン権利協会(The Indian Rights Association=IRA)について

1882年設立、インディアン権利協会は北米先住民を支援した最初期の団体です。他の白人が運営する団体と同様に同化主義的見解を提唱した一方で、最も早い段階から、北米先住民コミュニティへ派遣された役人の不正を取り締まる役割を果たした機関の一つでもありました。

また当時、北米先住民に影響力を持つ法律や政策の中には、神話や半信半疑の情報を基にするものも含まれており、正確な情報が不足していました。協会は北米先住民の居留地の調査活動に出資し、パンフレットやニュースレター等を通じて米国政府関係者や、一般市民に信頼できる情報を提供しました。

協会活動例

  • 立法、政策、インディアン業務評議会(Board of Indian Commissioners)やインディアン事務局(Bureau of Indian Affairs)、合衆国内務長官の活動監視
  • 北米先住民の部族や民族を代表するロビー活動
  • 北米先住民支援機関の設立支援
  • 北米先住民支援機関と提携し、州・連邦裁判所訴訟
  • 北米先住民に関する問題を啓蒙するための、教育カリキュラム作成支援
  • 部族や居留地での診療所建設支援
  • 連邦政府の政策下での部族の活動ガイドライン策定
  • 連邦政府との調停
  • 北米先住民に権利保護のための証言や方針説明書の提供
  • 専門家の協力を仰ぎ、諸問題に対応するための文書作成
  • 諸部族代理で土地権利請求、土地紛争の調停など、協会が関与した諸問題関連ファイル、弁論趣意書他資料の収集

本データベースの価値

社会的正義に焦点を当てる

先住民の権利は、他の人種や民族の権利と同様に、今なお重要な意味を持ちます。特に、先住民居住地域での天然資源の開発をめぐる争いや、アメリカの選挙で100人もの先住民候補者の立候補が見込まれるにもかかわらず、有権者ID法が先住民の投票を阻害する状況においてはなおさらです。

過小評価されてきたものを再評価

20世紀の北米先住民の生活史に特化した本データベースには、希少かつ入手困難で、これまで収集が不完全だった資料も数多く含まれます。

発展中の研究分野を支援

先住民研究は、長期的に進退を繰り返しながらも、学問領域毎に、年々発展を続けている分野です。研究者数も増加しており、アメリカ先住民研究協会(Native American and Indigenous Studies Association)会員は、過去10年間の会議参加者だけをみても300 人から1,000 人へと増加しました。また、アメリカ先住民研究プログラムがゆっくり、しかし着実に追加されていることも影響しています。特に、先住民人口が多い地域では、大学が先住民学生を誘致すべく努力しています。この分野の出版物も、1990年から2007年まで増加、直近の10年間では安定しています。

学際分野での活用

先住民族研究は、他のコミュニティに焦点を当てた研究と同様に、歴史、法律、経済、心理学、公衆衛生、社会学、人類学、宗教、その他の幅広い分野の学者が参加する学際的な研究であり、広く深い活用が期待されます。

稀少かつ完全な収録内容

1882年に設立されたインディアン権利協会は、その歴史の長さから、白人創設者の初期のパターナリズムを反映し、先住民の歴史の中で擁護という考え方が変化していることを強調しています。同協会のコレクションの一部は40年以上前にマイクロフィルム版で初めて公開されましたが、20世紀を通じて先住民の利益を代表する重要な活動をしていたにもかかわらず、本データベース登場以前には、同協会所蔵コレクションの大半は、閲覧ができない状態におかれていました。

北米先住民の権利を擁護した最初期の団体の資料を通じて、先住民支援の在り方の変遷に焦点を当てるデータベースです。

(紀伊國屋書店 デジタル情報営業部 清水)

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