これからの学び

【連載】ICTと学校教育 ジャパンナレッジSchool導入校に聞く⑤

2022.01.12

中高生の学習に役立つコンテンツを一括検索・閲覧できるオンライン総合学習支援ツール、ジャパンナレッジSchool。2022年度から高等学校で始まる「総合的な探究の時間」や各教科学習におけるICT活用授業を見据えた、中高生の学習に役立つコンテンツを一括検索・閲覧できるオンライン総合学習支援ツールだ。

導入事例を紹介する本連載の五回目は埼玉県狭山市にある中高一貫校、私立西武学園文理高等学校。Google for Education認定トレーナーでもある、国語科の笠原諭先生にお話を伺った。

あのジャパンナレッジが自由に使えるなんて…

──ジャパンナレッジSchoolをお知りになったきっかけ、採用に至った決め手は何でしょうか?

2020年9月に幕張で行われた教育ITソリューションEXPO(教育総合展)でジャパンナレッジSchool(以下、JKS)の出展ブースを見つけたことがきっかけです。同行していた同僚を思わず呼びとめて、「ジャパンナレッジが定額で、しかも生徒が自由に使えるなんてすごい!」と力説してしまいました。
半年間トライアルができるというお話をいただき、学校に持ち帰ってすぐに申し込みました。ちょうどそのころ学校では探究学習を進めていたのですが、コロナの影響でフィールドワークなどの取材にも行けないため、資料不足で困っていました。そのため、JKSで新書や資料類が使えるというのはまさに渡りに舟でした。

トライアルを経て、探究学習や進学指導での使い勝手が良いという評価も得られたので、2021年度は一部の学年で導入し、少しずつJKSを活用できる学年を増やしていこうということに決まりました。

──笠原先生は大学生のころジャパンナレッジLib※をご利用いただいていたそうですね。ジャパンナレッジ Schoolの第一印象はいかがでしたか?

大学図書館作成の、授業で活用できる資料をまとめたガイドブックでジャパンナレッジが紹介されていたので、使い始めた記憶があります。調べものをするのにとても便利なツールだったのですが、当時はわざわざ図書館まで行かないと使えなかったので、そこまで頻繁には利用できていなかったですね。ですからジャパンナレッジSchoolを見て、各々の端末で「全員が好きなときに好きなように使える」というのは、あまりに革命的だな、と思いました。これだけのコンテンツがいつも自分の手の中にある、とはすごい時代になったな、と。

コンテンツの数としてはジャパンナレッジLibのほうが当然ながら多いのですが、JKSは高校生が使うのにはちょうど良い量だと感じています。また「日本国語大辞典」「国史大辞典」など各教科の中でも特に信頼度の高いものが入っていることもありがたいですね。

※ジャパンナレッジLib
2001年にサービスを開始した辞事典のデータベース。国内最大級のレファレンスツールとして大学や公共図書館、研究機関など国内外約800法人で利用されている。

まずは検索ツールとして活用

──貴校のネット環境、パソコンなどデバイス環境についてお聞かせください。

高校では全館がWi-Fi完備となっています。端末については、今年度の高校1年生から1人1台Chromebookを導入しました。そのため1年生は授業中、Chromebookで手軽にJKSを活用してもらっています。2、3年生については指定の端末がないので、学校ではスマートフォンなどから、家ではパソコンなどからアクセスをしてもらっています。

──生徒のみなさんの反応はいかがですか?

たくさんのコンテンツを利用できるからすごい、という感想が多く聞かれますね。また専門的で難しいコンテンツもあるので、背伸びしてチャレンジできるから面白い、という反応もありました。

授業では、わからない言葉があったらまずJKSで調べるようにと言っています。検索ツールとしてまずJKSに慣れてもらわないことには利用頻度があがらないですから。そのため、わからない言葉を検索するという形で使うことが一番多いと思います。そのうえで国語の授業では電子書籍を読んだり「新編 日本古典文学全集」を読んだりする機会が増えています。また夏休みなど長期休暇中に電子書籍の読書の課題を出すなどもしています。

──ほかの先生方がJKSを活用されているシーンは?

Googleアカウントでのシングルサインオンができるようになったおかげで活用が進んでいる印象があります。具体的には探究学習で特に利用していたようです。また学校推薦型選抜や総合型選抜など受験対策においても、電子書籍の新書類などを使って指導しているようです。生徒には新書類を大学の学部学科の分野別で一覧にしたものを作成して、面接や小論文を書く前にできるだけアクセスするよう助言しています。

古典の多読につながった課題とは?

──「新編 日本古典文学全集」を使ってユニークな課題を出された先生がいらっしゃったとか?

高校1年生の古典の授業ですね。同僚の先生から「JKSを使って古典の多読につながるようなことをやってみたい」と相談を受けたので、お手伝いさせてもらいました。JKSには「新編 日本古典文学全集」の収録があると紹介していたことがきっかけでした。その教材単元では「宇治拾遺物語」から興味のあるお話を1つ選んでもらい、3、4人でチームを組んで動画を作成し、プレゼンテーションをしようという授業を実施してくれました。

実際の授業では「新編 古典文学全集」の「宇治拾遺物語」の口語訳や注釈を読んで、一人ひとりが好きなお話をチームに持ち寄りどのようなテーマにするか決め、そこからどんな動画にするか話し合い、みんなで協力して作成していました。生徒たちはイラスト、効果音やBGM、さらにナレーションまで駆使して、1つのお話を2、3分ほどの動画にまとめてくれました。あらすじをなぞるばかりでなく、このお話はどういうことを伝えようとしているのか、そこまで読み込んでつくってくれていましたね。

──その課題に対する生徒のみなさんの反応はいかがでしたか?

動画でのプレゼンテーションなので特に授業では発表の時間をもうけず、「Flipgrid」というサービスに動画を上げてもらい、それぞれ夏休み中の好きな時間に見てもらってコメント欄に感想を書く、というスタイルで相互評価を実施したそうです。約50人のクラスで総視聴時間が60~70時間にも及んだそうで、つまり、1人1時間以上は視聴しているということになります。自分たちが取り上げたお話だけでなく、ほかのチームがつくったものも楽しく視聴できたようです。教科書やテストで取り上げられた一部だけではなく、様々な作品を読める「新編 日本古典文学全集」が活用できたからこそ成り立った課題だと思っています。古文の読解力を上げるためには多読が大切なので、とてもよい単元を実践していただけたように感じます。

──今後どのようにJKSを活用していきたいですか?

探究学習では信頼できる情報源としてまずはJKSを使う、そのことを約束事として生徒たちに定着できればいいなと思っています。またデジタル教材が積極的に活用される時代だからこそ著作権保護についても考えなくてはいけないと思います。生徒たちが資料をつくる際や、先生方の教材づくりの際にも著作権を意識することが大切になってきますから、著作権についても配慮されているJKSを使っていくことで著作権遵守の意識が校内に醸成されていけばと感じています。

 


【私立西武学園文理高等学校】

埼玉県狭山市にある中高一貫の私立校。「すべてに誠をつくし最後までやり抜く強い意志を養う」が教育方針。世界のトップエリートの育成を目指すため、2021年度からグローバル選抜クラス、グローバルクラスといった「グローバル」をキーワードにクラス編成を刷新。また難関国公立文系・理系進学コース、国公立文系・理系進学コース、私立文系・理系進学コースなど進路別に多彩なコースが選択できる。探究的な学習の時間として「文理探究~Bunri Inquiry~」を実施。それぞれの生徒が自らの興味関心に従って探究的な学びを展開している。

私立西武学園文理高等学校


【連載 ICTと学校教育】


【ジャパンナレッジSchoolについて】

■ サービスの概要と特徴

ジャパンナレッジSchoolは、出版各社から提供された中高生の学習に役立つ辞事典や参考書のほか、叢書や新書、また統計資料などを一括検索・閲覧できるインターネットサービスです。40以上の信頼できるコンテンツを、パソコン、タブレット、スマートフォン等でいつでもどこでも利用することができます。生徒の学習利用のみならず、教員の教材作成や研究にもご利用いただけます。

お問い合わせは、最寄りの営業部・所 または、jks@kinokuniya.co.jpまでお願いいたします。

(紀伊國屋書店  学校教育ICT推進センター)