図書館をつくる

紙も電子も楽しめる図書館へ! – 帝京大学小学校LibrariE活用事例

2025.08.25

紙の書籍と電子書籍、互いに補い合う存在として児童の読書活動を支援されている帝京大学小学校メディアセンター。2023年度から電子図書館サービスLibrariE(ライブラリエ)を導入し、子どもたちに寄り添った読書提案や利用促進への取り組みをしている。導入年度の電子書籍貸出数は2,140回に達し、紙媒体と合わせた貸出総数は前年度の1.9倍と大きく増加。その傾向は今でも続いている。今回は、LibrariEの運用をご担当されている副教頭・古野美香先生へ話を聞いた。

「電子書籍は読書のきっかけになるものを」

―導入の経緯を教えてください

本校では、コロナ禍以降にタブレットが導入され、3年生以上が1人1台使っています。それにより、調べものや授業での活用など選択肢が広がった一方、休み時間の風景が変わりました。これまで休み時間にメディアセンターへ来て本を借りたり、読書をしたりする光景はよく見られましたが、タブレットでできることが増え、読書が選ばれなくなり、貸出冊数の大幅な減少がみられました。その中で読書指導をしていくために、できるだけハードルを下げられる方法として、タブレットで手軽に利用できる電子書籍を検討しました。紙の書籍も電子書籍も使える環境を用意し、将来的には自分でその時に適切な方を選択して利用できることが大事だと考え、電子図書館LibrariEの導入に至りました。

―選書はどのようにされていますか?

紙の蔵書とは選書基準を少し変えていて、ハードルを下げ読書のきっかけになるように、という導入当初の方針をもとに、写真やイラストが豊富で子どもたちが楽しめるような書籍を中心に揃えています。1冊で深く読むよりも、幅広いテーマのものを用意し、より詳しいことを知りたい場合は、メディアセンターで紙の書籍で調べてもらうなど、電子書籍から紙の書籍への利用に繋がる動線づくりを意識しています。

―広報はどのようにされていますか?

年度初めのオリエンテーションで、学校図書館でのルールなどを載せた「メディアセンターの手帳」を配布しています。その中で、「デジタルメディアセンター」として電子図書館について掲載し、先生から説明していただいたり、デジタルで発行している「メディアセンターだより」にもLibrariEで読める本を紹介したりしています。

児童からは、「休み時間にぱっと使いやすい」「読み上げ機能を活用しています」「もっと冊数を増やしてほしい」など、使われているからこその声が届いています。基本的には3年生以上対象なので1,2年生へは積極的に広報はしていませんが、低学年の保護者からも使い方について聞かれるなど、関心を持っていただいているなと思います。

―2023年7月に利用アンケートを実施されたと伺いました

はい、回答児童170名のうち151名がLibrariEを「自分の端末から利用している」と回答し、利用環境は十分に整備されています。読みたい本が決まっている時はメディアセンターへ行き紙の書籍を借りるが、特にお目当てはないけれど読書したい気分の時は、ぱっとLibrariEを開き、気になった本を読んでいる傾向がある、というアンケート結果でした。ここでも電子書籍のハードルの低さを感じられました。

利用促進のための取り組み ― さまざまな仕掛けが活き、利用率は約90%

電子書籍は導入後いかに利用してもらうかが肝心。アンケート回答人数の約90%が利用していると答えた帝京大学小学校デジタルメディアセンターでは、どのような利用促進の工夫をしているのか尋ねた。

窓からのぞく緑が爽やかな校舎1階のメディアセンターにて

1.入口としての選書と仕掛け

LibrariEトップ画面の特集は、「新しく入った本」「人気の本」「特集テーマ」の順で並び、興味のあるテーマや話題の本に直感的にアクセスしやすい構成です。読書のハードルをさげ手軽に楽しめる本などを中心に、児童に身近な視点でテーマを提示しています。

LibrariEの特集で紹介した書籍を、「電子書籍で人気の本」などのコーナー展示として再掲し、電子書籍で興味を持った児童が、実際に手に取ることで紙の書籍への橋渡しとなっています。

また、電子書籍ではあえてシリーズものの第1巻のみを用意しています。続巻は紙媒体で揃え、続きが気になったらメディアセンターへと案内し、電子書籍だけで完結するのではなく、電子書籍で読書が始まり、紙媒体で読書が広がる仕組みを作り、どちらの読書活動も促進させられるように工夫しています。

今後は「ジャンルで探す」機能もより充実させ、特集・ジャンルからさまざまな書籍にリーチしてもらえる仕組みを作りたいです。

2.調べ学習との連動

新しい社会・地理情報を素早く届けるため、2類・3類の書籍を優先的に導入しており、調べ学習で活用しています。電子書籍も調べものに使っていいことを先生から声かけを行っています。夏休みには「自由研究に役立つ本」の特集を掲載し、関心を高めました。2024年度からは読み放題パック「Gakken自然科学図鑑パック」を導入し、調べやすさ・わかりやすさにも配慮したコンテンツ選定を行っています。

調べ学習の中で、ふと電子書籍で読んだ本を思い出し、その知識を活用している場面もあったとのこと。
タブレット1台携帯すれば、いつでもどこでも読める電子書籍ならではの良さが活かされている。

3.読書習慣の定着を支援

読書好きの児童の期待に応える形で、文学作品の読み放題パック「小学館J文学館パック」を活用しています。通常、読みたい本が貸出中だと読むことができませんが、同時アクセス無制限の読み放題パックを活かし、読みたい時に誰でも読める環境を整えました。読書ランキングで上位にランクインするなど、リピーター層の定着にもつながっています。

4.紙とデジタルの相互活用を意識した運営

電子書籍と紙の本は対立軸ではなく、児童の読書行動において互いに補い合う存在と捉えています。どちらか一方に偏らず、それぞれの利点を活かして学びの導線を整備することを大切にしています。今後は、検索システムをクラウド化して、タブレットから、紙も電子も直接検索ができるようにし、より統合的なアクセス環境の整備を進めていく予定です。

より多くの子どもたちに読書を楽しんでもらうために

―LibrariEへのご要望はありますか?

子どもたちにとって意義のある本を選びたい思いがある中で、じっくり時間がとれないので、選書の段階で、小学生向けなどで絞り込んで探すことができればよいなと思います。

―実は昨年から選書オーダリングシステムで「利用対象」という項目が追加され、小学生・中学生・高校生や学年別などで対象を絞って検索することができるようになりました。

そうなんですね。気づかなかったです。やってみます。

選書オーダリングシステムのトップにある推薦図書の特集やランキングも参考にしているので、ランキングの中でさらに小学生対象で絞り込むなど、活用できそうです。

―今後取り組まれたいことや展望などをお聞かせください

アンケート結果で読書をしないと回答した児童たちへアプローチしたいです。紙媒体よりも電子書籍のほうがリーチしやすいのではと考えていて、タブレット自体は使っているので、そこから見てもらったり、どうしたら面白い・読みたいと思ってもらえるかを考えたりして、色んな子が読書を楽しんでもらえるような工夫をしていきたいです。

中には、音声読み上げ機能を使いながら電子書籍を読んでいる児童もいました。目よりも耳から情報を入れた方が理解しやすい場合には、音声読み上げ機能も使ってもらえるかもしれません。電子書籍だからこそできる方法をうまく使いながら、色々な角度から届けていきたいと思っています。

―ちなみに、読み上げ機能の使い方は案内をしていたのですか?

いえ、読み上げの使い方など詳しくは教えていませんでしたが、自ら色々と機能を試して直感的に操作しているみたいです。子どもは柔軟ですね。

LibrariEは子どもたちに「デジタルメディアセンター」として親しまれている

児童に寄り添いながら、状況に応じた明晰な運用を行い、読書支援をされている帝京大学小学校メディアセンター。
紙と電子を相補的に活用し、多くの児童に読書を楽しんでもらえるような工夫をしています。

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(デジタル情報営業部 庄司)