図書館をつくる

図書館がつなぐ学生と企業の出会い ― 大同大学図書館 ―

2026.04.06

大同大学図書館のユニークな試み

 

日本経済における人手不足の傾向は近年ますます顕著になり、日銀短観における最新の雇用人員判断DI(2025年12月)を見ても、製造業・非製造業の産業区別を問わず、大企業・中堅企業・中小企業の企業規模を問わず、コロナ禍を過ぎて以降、一貫して人手不足を感じる企業は増加しています

この状況は、特に新卒学生の就職状況を売り手市場にし、初任給の上昇だけでなく、比較的自由に就職先を決められる環境にしており、学生にとっては嬉しい状況と言えそうです。

ところが、厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、新規大卒就職者の3年以内離職率は33.7%、新規高卒就職者の場合は37.9%と、離職率が高止まりしたままになっています。人手不足に悩む企業側が求める人材と、学生の考えるキャリア像との間に、どうやらミスマッチがあるようです。

このような学生と企業との間のミスマッチの解消について、大学では一般的にキャリアセンターが担当業務を担い、学生に対する丁寧な就活支援を行っていますが、図書館という場所を使って学生と企業との出会いの場を作るユニークな取り組みを大同大学図書館(名古屋市南区)では行っており、この記事でご紹介したいと思います。

 

企業が協力する図書館展示

 

大同大学図書館では今年3月より 「貨物鉄道が結ぶ石灰石と特殊鋼」という一風変わった企画展示を行っています。特殊鋼とは、自動車や飛行機などに使われる耐熱性や耐食性(腐食・錆への耐性)を持った金属のことですが、この金属の製造にかかわる重要な素材が石灰石になります。

工学系大学である大同大学の学生は、卒業後、自動車等のモビリティ企業への就職も多く、この図書館展示企画では、関連図書の展示の他、特殊鋼を使った車のエンジンの一部や、石灰石そのものも展示し、学生の興味を惹きつけています。

この展示には、地元の3つの企業からの協力を受けており、特殊鋼を製造する大同特殊鋼(株)、石灰石を供給する矢橋ホールディングス(株)、そして石灰石を運搬する名古屋臨海鉄道(株)から、貴重な映像資料や展示物をお借りして、図書館展示を華やかにしています。実際に展示準備のため、大学職員や図書館司書、学生が各社を見学・調査し、詳細なレポートも図書館内に掲示されています。

 

この展示の取り組みは、工学系学生に対して特殊鋼に関わる興味・関心を喚起するというだけではなく、実際に企業の工場の見学なども行い、学生と企業との新しい出会いの場を作っているところにユニークさがあります。学生が社会に出る前に、実際に企業で働く社員やエンジニアと交流する機会を持ち、企業の側も通り一遍の会社案内を説明会で行うだけではなく、図書館という新しい出会いの場で、学生に対し自社の活動を訴求できるところに、面白さがあると言えるでしょう。

 

企業内研究者への道

 

大同大学図書館でのこのような企業とコラボレーションした展示のきっかけは、同大学の特別客員教授であり、2024年にネオジム磁石の発明によって欧州発明家賞を受賞した佐川眞人氏の業績展示が始まりでした。

欧州発明家賞は、欧州特許庁によって優れた発明に対して授与される賞であり、日本人では過去にカーボンナノチューブを発明した飯島澄男氏(2015年)、リチウムイオン電池を発明した吉野彰氏(2019年、同年ノーベル化学賞も受賞)が受賞しており、佐川氏の受賞は3人目。この受賞を記念した図書館展示「永久磁石~大同大学と大同特殊鋼」が、学生と企業内研究者への道とをつなげる企画となり、実際に佐川眞人氏も図書館に訪れて、学生に向けたメッセージを残してくれました。

その後、2025年には「大同大学はモビリティ大学だ!きみたちの未来水素モビリティ」と題した図書館企画展示を開催されています。

自動車工場内で使われる自動走行型部品搬送ロボット(AMR)や、空港や商業施設で使われる人間型ロボットなどの展示も行いながら、大同大学の周辺に存在するモビリティ企業の紹介をし、同大学内で研究されている諸分野(自動車技術・ドローン・航空宇宙・モーター・エネルギーなど)において、学生が卒業後も様々な企業の中で新技術の研究を継続していくことを促す取り組みが、図書館内で行われました。

 

学生と企業をつなぐ場としての図書館

 

現在の大学図書館は、オープンサイエンスの流れの中で大学の研究成果をオープンアクセスで公開する取り組みや研究データの管理など、より直接的な研究支援に関わる役割が期待されています。図書や雑誌を管理と利用促進を行う場所という従来の間接支援的な役割から、一歩先に進むことが求められていると言えるでしょう。

資料やデータに関しては、そのような取り組みが進んでいますが、人に関しても同様な取り組みが今後は必要かもしれません。柔軟で豊かな才能を持った学生と、様々な事業を行う企業とが、オープンな場で出会う場所として図書館が機能できるとすれば、図書館の新しい価値が生み出せる。大同大学図書館の取り組みからは、そのような期待が感じられそうです。

 

 

大同大学の概要

・所在地  名古屋市南区滝春町10番地3

・沿革   1964年:中部産業界の支援を受け、大同工業大学を設置。

______2002年:大同大学と改称。

・学部   工学部 建築学部 情報学部 教養部

・大学院  工学研究科 情報学研究科

・図書館蔵書数 大学図書:約24万冊 逐次刊行物:2000種類(※2026年3月現在)

・ホームページ 大同大学 DAIDO UNIVERSITY

 

(紀伊國屋書店 ライブラリーサービス営業本部)