世界有数の図書館、公文書館等が所蔵する19世紀の貴重な資料から史料的価値の高いものをデジタル化して提供するデータベース、Nineteenth Century Collections Online (NCCO)。今回は、その中からEurope and Africa, Colonialism and Cultureをご紹介します。
ヨーロッパによるアフリカ進出のプロセス
ヨーロッパのアフリカ進出は、18世紀後半から19世紀前半にかけて、宣教師や探検家がアフリカの地を踏んだところから始まります。その後の100年間で、宣教師による布教活動が行われ、ヨーロッパで生産された消費財の市場と原材料の供給地として近代資本主義システムに組み込まれ、ヨーロッパの政治制度を導入する植民者による「文明化」が進められました。そして19世紀後半から20世紀前半にかけて、帝国主義のヨーロッパ列強によるアフリカの争奪と植民地化が本格化します。
Europe and Africa, Colonialism and Cultureは、19世紀にヨーロッパ人が行ったアフリカ征服の動機、実際のプロセス、そして帰結を深く検討するための一次資料を各種収録します。
これらの資料では、アフリカ分割とイギリスの帝国主義政策、ボーア戦争、ジェイムソン襲撃事件、英仏独間の地政学的対立、内陸アフリカへのルートとしての河川の利用、英仏関係とファッショダ事件、ウィットウォーターズランドの金採掘、ジンバブエにおける農民と炭坑夫間の紛争、宣教師による奴隷貿易停止の試み、南アフリカにおける法人資本主義の起源、アフリカーナーのユートピアの夢、帝国主義に対するアフリカ人の対応、植民地法と慣習法、中国人移民、国境を超える福音主義など、様々なテーマを扱っています。
収録コレクション
米国国務省文書
- Despatches from U.S. Consuls in Bathurst, Gambia, British Africa, 1857-1889
(英領ガンビア・バサースト駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Boma, Congo, 1888-1895
(コンゴ・ボーマ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Cape Town, Cape Colony, 1800-1906
(ケープタウン駐在米国領事からの至急報告)
左:「捕鯨船の停泊中に船員が脱走し、船が出港するまで山間部に身を隠す事態が頻繁に発生していることは周知のことです。脱走した船員の多くは、この地で予期したようには働き口を見つけることができず、貧窮した境遇に置かれています。」
(アイザック・チェイス領事からジョン・フォーサイス国務長官宛1835年3月31日付書簡)
~”June 27, 1834 – October 6, 1842” p. 12~
右:「女性や子供は石炭運搬車に乗って1千マイルもの距離を逃げました。その間に多くの赤ん坊が生まれ、死にました。南アフリカの商業の中心地、ヨハネスブルクは住む人もなく、見る影もありません。商品は放置され、店の戸口は封じられています。数千人の外国人(その中には多数のアメリカ人もいます)がイギリス行きやオーストラリア行きの汽船で脱出しましたが、汽船は定員を超過した状態で出港しました。」
(ジェームズ・ストウ領事からクリドラー国務次官補宛1899年10月17日付書簡)
~”July 4, 1898 – February 28, 1900” p. 347~
イギリスとボーア人のあいだに勃発した戦争(ボーア戦争)による混乱を伝える。
- Despatches from U.S. Consuls in Gaboon, 1856-1888 (ガボン駐在米国領事からの至急報告)
左:「2週間ほど前にも黒人を載せた船がカンバ近郊からプリンス島へ不法に送られました。同様の取引は毎週とは言わなくても、毎月のように発生しています。」
(オーガスタス・ペロー領事からスワード国務長官宛1866年12月1日付書簡)
~”April 2, 1856 – February 24, 1888” p. 100~
右:「体力はひどく衰え、慢性的な高熱により健康が損なわれ、衰弱、消耗し、歩くことすらできません。」
(オーガスタス・ペロー領事からスワード国務長官宛1868年7月24日付書簡)
~”April 2, 1856 – February 24, 1888” p. 184~
アフリカでの外交官や宣教師としての活動は、伝染病に感染する危険と常に背中合わせだった。
19世紀半ば法的に禁止されていた奴隷貿易が続けられ、フランス政府もスペイン政府も防止策を講じていないことを伝える。
- Despatches from U.S. Consuls in Goree Dakar, French Africa, 1883-1906
(仏領ダカール・ゴレ島駐在米国領事からの至急報告)
左:「自由を愛するあらゆる地域の人々の関心を引き付けずにおかない悲劇的な事件がこの植民地で発生しました。フランス植民地高官である24歳の有望で才能ある若者が奴隷制の犠牲になったのです。」
((ストリックランド領事のルーミス国務次官補宛1904年4月20日宛書簡)
~”June 30, 1900 – July 24, 1906” p. 131~
奴隷貿易に対する闘いが、欧米諸国によるアフリカ植民地化を正当化する根拠として使われた。ストリックランドのこの書簡にもその発想がある。
右:左の書簡に同封されたサモリ・トゥーレ(Samori Touré)の写真。フランスに抵抗し、短期間イスラム帝国を築いた。写真の上部に「アンファン・テリブル」と手書きで書かれている。
- Despatches from U.S. Consuls in Grand Bassa, Liberia, 1868-1882
(リベリア・グランドバッサ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Lourenco Marques, Mozambique, Portuguese Africa,1854-1906
(ポルトガル領モザンビーク・ロレンソ・マルケス駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Pretoria, The Transvaal, 1898-1906
(トランスヴァール・プレトリア駐在米国領事からの至急報告)
左:「トランスヴァール植民地とオレンジ植民地にある一般の女性や子供用の収容所の現状について、報告書を同封します。翻訳の時間がないため、原文のままお送りします。」
(ゴードン領事からクリドラー国務次官補宛1901年7月26日付書簡)
~”January 1, 1901 – December 28, 1903” p. 65~
右:「報告書に署名した領事は、国際法上イギリス人とボーア人のあいだの事案に介入するいかなる権利も有するものではないことを認める一方、無力の女性や子供に対する虐待を止める権限を行使せずに、一つの国民が消滅するのを座視することはできないという認識を持っています。」
(ゴードン領事からクリドラー国務次官補宛1901年7月26日付書簡)
~”January 1, 1901 – December 28, 1903” p. 65~
- Despatches from U.S. Consuls in Santiago, Cape Verde Islands, 1818-1898 (カーポベルデ・サンティアゴ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Sierra Leone, British Africa, 1858-1906 (英領シエラレオネ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in St. Helena, British West Africa, 1831-1906 (英領セントヘレナ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in St. Paul de Loanda, Portuguese Africa, 1854-1893 (ポルトガル領サン・パウロ・デ・ルアンダ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Tamatave, Madagascar, 1853-1906 (マダガスカル・トアマシナ駐在米国領事からの至急報告)
- Despatches from U.S. Consuls in Zanzibar, British Africa, 1836-1906 (英領ザンジバル駐在米国領事からの至急報告)
英国政府文書[内閣文書、植民地省文書、外務省文書、インド省文書、陸軍省文書]
- Selected Cabinet Papers on Africa(英国内閣アフリカ関係文書)
「英国内閣文書 1880-1916、文書番号CAB37(British Cabinet Papers, 1880-1916: CAB 37)」の中から1890年から1916年までのアフリカ関連の文書138点を収録します。
ミルナー卿からチェンバレン植民地大臣へのボーア人指導者との交渉に関する至急報告 (1902年4月21日)
- Selected Colonial Office Files on Africa(英国植民地省アフリカ関係文書)
- Selected Dominions Office Files on Africa(英国自治領省アフリカ関係文書)
- Selected Foreign Office Files on Africa(英国外務省アフリカ関係文書)
- Selected India Office Records on Colonial Africa(英国インド省植民地アフリカ関係文書)
左:シャー・ハイランズ鉄道敷設のための 英領中央アフリカへの移民の提案(1905年2月)
右:シインド・ゴアからポルトガル領東アフリカへのアジア人苦力の移民計画(1910年12月17日)
- Selected War Office Files on Africa(英国陸軍省アフリカ関係文書)
文書資料のほか、地図約400点を収録します。
左:20世紀初頭の西アフリカ、右:19世紀末東アフリカ赤道直下の英独国境
- Selected Maps and Plans Files on Africa(アフリカ地図選集)
新聞[英語、仏語、独語]
- African Mail
- 年代:1845年-1917年
- 言語:英語、アフリカーンス語
- 発行地:リバプール
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
ナイジェリアのカラバルで宣教活動をしていたメアリ・スレッサーの追悼記事。現地の方言を操り、先住民に大きな精神的影響力を及ぼしたことを伝えている。
~African Mail 29 Jan. 1915~
- African World
- 年代:1905年-1913年
- 言語:英語
- 発行地:ロンドン
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
- Bulletins du Comité de l’Afrique française
- 年代:1891年-1914年
- 言語:フランス語
- 発行地:パリ
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
- Colonial Africa Newspapers from the British Library
- 年代:1821年-1922年
- 言語:英語、フランス語、アフリカーンス語
- 収録数:23紙
- 原本所蔵機関:大英図書館
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- The Gold Coast Methodist Times
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- Diamond Fields Advertiser
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- Le Mouvement Géographique
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- The Gold Coast Aborigines
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- The Royal Gazette; and Sierra Leone Advertiser
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- The Sierra Leone Guardian
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- The Gold Coast Free Press
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左:「メアリ・キングズリの死は世界の科学界、文芸界にとって損失であるだけでなく、アフリカと人類にとっても損失である。」
(1900年6月30日のSierra Leone Weekly Newsに掲載されたキングズリ追悼記事)
右:アフリカ協会のサヴォイ・ホテルでの晩餐会の座席表 同協会はメアリ・キングズリの業績を記念して設立された
~African World and Cape-Cairo Express 25 Feb. 1911, p. 46~
- Deutsche Kolonialzeitung
- 年代:1884年-1922年
- 言語:ドイツ語
- 発行地:フランクフルト
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
定期刊行物
- Annales de l’Extrême Orient et de l’Afrique
- 年代:1878年-1891年
- 言語:フランス語
- 発行地:パリ
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
- Yale Divinity School Periodicals on Africa(イェール神学校アフリカ関係定期刊行物)
- 年代:1800年-1900年
- 言語:英語
- 収録数:9タイトル
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- On Trek South Africa General Mission
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- The South African Church Weekly Newspaper
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- The South African Pioneer
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- Madagascar Mission Magazine
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- Transvaal & Southern-Rhodesia
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手稿
- Exploration and Colonization of Africa(アフリカの探検と植民化)
- 年代:1794年-1844年
- 言語:英語
- 収録数:29手稿(689点、16,868ページ)
- 原本所蔵機関:英国国立公文書館
- Joseph Chamberlain Papers Relating to Africa(ジョゼフ・チェンバレンアフリカ関連文書)
- 年代:1893年-1903年
- 言語:英語
収録数:274手稿(7,557点、35,761ページ)
- 原本所蔵機関:バーミンガム大学図書館
植民地大臣を務めた時期(1895-1903)に第二次ボーア戦争(1899-1902)が勃発したジョゼフ・チェンバレンの文書は、第二次ボーア戦争に対して新たな光を当てます。
- Methodist Episcopal Church Missionary Correspondence, 1846-1912: Africa(メソジスト監督教会宣教師書簡、1846年-1912年:アフリカ篇)
- Selected Africa Collections from the Bodleian Library(ボードリアン図書館所蔵アフリカ関係文書集成)
- Selected Narratives and Reminiscences on Colonial Africa(植民地アフリカに関する書簡・日記・回想録)
- 年代:1792年-1915年
- 言語:英語、フランス語
- 収録数:46コレクション
- 原本所蔵機関:大英図書館
左:南西アフリカにおけるドイツ人の先住民虐待に関する報告。第一次大戦末期、イギリス議会に提出された。その後、ドイツ側の反論も出され、ブルーブック論争が起こった。
~”Buxton Papers. The Natives of South-West Africa and Their Treatment by Germany; 1918. Report”~
右:探検家ヘンリー・モートン・スタンレーのジョン・ボルトン宛書簡
~Papers and Correspondence of John Bolton, F. R. G. S., Cartographer, of Stanford’s Geographical Establishment, Relating to Sir Henry Morton Stanley, G. C. B., the Explorer, and Maj. -Gen. Charles George Gordon, C. B.”
左:ベルギー国王レオポルド2世からイギリスの慈善家バーデット=クーツ宛書簡
~”Burdett-Coutts Papers. Vol. x. Letters from Leopold II, King of the Belgians; 1876-1880”~
右:ジョン・スチュアート・ミルのチャールズ・ディルク(Charles Dilke)宛の書簡
~”Dilke Papers. Vol. XXIV (ff. 258). Letters from:- (1) John Stuart Mill; 1869-1872. ff. 1-39b.”~
モノグラフ
- German Colonialism in Africa: Selections from the Kolonialbibliothek (Colonial Library) Collection (アフリカにおけるドイツ植民地主義:植民地図書館選集)
- 年代:1878年-1910年
- 言語:ドイツ語、英語、オランダ語、ポルトガル語
- 収録数:554タイトル(89,752ページ)
- 原本所蔵機関:フランクフルト大学ヨハン・クリスティアン・ゼッケンベルク図書館(Universitätsbibliothek Johann Christian Senckenberg Frankfurt/Main)
ゼッケンベルク図書館のアフリカ・コレクションは、ドイツ植民協会(Gesellschaft für Deutsche Kolonisation)や帝国植民地省(Reichskolonialamt)など、ドイツの海外植民地に関わりをもつ機関の蔵書で構成され、アフリカ関係のコレクションとしてはヨーロッパ屈指のものと評価されています。1870年代後半、ドイツが中央アフリカ、西南アフリカ、東アフリカを拠点に植民活動を開始して以降、先住民族の大規模な反乱を鎮圧した1910年までの約30年間に刊行された書籍を収録します。
以下にみられるように、多岐にわたる文書を収録します。
- 東アフリカ領建設の先鞭をつけたカール・ペータース(Carl Peters)の著書
- 西南アフリカ領におけるヘレロ族とナマ族の反乱、東 アフリカ領のマジ・マジの反乱など、先住民の反乱を鎮圧した軍人の日記
- 通商政策や経済開発など植民地政策の実情を明らかにする政府報告書
- 植民地の経済活動に従事した企業の目論見書、企業人の回想録
- クララ・ブロックマン(Clara Brockman)、グレータ・ツィーマン(Greta Ziemann)、マルガレーテ・フォン・エッケンブレッヒャー(Margarete von Eckenbrecher)ら女性植民者の日記や著述
- 先住民の法や宗教に関する民族学的研究
- 先住民の言語に関する言語学的研究や辞典、文法書 他
レディ・トラベラー、メアリー・キングズリの名を世に知らしめた『西アフリカの旅』
- International Population Census, Africa(国際人口調査コレクション・アフリカ篇)
- 年代:1820年-1931年
- 言語:英語、アフリカーンス語、フランス語
- 収録数:177タイトル(16,543ページ)
- 原本所蔵機関:米国商務省国勢調査局図書館
- Personal Narratives and Reminiscences of the Exploration of Africa(アフリカ探検記・回想録・伝記など)
- 年代:1836年-1913年
- 言語:英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語
- 収録数:145タイトル
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
- 著者
- ヘンリー・モートン・スタンリー(Henry Morton Stanley)
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- オーガスタス・ヘンリー・キーン(Augustus Henry Keene)
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- デイヴィッド・リヴィングストーン(David Livingstone)
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- ジョン・ハニング・スピーク(John Hanning Speke)
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- セシル・ローズ(Cecil John Rhodes)
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- ジョン・ウォルター・グレゴリー(John Walter Gregory)
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- フレデリック・ルガード(Frederick Lugard)
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- エドワード・ウィルモット・ブライデン(Edward Wilmot Blyden)
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- エミーリオ・アギナルド(Emilio Aguinaldo)
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- スタンレー・ボールドウィン(Stanley Baldwin)
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- ジョゼフ・トムソン(Joseph Thomson)
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- Publications of the Natal Colony(ナタール植民地刊行物集成)
- 年代:1893年-1909年
- 言語:英語(5,811ページ)
- 収録数:16タイトル(統計年報)
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
- Report of the Boundary Survey between British Bechuanaland and German Southwest Africa of 1898-1903 (英領ベチュアナランドとドイツ領南西アフリカ間協会調査報告)
- 年代:1906年
- 言語:英語
- 収録数:1タイトル
- 原本所蔵機関:米国議会図書館
Europe and Africa, Colonialism and Cultureでは、ヨーロッパ諸国により植民地化された19世紀のアフリカを、英米の外交資料、イギリスの植民地相ジョゼフ・チェンバレンの文書、宣教師や探検家の書籍や書簡、ロンドン、リバプール、パリ、フランクフルトで発行されたアフリカ関連の定期刊行物、アフリカ各地で発行された定期刊行物など、19世紀から20世紀初頭にかけてのヨーロッパとアフリカの関係を探る上で重要な各種資料を収録します。
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