人文社会系研究

1960-1970年代に発行された幻の写真雑誌『ジャパン・イラストレイテッド』の真髄がここに

2021.05.14

ジャパンタイムズは日本で最も歴史のある英字新聞で知られていますが、それ以外に多数の出版物を世に出しています。今回、その中でも歴史的に重要かつ貴重な出版物Japan Illstratedをデジタル化してご提供します。

  • 発行:1963-1977年
  • 収録内容:季刊の写真雑誌、全56号。日本の文化、芸術、工芸、芸能、建築、文化遺産、自然、産業、主要イベントなどを写真で紹介。様々な分野で活躍する人物に焦点を当てる。
  • プラットフォーム:ジャパンタイムズブックビューア
  • 認証方式:IP認証
  • 販売形態:
    • 既存のジャパンタイムズアーカイブのオプションとして追加購入
    • 単独購入
海外からのまなざしに応えた戦後の写真広報誌

本誌は国内諸図書館に所蔵が無い、いわば幻の英文雑誌である。東京オリンピックの前年から日本が「経済大国」となるまで、14年余りの長期にわたり刊行されたが、それはこの56冊が高度成長期の日本に向けられた海外からのまなざしに的確に応えたからに他ならない。兜町の熱気から宝塚歌劇まで、社会・文化に広域に目配りした誌面には、質の高い豊富な写真資料が駆使されている。肖像写真家として知られる柿沼和夫、市政の人々の姿を記録した平田実、光の魔術師と呼ばれた風景写真家緑川洋一など、昭和を丹念に記録した写真からが随所で鮮やかに時代をみせている。

メディア史、近現代史、歴史社会学、文化史、写真史、デザイン史研究等が「昭和の日本」に取り組む際の重要な資料群として推薦したい。

竹内幸絵(たけうち ゆきえ)
同志社大学社会学部教授。サントリーミュージアム(現「大阪文化館・天保山)学芸員を経て現職。専門は広告史、デザイン史、歴史社会学。

60~70年代の日本に注目

20世紀半ば、インターネットとソーシャルメディアが発明される何十年も前、カラーテレビがある家庭がまだ珍しかったころ、人々が注目する表現といえばニュースの写真雑誌に掲載されるユニークで芸術的な写真であった。新聞に掲載される粗いモノクロ写真とは違い、写真雑誌のグラビアは色調がくっきりと鮮やかなことで人気だった。ドラマチックな瞬間を切り取った写真は、まさに百聞は一見に如かずといった効果があった。言葉の力が足りなかったわけではない。人気を博していた写真雑誌の構成にはたいてい、世界の出来事と文化現象に関する長文の論考とインタビューがあった。

『ジャパン・イラストレイテッド』はまさしくそのような写真雑誌だ。ジャパンタイムズが1963年から1977年まで季刊で発行していた同誌は、戦後の経済成長の最盛期をカバーした。1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博、1970年の札幌冬季オリンピックなど当時の一大イベントには、特集号を制作した。美しいカラーとモノクロ写真で、海外からの観光客を待ち望む日本各地の風景を読者に紹介しつつ、世界的な自動車や電子機器を製造する日本企業の姿を掲載したのである。

『ジャパン・イラストレイテッド』1冊をパラパラとめくるだけで、かつての写真や記事から当時と今の日本の違いが見えてくる。一方で、実は変わっていないことが多いこともわかる。『ジャパン・イラストレイテッド』のアーカイブにより、世界は1960~70年代の日本を理解することができる。当時を知る皆さんが過去を振り返る手助けとしてだけではなく、世界の若い読者がこの時代の日本を知るきっかけとなれば、これ以上にうれしいことはない。

Eric Johnston(エリック・ジョンストン)
Senior Kansai Correspondent ジャパンタイムズ 上級関西特派員
The Japan Times

夜明けの富士

1.「夜明けの富士」:
撮影:緑川洋一(1915-2001)。日本を代表する写真家である緑川は風景写真で知られ、『ジャパンイラストレイテッド』にしばしば写真を提供した。

2.日光・東照宮:
栃木県、日光市。1999年、東照宮を含む日光の社群が世界文化遺産に登録された。

広告

広告に使われた商品とブランドから当時の生活、ライフスタイル、トレンドが読み取れる。

3.日立製作所の広告:

4.資生堂の広告:

5.日産自動車の広告:

6. ベストオブジャパン:
ベストオブジャパン・シリーズでは、茶道など日本を代表する伝統芸術を記事と写真で紹介した。

7.八幡製鉄所:
1966年当時、日本は世界第三位の製鉄国であった。写真は北九州工業地帯にあった八幡で撮影された。煙に覆われた景色から、当時どれほど工業が盛んだったかがわかる。

8.フェスティバルプラザ:
1970年の大阪万博の目玉となったパビリオン。日本と世界の文化と祭りを紹介していた。撮影。Masamichi Sumiyoshi

9.東京オリンピック:
1964年10月に開催された東京オリンピックの半年前、関連プロジェクトの多くが最後の仕上げを待っていた。この号ではオリンピックで使用される施設を紹介した。

10.長崎:
長崎市はキリスト教信仰で知られていた。撮影:Nobuaki Fukui

11.大阪万博:
三つの顔を持つ、大阪万博のシンボルである太陽の塔。高さ70メートルのこの塔は、芸術家岡本太郎によって製作された。人類の未来への希望を象徴している。

12.歌舞伎の『連獅子』:
この号では、「歌舞伎の伝統の秘密」のタイトルで十七代目中村勘三郎と五代目 中村勘九郎の父子を特集した。撮影:吉田千秋

13.江戸の古い文様を写した「千代紙」:
歌舞伎の名場面、能面、玩具、着物の図柄など、江戸の下町で人気だったモチーフ。

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