人文社会系研究

JKBooks『Web版 天皇皇族実録』第2期リリース

2024.01.25

JKBooks『Web版 天皇皇族実録』は、戦前期最高水準の天皇皇族研究史料『天皇皇族実録』(ゆまに書房刊行)をデータベースとして提供するものです。第1期(神武天皇~安徳天皇)に続く、第2期(後鳥羽天皇~後奈良天皇)が2023年8月にリリースされました。

『天皇皇族実録』とは

『天皇皇族実録』は歴代天皇や皇族の主要事蹟を編纂したものです。神武天皇より第122代孝明天皇にいたる古代から近世の歴代天皇、並びに光厳・光明・崇光・後光厳・後円融の北朝五天皇と、皇后以下後宮、皇親、皇親妃(但し、伏見宮・桂宮・有栖川宮・閑院宮の四親王家を除く)に関する記録を収録します。

各時代の宮中の儀礼や年中行事のあり方の変遷、皇室を舞台とした歴史的事件を辿ることができるため、皇室史ならびに宮廷社会の研究に必須の史料集です。また、史料の少ない歴代天皇の后妃および皇子・皇女以下、系譜関係の明らかな皇孫・皇曽孫・皇玄孫までの事蹟も収録しており、后妃・皇族の研究にも有効です。

天皇皇族実録のスタイル

『天皇皇族実録』は『後鳥羽実録』、『土御門天皇実録』のように各天皇の名前を冠する巻が立てられており、該当の天皇及び天皇に関わる后妃・皇族の事蹟が記録されています。事蹟は編年体で編纂され、事件の内容を簡潔にまとめた「綱文」と、その根拠となる史料を掲載する形式を採っています。

五日、叙位除目ヲ行ハル、北畠顕家、足利高氏等ノ功ヲ表ハス、是日、高氏ヲ更メテ尊氏ト為ス、尋イデ六条忠顕並ニ新田義貞、楠木正成、名和長年已下ノ功ヲ論ズルコト差アリ、
-『Web版天皇皇族実録第2期』、後醍醐天皇実録327頁より

上記は後醍醐天皇が足利高氏の功績を称え「尊氏」の名を与えた際の記録です。典拠史料を確認すると「源尊氏(公卿補任)」や「足利治部郎大輔高氏(参考太平記)」と記載されていますが、綱文では「足利高氏」と記載されています。このように典拠史料上で現代では馴染みの薄い呼び名や職位で記載がされている場合、どの人物を指しているのか特定する手がかりとして綱文が役立ちます。

典拠となった史料

典拠となった史料には、その事蹟に関わる文書や記録、系図や家譜から後世の著作物まで多様なものがあります。

  • 古事記、日本書紀を初めとする六国史。
  • 天皇宸記や皇族の日記。
  • 政権の中枢にいた貴族や僧侶の日記・記録、社家の記録・日記。
  • 武家政権の編纂史書吾妻鏡。
  • 政権内の重要な職掌に就いた公家の日記(関東申次に就いた西園寺家の日記など)。
  • 歌集、歴史物語、歴史書(大鏡、今鏡、水鏡、増鏡、栄花物語、将門記、源平盛衰記、愚管抄等々)。

公家の日記や古文書のような一級史料のほかに、和歌集や歴史物語などの古典文学作品も数多く引用しているため、文学史的にも、また思想史的にも貴重な史料集となっています。

Web版の特徴

『Web版 天皇皇族実録』はデータ化された綱文テキストを対象に検索を行うことが可能です。

「隠岐」の検索結果画面

また、「実録名」「年月日」「出典」「時代区分」「肩書」の5つの項目で絞り込み検索をおこなえます。

絞り込み機能

第2期の検索事例

2023年8月にリリースされた第2期は、後鳥羽天皇実録~後奈良天皇実録までを収録します。第2期がカバーする中世に流行した文芸「連歌」と、連歌師「宗祇」の検索事例を以下にご紹介します。

検索語:「連歌」

下の図は「連歌」の検索結果です。全体で913件の検索結果が表示されました。

画面左の柱を確認すると、検索語がどの実録で何件ヒットがあったのかが表示されます。後土御門天皇実録の326件が最も多く、その次の代の後柏原天皇実録が305件で2番目に多いという結果が得られました。

 

後土御門天皇と後柏原天皇の時代には、連歌が流行していた可能性があると推測できます。ジャパンナレッジに収録されている他の辞書や事典との横断検索機能を使って、連歌の最盛期を調べてみましょう。見出し語「連歌」、全文「最盛期」と入力して検索をおこなうと、室町時代中期から後期が連歌の最盛期と記載されており、後土御門天皇や後柏原天皇が即位していた時代であることが確認できました。

「連歌師」-『世界大百科事典』より(抜粋)

連歌を職業とする者の通称。連歌に巧みな者,連歌を好む者の中から連歌の指導や連歌会の運営に携わる僧体の専門家が分化し,やがてそれを職業とする〈連歌師〉なるものが生まれたと考えられる。(中略)宗砌(そうぜい),宗祇(そうぎ),宗長,兼載(けんさい),宗碩(そうせき)らが,室町中期から後期にかけて連歌の最盛期を形成した。

検索語:「宗祇」

「宗祇」は室町時代後期の連歌師で、準勅撰連歌集の『新撰菟玖波集』編纂の中心となった人物です。下の図の「宗祇」の検索結果を確認すると、後土御門天皇実録で3件のヒットがあり、後土御門天皇と宗祇が直接関わりを持っていたことがわかります。

八日、宗祇ヲシテ連歌懐紙ニ合点セシメラル、
-『Web版天皇皇族実録第2期』、後土御門天皇実録502頁より

ご覧いただいたように、Web版では膨大な冊数の実録をデータベース上で簡単に検索することができます。そのため時間の短縮に大いに役立ち、また資料を一望でき、新たな着想の可能性を秘めています。是非『Web版 天皇皇族実録』をご検討ください。

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(ゆまに書房)