フレッチャー卿の「建築史」待望の最新版
建築を学んだ方であれば、斯界の古典的レファレンスということでは議論の余地のないフレッチャー卿(Sir Banister Fletcher)の「建築史」(A History of Architecture)には出会ったことがあるのではないでしょうか?
[注:前版のSir Banister Fletcher’s A History of Architecture第20版(1996年)は、邦訳が『フレッチャー図説世界建築の歴史大事典 : 建築・美術・デザインの変遷』として、2012年に西村書店から刊行されている。]
このたび、23年ぶりの最新版Sir Banister Fletcher’s Global History of Architecture, 21st Editionが、Bloomsbury Publishingから(英王立英国建築家協会(RIBA)およびロンドン大学との共同出版として)リリースの運びとなりました。第21版では、豊富な収録図版を全点フルカラー化し、書名にGlobal を冠しているように、21世紀にふさわしい真にグローバルな内容へと拡張しました。そして、これも今回はじめて、デジタル版としても、建築データベースBloomsbury Architecture Libraryの一部としてご利用いただけるようになったのが画期的です。
本書の特徴
本書『フレッチャー図説世界建築史大事典(第21版・全2巻)』は、全2巻で、7部構成の全102章から成り、5500年もの長大な建築の世界史を、各時代・地域で異なる文化や技術の文脈によって明解に腑分けし、相互の比較をしやすいフォーマットで、解説します。新たな編者として、ロンドン大学バートレット建築大学校のMurray Fraser教授を迎えた本書は、世界の何千もの主要建築物を、2200点以上の写真や図面とともに、巡ります。
Bloomsbury Architecture Libraryより
さらに、フレッチャー卿の生前を含めても、今回はじめて、最新版の本文は、80人以上の専門家の手により、建築史への真にグローバルなアプローチを体現するべく、最近30年間の研究で明らかになってきた重要な知見の変化を踏まえて、全面的に書き直されています。その中でも特筆されるのは、西暦538年まで現在にいたる日本建築史の充実した記述です。米英の東アジア美術・建築の専門家3名、Nancy Shatzman Steinhardt(米ペンシルベニア大学教授)、 Neil Jackson(英リバプール大学教授)、 Rumiko Handa(米ネブラスカ大学リンカーン校教授)が、歴史・地理・文化・社会的文脈にも富んだ、日本の建築とその主要な建築物の世界へと、案内します。日本については、538年~1333年、1334年~1868年、 1853年~1945年、1945年~現在の4つの章で取り上げ、それぞれ、文献案内も付しています。
Bloomsbury Architecture Libraryより
以上見てきましたように、これだけの手厚いアップデートが施された新版の刊行により、元々すでに「名声とどろきわたる古典」(アメリカ建築家協会)である本書が、史上もっとも重要な建築史書の座をたしかなものにするだろうことは、ほぼ異論のないところでしょう。
『フレッチャー図説世界建築史大事典(第21版・全2巻)』 は、Bloomsbury Publishingから、2019年11月14日刊行予定です。
ご案内
- 冊子体:『フレッチャー図説世界建築史大事典(第21版・全2巻)』は、以下のサイトでご注文いただけます。
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Alexandra Smith, Bloomsbury
(翻訳 紀伊國屋書店 書籍・データベース営業部)