人文社会系研究

JKBooks 「Web版 風俗画報」リニューアル情報 ~画像マークがつきました!!【前編】

2020.03.05

Web版風俗画報は、ジャパンナレッジが提供する電子書籍プラットフォームJKBooks上で、我が国最初のグラフ雑誌「風俗画報」を提供するデータベースです。前回はカラー画像のリニューアルのお知らせをいたしましたが、更に画像を検索しやすい機能が追加されましたので御案内いたします。

風俗画報には多数の図版、写真、肖像の画像が収録されています。データ上の判別では〈図〉、〈写真〉、〈肖像〉というキーワードがタイトルについており、それぞれを入力することで図版だけ、写真だけ、肖像だけという絞り込み検索は出来ていました。この度これらの画像に画像マークが付けられましたので、ファセットで簡単に画像データの絞り込みができます。

手順は下記の通りです。

1.基本検索や詳細(個別)検索でファセットの中の検索コンテンツ”JKBooks風俗画報”にチェックを入れ、さらにメディアから”画像”にチェックを入れる。

2.風俗画報の中には9764件の画像が収録されていることが分かります。

3.この状態からキーワードを入れればそのキーワードに関する画像が表示されます。

上記は詳細(個別)検索での画面です。画像マークがついているのが分かりますか?

この方法で実際に検索してみたらどのような結果が得られるか、ご紹介しましょう。風俗画報の中には各地の町の様子が描かれている図が沢山載っています。
そのタイトルには「全景」「光景」「景況」「夜景」という様子や景色を表す「景」という言葉が使われているものが多いです。
その中から「夜景」というキーワードを入力してみたら12件の画像が検索されました。出て来た画像の中で興味深いものがありましたのでご紹介します。

〈図〉東京勧業博覧会第二会場の夜景 東京勧業博覧会図会第4編 365号 明治40年6月25日

明治40年の東京勧業博覧会での夜景の図です。以前の記事でも少し触れましたが、この博覧会では午後6時から午後10時まで夜間開場が行われました。開場した主な理由が「時將に暑に向かえば、旁々その必要を感じ」と記事中にありますが、要するに暑いから!と言うことだったのでしょうか。

しかしお客さんには非常に好評だったようで、「夕刻前後は会場に向かうもの引きもきらず」という記事もありました。沢山の人達が夜景を楽しんでいる姿が描かれているこの図からもその感じは伝わってきますね。

〈写真〉東京大正博覧会会場○第二会場の夜景 大正博覧会号 457号 大正3年5月5日

〈写真〉東京大正博覧会会場○第二会場の夜景 大正博覧会号 457号 大正3年5月5日

大正3年の大正博覧会号の夜景は図ではなく写真で報じられています。それは前回の博覧会の時代から写真の技術は発達したためでしょうか?それとも電飾の光力が更にアップし夜間に写真も写るような明るさを出せたということだったのでしょうか?どちらにせよ日本におけるさまざまな技術力の向上が表れているのが分かります。
ただ、残念なことにこの博覧会での夜間入場者数は思ったより伸びなかったようで、電飾の点灯料に比べて入場料の売り上げが少ないので「夜間営業をするだけ損ではないか」と言った意見を書いた記事がありました。大正時代の人達にとっての夜間開場はそんなに目新しくなかったのでしょうか?この様に同じテーマの画像を時代ごとに比べてみると文化の変遷や技術力の向上などが見えてきます。

更に画像の中には興味をそそるものが描かれている場合があります。この図は四谷にあった繁華街の夜景を描いた図です。ここは昼も夜の賑わう場所として非常に有名だったそうで、色々なお店が出ています。

〈図〉大横町の夜景 新撰東京名所図会第39編四谷区之部巻之上 277号  明治36年10月25日

特に目を引くのは右側にラッパのようなものでは無いでしょうか?これは蓄音機屋さんです。蓄音機と言えばご存じの方も多いとは思いますが、今で言うレコードプレイヤーです。蓄音機屋さんはお金を払った人が耳にイヤホンのようなもの(ゴム管のようです)を当てて、蓄音機で再生した音源を聞くという商売です。実は蓄音機屋さんについては風俗画報の中に詳しい説明をした図と文がありますのでそちらも紹介しますね。

大道所見其5蓄音機(図入)    216号 明治33年9月10日

ちゃんと再生してくれる人が居たようですが今で言うDJのようなものですかね?1回1銭という価格が書いてあります。明治時代の1銭は今で言う200円くらいらしいので、比較的気軽に楽しめる娯楽だったのではないでしょうか。この記事によると5,6年前から見かける商売だと言うことです。
こうしてみると、明治20年代から蓄音機は日本に広まっていたようですね。ただ国産初の蓄音機が発売されたのが明治43年ということですから、今回紹介した蓄音機は輸入されたものと言うことになるでしょうか。

〈写真〉東京市中世渡り草其7蓄音機屋 401号 明治42年10月5日

このタイトルにある「東京市中世渡り草」は江戸や東京の商売を紹介する人気のシリーズで風俗画報初期から続いています。この頃は写真で紹介されていますが蓄音機屋の姿が良く映っていますね。蓄音機の大きさが大きいです。他の商売も面白い物が多いですよ。夜景の図から蓄音機をピックアップして、さらに蓄音機について調べて見ました。

図版の中から興味あるものが見つかり、それについて検索してみると意外なことも分かってきてとても楽しいですよ。みなさんもやってみてください。
後編ではテーマを変えて更なる風俗画報の魅力に迫ります。

(株式会社ゆまに書房 第一営業部 河上 博)
JKBooks 「Web版 風俗画報」について詳しくはこちら
お問い合わせはこちら