商品カタログ

【洋古書】シュヴァリエ《経済学講義》著者手沢本と稿本コレクション

シュヴァリエの『経済学講義』、著者による加筆修正多数の旧蔵本および稿本コレクション

関連ワード:フランス史 交通史 古書 洋書 産業史 社会思想 経済学史  更新日:2024.12.10

鉄道技師、経済学者でナポレオン三世時代には政治家としても活動したミシェル・シュヴァリエのコレージュ・ド・フランスにおける経済学講義録では、経済学の定義にはじまり、自由・社会階層と生産力、機械、貿易収支、貨幣、道路、運河、鉄道などが論じられています。
第二版のための著者自身による加筆修正が多数施された手沢本は、シュヴァリエの思想の展開を知る貴重な資料です。(速記者による講義筆録も含むシュヴァリエの講義3回分の稿本も併せてご提供。)

また、経済学講義の改訂第二版に、1850年に発表された貨幣論の初版も加えた3巻本も弊社にて在庫がございます。併せてご案内いたします。
*お見積り、お問合せは弊社各営業所、またはこちらまでご連絡ください。

—以下、「紀伊國屋書店 古書目録 2020」より—

シュヴァリエ《経済学講義》著者手沢本と稿本
CHEVALIER, Michel.  Cours d’économie politique fait au Collège de France.
Rédigé par M. A. Broët, et publié avec l’autorisation.  Année 1841-42.  Paris, Capelle, 1842.
[Together with:]
CHEVALIER, Michel.  L’Économie politique et le socialisme.  Discours prononcé au Collège de France, le 28 février 1849, pour la réouverture du cours d’économie politique.  Paris, Capelle, 1849.
[Together with:]
CHEVALIER, Michel.  Manuscript of three lectures given at Collège de France for his course on political economy, on 25 May, 1 and 8 June, [1842].

4to, together 121 leaves, written on rectos only (some leaves with stenograph notes on verso) in several hands; manuscript foliation (1-41; 1-37; 1-16, ‘17/24’, 25-50) on top left corner, loose in three original envelops (torn) addressed to Chevalier; occasional mild foxing and some minor tears; with occasional manuscript corrections (possibly by Chevalier in part).

¥495,000(税込)

十九世紀フランスの経済学者、ミシェル・シュヴァリエの有名な経済学講義に関するコレクション。コレージュ・ド・フランスにおける経済学講義は1830年に開講され、その初代教授に任ぜられたのは(すでにその十五年前フランスで最初の経済学教授となっていた)ジャン・バティスト・セイでした。二年後セイがこの世を去るとセイの義息シャルル・コントと争ったすえ、ペログリオ・ロッシがその座を獲得しますが、1840年に退いたロッシの後任に選ばれたのは弱冠三十四歳のミシェル・シュヴァリエです。二月革命で経済学講座は廃止の憂き目を見たものの、同年十一月には再びシュヴァリエの手に委ねられ、以後1879年に死去するまでこの地位に留まることになります。

かつてサン=シモン主義者として六ヶ月間獄に下ったことのあるシュヴァリエは、アドルフ・ティエールの推挽によりアメリカで公共交通の視察にあたっています。帰国後刊行された Lettres sur l’Amérique du Nord (1836) ならびに Des Intérêts matériels en France (1838) はフランスの経済界におけるシュヴァリエの令名を直ちに高からしめ、ブランキは前著に「フランスの新たな経済学派」の誕生を見出しています。特別参事会員・商務最高委員に任命された彼は、さらに視察報告である大著 Histoire et Description des voies de communication aux Etats-Unis et des travaux d’art qui en dependent第一巻を、コレージュ・ド・フランス教授就任と同じ1840年に刊行しています。
シュヴァリエの最初の講義は1841年四月二十八日。この年度は近代産業の偉大さと弱さとを論じた開講講義のみが活字化されていますが、翌年度の講義はルイ・オーギュスト・ブロエの手によって公刊されました。経済学の定義にはじまり、自由・社会階層と生産力、機械、貿易収支、貨幣、道路、運河、鉄道を論じた十五講が収録されています。物質的な利益の源泉である経済成長と社会組織を達成するために、フランス固有の問題として交通制度の整備と専門教育、資本の欠如を補うべき信用制度とを論じたシュヴァリエの経済学は、古典派経済学の枠組みを忠実に受継ぐものではなかったため、同時代の論者からも批判が寄せられていますが、この『講義』をもってシュヴァリエが自らの経済思想を提示した主著と見做すことに異議はないでしょう。なおその交通制度研究はさらに敷衍されて翌々年度の講義のテーマとなっています。

上掲は著者シュヴァリエの旧蔵本。うち一冊はその手沢本、第一から第六講、第九から第十四講にかけてシュヴァリエの書込みが見られ、特に後半には多くの加筆修正が施されています。これらは恐らく1855年にパリのカペルが上梓した第二版における改訂の基礎になったものかと推測されます。この第二版では特に第七講以降に大幅な手が加えられ、全体で十三講に再構成されています。もう一冊は同一版ながら書込みのない重複本。

ここにはまた、シュヴァリエの講義三回分の稿本が含まれています。それぞれ四十一葉、三十七葉、四十三葉(三番目は第十七葉に “17/24” とあり、以後25から50までの連番が振られています)。その筆跡はシュヴァリエ自身のものではなく、一部の裏面は速記術で記されていることから、恐らくは速記者による講義筆録の書き起こしでしょう。またこの三つの手稿には五月二十五日、六月一日、六月八日の日付がそれぞれ記されており、これらが水曜日であるとすれば1842年、つまり『経済学講義』と同じ年度に属します。別人の筆跡による修正が散見し、その一部はシュヴァリエになる可能性も考えられます。もしこれら三回の講義稿本が残されたことが偶然ではなく著者の意図だとすれば、ブロエの編本では省略されたものの、この三回の講義にさらに展開すべき論点が含まれているとシュヴァリエ自身が考えていた証左となるでしょう。

1848年の二月革命で中断したシュヴァリエの経済学講義は、1849年二月末に再開されます。連続講義の開講第一回にあたる部分のみが L’Économie politique et le socialisme として同年出版されました。一般に著録されるのは、ギヨーマン版(初出である Journal des Economistes 抜刷)とモンペリエ版の二種ですが、シュヴァリエの自家本はパリのカペルが刊行したもので、本文二十八頁からなります。シュヴァリエはカペル版の本文を一回り大きな用紙の各表頁に貼込み、後日の改訂に備えています。またここでは初回に続く講義録(第二講から第二十五講)も加えられており、当時それが発表された定期刊行物からの切抜きが同様に貼込まれています。切抜き裏面にパリ株式市況や広告などが確認されることから日刊紙と思われますが原紙については未詳。第二十一講以降が短い「要約」にとどめられているのは、あるいは原紙の出版事情(廃刊など)に応じたものか。

シュヴァリエは二月革命の反省から社会主義に関する考察を深め、これがL’Économie politique et le socialisme にも反映しています。経済学が物質的利益を偏重しているという批判に応え、人間を物質的欲求への従属から解放する精神科学としての経済学を構想するに至りました。上掲自家本に収録される第二講以降の知られざるテクストは、こうしたシュヴァリエの視座の転換を詳らかにするうえで貴重な資料となるものでしょう。

シュヴァリエ《経済学講義》第2版
CHEVALIER, Michel.  Cours d’économie politique fait au Collège de France.  Premier [-deuxième] volume.  Seconde edition, refondue et considérablement augmentée.  Paris, Capelle, 1855-58.
[Together with:]Cours d’économie politique fait au Collège de France.  Troisième volume.  La monnaie.  Paris, Capelle, 1850.

8vo, together three volumes; pp. vii, (1) blank, 623, (1) errata; viii, 636; (4), 606, (1) errata, (1) blank; light foxing throughout, occasional mild browning, but generally a very good sound copy, bound in contemporary quarter morocoo on marbled boards, spines gilt in compartments, titles gilt to the psines, corners and spine ends worn, backstrips lightly faded.

¥220,000(税込)

ミシェル・シュヴァリエのコレージュ・ド・フランスにおける経済学講義は1841年四月の開講以来毎年欠かすことなく行なわれ、シュヴァリエ自身にとっても多忙な公務の傍ら最も力を注いだものでした。1848年の革命では一時教授職も失いましたが、復職するや再び講壇に立ち返り、1879年の死去までその地位にありました。

シュヴァリエの経済学講義録は、1841・1842年度の内容が1842年に、また翌1842・1843年度のそれは1844年に、それぞれパリのカペルから公刊されています。さらに毎年度の開講講義に関しては、Journal des Economistes に1852年まで掲載されました。
カペルは1855年、「第一巻」すなわち1841・1842年度講義の第二版を上梓していますが、第七講義以降の本文を改訂・整理し、全十三講(1842年版は十五講)とする一方、1852年までの毎年の開講講義をあわせて巻頭に収録しています。1858年の「第二巻」でも本文には随所に手が加えられ、1844年版の全二十五講が二十七講に変更されました。

上掲のセットは経済学講義の改訂版二巻に、1850年に発表された「第三巻」貨幣論の初版が加えられたもの。同時代の製本は三巻揃い。貨幣論の第二版は1866年に出版されているので、それ以前に購入した読者の旧蔵書と推測されます。
なお本書についてはブリュッセル版が当時複数流布していますが、これらはいずれも海賊版。

(学術洋書部)