御 挨 拶
謹啓
丸山健二全集、計百巻(予定)の刊行にあたり、一言ご挨拶とともにご案内をさせていただきます。
弊社はこのたび、十年余の歳月をかけ、丸山健二氏の全集を発刊することになりました。全集はふつう、著者の既刊本を並べるだけのものでありますが、丸山氏は全作品を新たに書き下ろしているため、これだけの歳月が必要になるわけです。
このような形の全集は世界的にも例がなく、出版社といたしましても今回、氏の全集刊行に携わらせていただくのは望外の喜びであり、また名誉なことであります。
丸山氏は二十三歳の時に『夏の流れ』により芥川賞を受賞して以来、その作品の質の高さ、孤高に徹した生き方のため、熱狂的なファンがいる一方で、いわゆるベストセラー作家ではありませんでした。しかし氏の作品群が現代日本の文学界において最高峰を成していることは衆目の一致するところでありましょう。
不肖私は、十年ばかりにわたり、札幌の某大学で「文芸翻訳法」という授業を受け持って参りました。その間、夏休みの宿題は決まって、丸山健二作品の感想文を書くというものでした。残念ながら、その間、氏の作品を読んだことがあるという学生には一人もお目にかかりませんでしたが、感想文にはほぼ例外なく、「感動しました。これほど美しい日本語を書く素晴らしい作家が日本にいるということを知らなかった」と記されておりました。
私見ではありますが、ノーベル文学賞の名に真に値する日本人作家は丸山氏を措いて他になく、今後は、氏の作品の英訳ならびに西欧諸国での出版にも全力を傾注したいと考えております。
この度、丸山健二全集を皆様にご紹介できることは、私のみならず、柏艪舎にとっても身に余る光栄であります。長丁場の出版になりますが、末永くお付き合い下さいますようここに伏してお願いするしだいです。
謹白
株式会社 柏艪舎
代表取締役 山本 光伸
2017年7月吉日
©S&T PHOTO MINAMI
柏艪舎では2017年9月20日より、『完本 丸山健二全集』の配本を開始いたします。
本全集は、丸山氏がいままで発表した作品をそのまま収めるのではなく、新たに一から全て書き下ろして発表し直すという、今までにないスタイルをとっております。現在、第5回配本分まで書き進めております。配本は3カ月おきに年4回、1年でおよそ10巻を刊行し、10年あまりをかけて100巻ほど刊行する予定で進めていきます。
第1回配本として、『争いの樹の下で』(全4巻)を刊行いたします。本作品は、今日の日本の状況を的確に射抜いており、丸山文学の精髄が詰め込まれた、著者の全集の劈頭を飾るに相応しい傑作です。
第2回配本は本年12月『いつか海の底に』(全2巻)、第3回配本は来年3月『野に降る星』(全2巻)、第4回配本は来年6月『月に泣く』(全1巻)を予定しております。
刊行順は未定ですが、全小説、自薦エッセイなどを収録する予定です。
第1回配本と同時に丸山健二作品の英訳者を募集します。日本が世界に誇る作家、丸山健二氏の作品を英訳し、世界中に紹介していきたいと考えております。課題作は『完本 丸山健二全集 争いの樹の下で』より出題します。最優秀者には翻訳料300万円(買取り)で本作品を英訳していただきます。
ぜひ、本企画を広くご紹介いただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
(株式会社 柏艪舎 可知佳恵)
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