ローブ古典叢書”The Loeb Classical Library”は、ギリシャ・ローマの古典に親しむ機会を研究者だけではなく、教養層の読者にも広く供することを使命とし、1911年にJames Loebによって創立されました。
偉大な過去の遺産を人々の手に届けるために
創立者のLoebは、ローブ古典叢書の初期の版の序文で叢書の使命を以下のように語っています。
“In an age when the Humanities are being neglected more perhaps than at any time since the Middle Ages, and when men’s minds are turning more than ever before to the practical and the material, it does not suffice to make pleas, however eloquent and convincing, for the safeguarding and further enjoyment of our greatest heritage from the past. Means must be found to place these treasures within the reach of all who care for the finer things of life.”
「おそらく中世以降のいかなる時代にも増して、人文学が無視され、かつ人の心がかつてないほど実用性と物質主義に傾いている時代において、我々の最も偉大な過去の遺産を保護し、享受するためには、どんなに雄弁かつ説得力のある言葉を尽くしても十分ではありません。これらの宝物が、人生において価値あるものを求める全ての人々の手に届くような手段が見出されなければなりません。」
創立当時、必ずしもギリシャ語、ラテン語に習熟していない読者が、学究版の原典と英訳の対訳版によって古典・古代の豊かな文化遺産に直接触れることができるようになったのは、画期的な出来事でした。
ヴァージニア・ウルフはその喜びを書評誌The Times Literary Supplementに寄せています。
“The Loeb Library, with its Greek or Latin on one side of the page and its English on the other, came as a gift of freedom… The existence of the amateur was recognised by the publication of this Library, and to a great extent made respectable… The difficulty of Greek is not sufficiently dwelt upon, chiefly perhaps because the sirens who lure us to these perilous waters are generally scholars [who] have forgotten…what those difficulties are. But for the ordinary amateur they are very real and very great; and we shall do well to recognise the fact and to make up our minds that we shall never be independent of our Loeb.”
—Virginia Woolf, The Times Literary Supplement, 1917
「見開きページの片側にギリシャ語もしくはラテン語、もう片側に英語が書かれているローブ古典叢書は、自由という名の贈り物です。・・・素人の存在が、この叢書の刊行によってやっと認められ、立派な存在としての扱いを受けるようになったのです。...ギリシャ語の困難さについての配慮は十分とは言えませんが、おそらくその危険な水の中に我々を誘い込むセイレーンが、主にギリシャ語の困難さを忘れている学者たちだからでしょう。しかしながら、アマチュアにとっては、それらは実際に大層困難なものなのです。我々はその事実を認め、決してLoebなしではやっていけないということを心に留めなくてはならないでしょう。」
—ヴァージニア・ウルフ, The Times Literary Supplement, 1917
100年以上継続してきた一大事業
ヨーロッパに移り住んだJames Loebと出版社Heinemannの共同作業として、1912年から1933年までの間に英国と米国で合計300巻近くが刊行された本叢書は、1933年のLoebの死後、ハーバード大学に事業が託されました。その後新しい研究成果を反映した注釈と、現代の文体による新訳の必要性も増し、今もハーバード大学出版局より多くの巻が改訂版・新版で刊行されています。
伝統を受け継ぎ、展開するデジタル版ローブ古典叢書
デジタル版ローブ古典叢書The Digital Loeb Classical Libraryでは、既刊の叢書の全巻(2017年10月時点で530巻以上)を、年2回の新刊も含めて読むことができます。検索、閲覧のみでなく、自分専用のワークスペースの利用、注記の書込、作成した読書リスト、参考図書のリストなどを学生や研究者同士で共有するなど、デジタル版ならではの機能を搭載しています。
トップ画面
英語、ラテン語、ギリシャ語で全文検索が可能です。
画面上のパネルからギリシャ文字を入力することができます。
詳細検索画面
著者、編者、翻訳者、本文、序文、後書、時代など様々な検索項目を用意しています。
検索結果一覧画面
検索結果は、画面左でさらに言語、著者、作品形式、ジャンル、主題で絞り込むことができます。
ブラウズ画面
著者名ブラウズ。その他、ラテン語著作、ギリシャ語著作、Loebの巻によるブラウズ画面も用意されています。
ページイメージ表示画面
左にギリシャ語、右に英語対訳が表示されています。
原典・英訳の一方/両方の表示が可能です。
ページイメージ中に検索語が記載されている場合は、該当部分がハイライト表示されます。
ワークスペース
自分専用のワークスペースを登録することができます。
ブックマーク、注記の付与などが可能です。
Web上での利用を実現したデジタル版ローブ古典叢書The Digital Loeb Classical Libraryは、21世紀に向けてその使命をさらに展開し、一つの作品を熟読するという伝統的な読書と、様々な検索を駆使し興味の赴くままに膨大な数の作品を閲覧することの両方を可能にします。
※デジタル版ローブ古典叢書The Digital Loeb Classical Libraryは、大学等教育機関向けに、買切契約、年間購読契約でご提供する法人向けサービスです。
(紀伊國屋書店 データベース営業部 伊佐)
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