これからの学び

学生の読書習慣育成に向けた「MWU電子図書館」の構築について【後編】―紀伊國屋書店電子書籍セミナー2017〈京都会場〉より―

2018.06.17

まず約2000タイトルの電子書籍コンテンツを購入し、10/2に本番リリースを迎えました。コンテンツの内容は、大学からも「学術書よりは気軽に読んでもらえるような一般的な読みものをメインに入れてほしい」と言われており、小説、文庫、新書、就活対策本などを中心に入れています。それに加え、私どもの独自コンテンツとして、教職課程を履修している学生に向け、出版社の方々と協力し、教員採用試験の過去問コンテンツや、コアジャーナルとなる月刊誌を提供しており、非常に人気です。

 

また、LibrariEを使った読書会やビブリオバトルも開催しています。マーカー機能で本文を示しながら、「この一文がいいんです」とお勧めする様子を見ていると、学生は意外と電子書籍の特性を理解して活用しているなと感じます。特に先ほどの製品紹介で、視覚障碍者の方向けに音声読み上げ機能もあるというお話がありましたが、本学の学生の場合、例えば絵本のコンテンツを見ながら「お母さん方が手を離せない時にちょっとお子さんに聞かせるのに使えるよね」と言っていたりして、私たちが思っているよりもはるかに学生たちは電子書籍の有用性を認めていると感じました。

 

これは電子書籍に関するアンケートの回答の一部です。これまでに電子書籍・電子コミックを利用したことがありますかという問いに、70%の学生が「ある」と答えました。でも、その内容は「コミックを利用する」が殆どです。どのような端末で利用しているかというと、スマホでの利用が85%です。自宅や通学中に主に利用しており、大半が30分以内に利用を終えていました。

 

どのような点に魅力を感じるかという問いには、「24時間いつでもどこでも利用できる」「返却の手間がない」「持ち運びが楽」「場所をとらない」が上位を占め、これらは予想通りでしたが、意外だったのは不満を感じる点です。もちろん自分の好きな作家の作品がないことから、「魅力的なコンテンツがない」という苦言や、「読みにくい」「読んだ物量感がない」という意見が多く見られますが、注目していただきたいのが「特に何も不満を感じない」という学生が15%もいること、これは面白い結果だなと思っています。

 

私どもは無料貸本屋ではなく大学図書館ですので、「電子書籍を入口に、どのように良き読者を育てることに繋げるか」が課題です。電子書籍を読んだ後の購買意識はどうだったかと尋ねると、「読めば十分」との回答が40%を占めたのですが、特筆すべきは実際に電子書籍を利用して紙書籍を「購入した」「購入したいと思った」という学生が20%存在した点です。これは見逃せない事実ではないでしょうか。読書時間の確保が難しい学生には、電子書籍は大変肯定的に受け入れられていることもわかりました。

 

今後の展開につきましては、授業連携を強化し、まずは教職課程・司書課程の授業で利用促進に向けた案内が必要と考えています。将来的には、リポジトリで公開できない卒論や修論の搭載を視野に入れ、卒業後も利用できれば学生にとっては非常に有り難いであろうということで生涯アドレスでのログイン認証の実現、それから来年度には、附属中学校・高等学校の全生徒にタブレット端末が導入されますので、電子図書館の利用対象者の拡大。そして何よりも「今の大学図書館はこういうサービスもやっているんだよ」といった告知を多層的に展開することも大切であると思っております。

 

拙い発表でございましたが、以上です。ありがとうございました。

 

(武庫川女子大学 附属図書館 川崎安子)

 

※本稿は、「紀伊國屋書店電子書籍セミナー2017〈京都会場〉―本当に使われる電子図書館とは―」(2017年10月17日)におけるご講演の一部である。

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