自然科学

Wiley Digital Archives ニューヨーク科学アカデミー・アーカイブ

2018.11.27

Wiley Digital Archivesは、世界各国の有力な学協会・図書館・史料館などと提携し、彼らが所蔵する歴史的に価値の高い一次資料をデジタル化してご提供する電子コレクションです。

世界中の学協会には、科学の進歩を担い、それらを支援・促進してきた活動の記録がアーカイブ資料として保管されています。これらの資料は、手稿、調査報告書、運営記録、フィールド記録、書簡、モノグラフ等、極めて多岐に亘り、多くが十分な分類・整理が行われないまま保管され、現地に足を運ぶ以外に閲覧する方法はありませんでした。

Wiley Digital Archivesは、これらの貴重な資料を初めて電子化し、最新機能を搭載したプラットフォームを通じてご提供することで、それぞれの時代の最新の研究成果の背景となる情報を提供し、様々な分野の学術的な発展の道のりを辿ることを可能にするものです。

Wiley Digital Archivesのご紹介記事
プラットフォームのご紹介記事~その1~~その2~

今回は、Wiley Digital Archivesの中から、200年の歴史を持つニューヨーク科学アカデミーのアーカイブ、Wiley Digital Archives – The New York Academy of Sciencesをご紹介します。

ニューヨーク科学アカデミー:200年の歴史を誇る世界の科学界における最重要組織

1817年にニューヨーク市自然史学院(Lyceum of Natural History in the City of New York)として創設したニューヨーク科学アカデミー(New York Academy of Sciences)は、科学的研究、教育、政策の推進を通じて、社会が抱える課題に対し、革新的な解決策を示すことを使命に掲げてきました。米国で最も長い歴史を持つ科学機関であるばかりでなく、創設以来200年に亘り、同アカデミーには科学的発見の最前線に立つ傑出した人々が集い、世界の科学界における最も重要な組織の1つと位置づけられています。

ニューヨーク植物園(New York Botanical Garden)、アメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)、ニューヨーク大学等の著名機関との緊密な関係を背景に、ジェファーソン米大統領、モンロー米大統領、トマス・エディソン、マーガレット・ミード、チャールズ・ダーウィン等、影響力の強い人物が会員として同アカデミーに参画しました。

今日、同アカデミーの会員は100カ国以上2万人を超え、会長諮問委員会には、34名のノーベル賞受賞者も参加、理事会には産学両分野および社会奉仕分野の指導者が名を連ねています。

ニューヨーク科学アカデミー・アーカイブとは

2017年に200周年を迎えたニューヨーク科学アカデミーは、これまで未整理のまま保管されてきた歴史アーカイブを整理・公開するという困難な仕事に対峙しました。その中で、アカデミーはこれらのアーカイブ史料の価値を認め、会員および研究現場に広く公開すべく、Wileyと提携し、Wiley Digital Archivesとしてそのコレクションを電子化・保存し、世界中の研究者にアクセスする機会を提供することになりました。

「ニューヨーク科学アカデミー・アーカイブ」は、1817年から2009年にかけて、2世紀におよぶ科学の進歩を記録した膨大な史料を提供するコレクションです。

本コレクションには医学、植物学、気候科学、動物研究他、学際的かつ多岐にわたる資料が収録されており、未知の歴史的文脈において新たな側面から研究を活性化させ、現在の研究を批判的に解釈する機会を提供し、新たな発見へと駆り立てます。

アーカイブ概要:

  • 収録年代:1817年(ニューヨーク科学アカデミー創設時)~2009年
  • 収録ファイル数: 4,282点
  • コンテンツの言語: 英語
  • 資料の種類:運営資料、書簡、データ、エフェメラ(チラシ等)、フィールド記録、灰色文献、図版、手稿、地図、モノグラフ、パンフレット、定期刊行物、私的文書、写真、会議録、報告書 他多数
  • 取扱分野:植物学、カリブ海地域研究、化学、公民権・人権、気候科学、生態学、科学教育、環境研究、森林学、地球科学、医学研究、自然史、自然科学、北米地域研究 他多数

収録コレクションのご紹介

本アーカイブには、ニューヨーク科学アカデミーの歴史、運営、提携機関、イベント、研究者、研究成果等、アカデミー創設以来の様々な側面の記録が収録されています。ここでは、その中からいくつかユニークなコレクションをご紹介します。

Records of the Puerto Rico Survey(1913-1948)

1913年から1948年にかけてアカデミー主催で実施したプエルトリコ島および周辺地域の科学調査の記録です。

このプロジェクトは、当時、地質学全般、およびプエルトリコをはじめとした未知の地域に関する科学的知見への関心が高まりつつあることを背景に実施されました。ニューヨーク科学アカデミーの科学者達がこの地域を訪れ、地質学、気象学、海洋学、植物学、動物学関連の調査を行いました。

本プロジェクトに参加した著名な科学者で、ニューヨーク植物園の創設者の一人、Nathaniel Lord Brittonは、プエルトリコには数多くの未知の領域が存在していることを実感し、亡くなるまで調査記録の大半を管理しました。Britton死後はアカデミー会長Roy Waldo Minerがその大役を引き継ぎます。

調査の成果は、Journal of the New York Botanical Garden、Bulletin of the American Museum of Natural History、Annals of the New York Academy of Sciences等の様々な科学雑誌に発表された他、アカデミでも1919年から1960年までの間に一連の出版物を出版、現在に至るまで、熱帯地域に関する学際的・科学的な記録として最も完全であるとされています。

本コレクションには、書簡、委員会記録、財務記録、フィールドノートおよび報告、調査地図が含まれます。

   Physiographic Map of Puerto Rico, 1917

なお、この時に行われた植物調査に関する書簡や資料は本アーカイブ所収コレクション、Nathaniel Lord Britton Records (1875-1934)にも含まれています。

左図:Botany of Puerto Rico, Botany of Puerto Rico Second Supp. 55
右図:Records of Germination of seeds of the Violet Tree or Hueso

Records of the Harbor Project(1999-2008)

アカデミーは、2000年より2008年4月まで8年にわたり、ニューヨークとニュージャージーの港に流れ込む汚染物質を特定・測定するハーバー・プロジェクトを開始しました。本プロジェクトは、港内の汚染物質や公害防止に関する専門的な報告書を作成するにとどまらず、研究計画ワークショップを開催し、港湾の汚染に対する理解と防止のためのパンフレットを発行、周辺地域に対し、リサイクル情報の提供など、地域貢献活動にも貢献しました。

Harbor Project Executive Summary, October 1, 2000

Records of the Committee on the Human Rights of Sciences(1977-2007)

1977年に、物理学者のDr. Heinz R. Pagelsが人権委員会の設立を提案したことを受けて、アカデミーは小委員会を同年11月に設立します。小委員会の目的は、手紙キャンペーン、請願、政治家との会議、そして権力を持つ人物を通じて世界中の迫害された科学者を代弁することにありました。
後に特別委員会、常任委員会と昇格した本委員会の初期の活動は、ソビエト連邦の「拒絶された」(refusenik)科学者の支援で、彼らが国内で行った業績を紹介し、アカデミー会員の資格を授与しました。

1980年代になると、委員会の活動は南米と中東まで拡大し、チリ、コロンビア、グアテマラ、トルコ、イラクの各地で迫害・拘束された科学者や研究者の支援を行います。アカデミーは、1986年に科学者の人権問題に貢献した個人に対する賞を作り、コロンビア大学の数学者Dr. Lipman Bersが初受賞、以降、イラン、キューバ、ロシア、米国の科学者や活動家が受賞してきました。

1990年代には、中国と旧ソビエト連邦構成諸国で活発に活動します。その後の10年は、中国、キューバ、イラン、および米国における課題に取り組む一方で米国愛国者法施行後、科学における自由を提唱しました。

委員会の活動を通じて、アカデミーは国際的な圧力を作り出し、拘束・追放された科学者を代弁し、彼らの釈放・移住を支援しました。

左図:[Executive Committee minutes related to human rights], September 29, 1977-December 2, 1987
右図:Materials related to recipient Vil Mirzayanov, 1994

Collection of Papers of President David B. Steinman(1886-1959)

1953年のアカデミー会長、David Barnard Steinman関連の文書コレクションです。Steinmanはブルックリン橋やマキナック橋の設計、そして多数の著作や詩作で知られるアメリカの構造エンジニアです。
本コレクションには、1954年以降のSteinmanの仕事と業績を含む伝記資料、出版物、著作の宣伝資料、広報などが含まれます。ブルックリン橋、マキナック橋の他、シチリアのメッシナ橋、ニューヨークのヘンリー・ハドソン橋での作業に関する資料も含まれます。1952年から1954年にかけては、専門的な出版物や詩作品の出版物も含まれます。

Publicity, 1927-1954

Photograph Collection(1948-2002)

イベント、宣伝、会議、歴代会長の肖像写真、事務所を構えた建物の写真など、アカデミーの歴史を伝える様々な写真を収録するコレクションです。

Photographs: Events Eureka Event

ニューヨーク科学アカデミー・アーカイブには、この他にも以下のような多彩な資料が含まれます。

  • アカデミーの設立、規約、運営関連の記録
  • 歴代会長・事務局長関連文書
  • アカデミーが提携した科学機関に関する文書
  • 科学分野への様々な貢献を称えるために設立した数々の賞関連文書
  • アカデミーの活動の中で、共に活動し、関わってきた著名な研究者に関する資料

本アーカイブを通じて、世界の科学界を牽引してきた200年におよぶニューヨーク科学アカデミーの歴史と、アカデミーが支えてきた科学的発見の足跡を辿ることができます。

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