Screen Studiesは、映画・映像文化の研究・教育をサポートする新しいオンライン・リソースです。Bloomsbury社および名作映画脚本(screenplay)では世界トップクラスのコレクションを誇る著名文芸出版社Faber & Faber社がタッグを組み、膨大な映画脚本・研究書・ガイド・入門書の電子版を提供します。Bloomsbury Screen Studiesが定期的にご利用者にご案内している特集テーマより、本データベースが収録する多彩なコンテンツの魅力の一部をご紹介してきます。
Cinema in Japan (特集テーマ:日本における映画)
演劇から映画へ
(劇場に並ぶ人々:1930年ごろ浅草)
日本における映画の発展をたどり、日本の映画制作が歌舞伎などの伝統芸能からどのように成長したかを考察します。20世紀初頭、「映画」と歌舞伎や新派(明治中期に発展した大衆演劇)など既存の劇場エンターテインメントとの間に明確に区別はありませんでした。1910年頃の映画からカメラワークや編集など映画独自の多彩な表現も見られるようになりましたが、映画の目新しさそのものが人々を惹きつけたというよりも「演劇を見るために劇場に通う」という文化をそのまま引き継ぐかたちで顧客を獲得していったのです。
そのような中、批評家、映画製作者から政府高官に至るまで、当時の知識人は演劇風の映画を「非映画的」であると見なし、日本映画の近代化を求めました。
松竹(松竹株式会社)は当初、近代化・西洋化に向けて働きかけましたが、最終的には日本生まれの演劇風映画とハリウッド風の慣習を混合する方針へと向かっていきました。
【関連コンテンツ】
Miyao, D. (2019). “From Kabuki to Cinema to Kabuki: Japanese Cinema Before World War II.”
In Screen Studies Articles. London: Bloomsbury Academic.
Standish, I. (2005). “Cinema, Modernity and the Shōchiku Tokyo Studios.
In A New History of Japanese Cinema: A Century of Narrative Film” (pp. 29–79). New York: Continuum.
Standish, I. (2005). “Cinema, Nationalism and Empire.
In A New History of Japanese Cinema: A Century of Narrative Film” (pp. 80–132). New York: Continuum.
黄金時代
1930年代、1940年代、1950年代、小津安二郎、溝口健二、成瀬巳喜男、黒澤明など偉大な監督たちによって日本映画界は一挙に栄えていきます。
”Classical Japanese Cinema Revisited” (日本古典映画の再考)冒頭の章で、著者のキャサリン・ラッセルは日本古典映画の産業的、文化的、美術的特徴について紹介し、本場ハリウッド及び日本人の国民的アイデンティティと日本映画の関係について考察しています。
同様に、権威ある英国映画協会(BFI)の映画古典叢書(Film Classics)に収められた黒澤明監督「蜘蛛巣城」の研究書において、ロバート. N.ワトソンは本作における「マクベス」の引用は「西洋文明の代表格たるシェイクスピアと日本文化の縮図である能楽との類似性、さらにイギリスと日本の歴史的な類似点をも示している」と主張します。
【関連コンテンツ】
Watson, R.N. (2014). “Throne of Blood”. London: British Film Institute
Russell, C. (2011). “Men with Swords and Men with Suits: The Cinema of Akira Kurosawa.
In Classical Japanese Cinema Revisited” (pp. 69–102). New York: Continuum.
Russell, C.(2011). “The Classical, the Modern and Japanese Cinema in the Global System.
In Classical Japanese Cinema Revisited” (pp. 1–18). New York: Continuum.
ジャパニーズポップカルチャーと映画
テレビの普及やホームビデオの台頭に見舞われ、日本映画は20世紀後半から徐々に衰退をはじめます。しかし、1990年代後半以降、北野武、是枝裕和など気鋭の監督による大ヒット作品の登場や、いわゆる任侠映画、ジャパニーズホラーなど邦画定番ジャンルの確立、そしてアニメ映画の人気で全国の映画館にも活気が復活していきます。
“Contemporary Asian Cinema”(現代アジア映画)のなかで、著者のダレル・ウィリアム・デイビスは現代日本の映画の興行収入に縛られない多様性について解説します。
ルブランとオデルによる研究書では、1998年公開でBFI映画古典叢書にも入ったサイバーパンクアニメ「AKIRA」を最も衝撃的なアニメ作品の一つとして取り上げ、その終末論的特徴について分析しています。
【関連コンテンツ】
Le Blanc, M. , & Odell, C. (2014). “Introduction ‘If you awaken Akira … no one will be able to stop him’.
In Akira” (pp. 7–29). London: British Film Institute.
Davis, D.W. (2006). Japan: Cause for (Cautious) Optimism. In A.T. Ciecko (Ed.). “Contemporary Asian Cinema
Popular Culture in a Global Frame” (pp. 193–206). Oxford: Berg.
Rawle, S. (2017). “Ōru Kaijū Dai Shingeki (All Monsters Attack!): The Regional and Transnational Exploitation of the
Kaijū Eiga. In K. Provencher & M. Dillon (Ed.). Exploiting East Asian Cinemas: Genre, Circulation, Reception” (pp. 32–56). London: Bloomsbury Academic.
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