OCLC News 第49号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。
『OCLC News』一覧 >>
目次
―OCLCスタッフの投稿 Community Center Notesより―
時は変わりゆく:WorldShare ILLとタイムゾーンについて
2021年1月6日 エド・デイヴィッドソン
1979年にOCLC初のILLサービスが登場した時、54ヶ国にまたがる図書館のグローバルなネットワークに成長するとは、誰が予期できたでしょうか?長年の間に多くの変化が生じても変わらずにあったものは、米国東部標準時(US Eastern time)におかれているシステムの基幹です。そのタイムゾーンから全ては始まりました。
よって、もしあなたがアメリカで働いているならば、タイムゾーンが貴館のILL処理に影響するか気にする必要はないでしょう。しかし、もしあなたがアメリカ以外で働いているならば、日付の表示はまったくもって厄介な代物でしょう。Bob Dylanが非常にうまく言い表したように、「時は変わりゆく」のです。
ご存じでしたか?―WSILLにまつわる時間について―
- OCLCのシステム上の全リクエストは、米国東部標準時(US Eastern time)の深夜0時にエイジング(aging)が行われる。
- Tipasaの利用者の場合、世界のどこでも、My Accountとnotificationsで表示される日付は、東部標準時を反映している。
- ニュージーランドとオーストラリアの場合
- 受付リクエストは多くの場合、営業時間中に「提供可能?(Can You Supply?)」キューから時間経過によって「未応答」キューへ移動する(ageout)。
- 受付リクエストの期限(due date、現物貸借期限)は意図されている日と一日ずれている。利用者に対して正しく表示されるよう、日付を指定する際にスタッフはこの点を考慮しなければならない。
- システム上の日付でなく他の図書館が入力した日付を考慮する必要がある場合、行方不明になっている資料、または到着していない資料を探すことは「頭の体操」になってしまうことがある。
- 休日と閉館期間(時間)をOCLC Policies Directoryで設定する時は、スタッフは米国東部標準時で何日になるか考えなければならない。
タイムゾーンに関するリサーチセッション
これらの問題をよりよく理解し、対処法を探る為に、私と同僚のStacy Brunnerは世界中のILLスタッフとリサーチセッションを行いました。
- 2020年9月 – ニュージーランドのTe Puna 利用図書館
- 2020年10月 – アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、南アフリカ、中東の図書館
- 2020年10月 – アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、アジアの図書館
その結果わかった主なことは以下です。
- 日付を表示することが常に最適とは限らない。リサーチを通して多くの地域で日付が正しく表示されていない事には気づいていましたが、ILLワークフローの全工程において日付を表示することが常に最適な方法とは限らないことを学びました。例えば、貴館がLender候補になった日を表示するよりは、リクエスト応答の期限まで何時間残っているかを表示することもできるかもしれません。
- 開館時間と閉館期間(時間)など、OCLC Policies Directoryで確認できる各館の情報をもっと役立てられるかもしれません。
- 世界中のILLスタッフに会話に加わってもらう為に、異なる時間帯でいくつものリサーチセッションを行うことが非常に役立つ。新たな声を得ることはとても有益で、以前は考えもしなかった異なる知見を得ることができました。
初期解
タイムゾーン関連の問題を扱い始める為に、2021年6月に予定されているリリースで、「提供可能?」キューで期限までにどれだけ時間が残されているか確認するのが簡単になります。受付図書館候補となった日にちを表示する代わりに、応答期限までの残り時間が表示されます。
リサーチと分析によって、現在熟練のILLスタッフでも受付図書館候補としての残り日数を知ることは簡単ではないことがわかりました。残り時間は、いつ貴館がLenderになったか、リクエストタイプが複写か貸借か、貴館の「応答までの日数(days-to-respond)」がそれぞれのリクエストタイプに対して何日にセットされているかによります。また、「納期(Need Before)」がそれより早かった場合、提供するチャンスを得る前に、リクエストは「未応答(unfilled)」として期限切れを迎えてしまいます。
新たな「応答までの日数」
更に長期的には、以下の機能の追加を予定しています。
- ILLに関連した開館時間、休日、閉館期間(時間)を貴館のタイムゾーンに合わせて設定。
- システムとプリントアウト上の時間に貴館の所在地とタイムゾーンを反映
- 利用者が把握しやすくする為、貴館の地域に日付の表示形式を合わせる
これなら、「頭の体操」はもう必要ありません。
ご意見を聞かせて下さい。
今回、関係ある問題を取り上げられましたでしょうか?タイムゾーン関連の問題を取り扱うアイディアはお持ちですか?是非お気軽にDiscussionを始めたり、Enhancement Suggestionを出したり、リソースシェアリングの仲間やOCLCチームと出会うためにCommunity Centerを探索してみてください。
当記事の詳細はこちらから≫
※リンク先はOCLC Community CenterのWSILL関連ページにつき、WorldShare ILLをご契約の機関のみご覧になれます。
目次へ戻る▲
REALMプロジェクト7-8回目の実験結果公開
OCLC / 2021年2月11日
REALM: REopening Archives, Libraries and Museums 文書館、図書館、博物館の再開
REALMプロジェクトの研究の一環として、バテル研究所はこれまで6回のウィルス自然減衰実験を実施し、公文書館、図書館、博物館で一般的に置かれている資料で感染性ウイルスがどのくらいの期間生存するかについての情報を提供してきました。COVID-19ウイルスで汚染された物体(媒介物とも呼ばれる)を介した拡散は、現在のところ、主要な感染経路ではないと考えられていますが、感染経路をよりよく理解するためには、さらに研究を行う必要があります。
1~6回目の実験では、68~75°F (20~24°C)の室温および30~50%の相対湿度で保管された材料を用いて、病原性 SARS-CoV-2 ウイルスの減衰時間を測定しました。 7回目および8回目の実験では、材料を34~36°F (1~4°C)の低温、および83~84°F (28~29°C)の高温、相対湿度は前回までの実験と同じ環境で保管しました。
7、8回目の実験材料と結果の概要は以下の通りです。
実験材料 |
素材 |
状態 |
結果 |
ハードカバー図書の表紙 |
バックラムクロス |
積み重ねた状態 |
低温で保管された素材の減衰率は、いずれも高温や常温に比べて有意に遅いことが確認された
詳細はこちら |
ソフトカバー図書の表紙 |
コート紙 |
積み重ねた状態 |
プラスチック製保護カバー |
2軸延伸ポリエステルフィルム |
積み重ねた状態 |
発泡ポリエチレンフォーム |
1インチ厚発泡ポリエチレンフォーム |
積み重ねない状態 |
図書資料はコロンバス市立図書館から、膨張ポリエチレンフォームは国立公文書館記録局から提供されたものです。
7、8回目の実験結果レポート(英文)を読む
当記事の詳細はこちらから≫
目次へ戻る▲
―OCLCのリーダーたちが知見や経験を共有するブログ Nextより―
人種と社会正義: 建設的コミュニケーションのための設計図
2021年2月18日 ピラー・マルティネス
人種的・社会的正義の問題は、私たちのコミュニティのあらゆる面に影響を与えています。もちろん、すべての図書館にも。人種的・文化的公平性を高める方法を模索し続ける中で、私たちは、プライバシー、公平なアクセス、知的自由を支援する活動家の努力に励まされていますが、私たちの歴史とその上に築かれた基盤が、必ずしも公平性、多様性、それらの受容を支援してきたとは限らないことに気付かされ、身が引き締まる思いがします。全世界の図書館が継続的な議論に参加して、懸念を明らかにし、見識を共有し、コミュニティの取り組みをリードしていくことが重要です。
最近のOCLCグローバル評議会の円卓会議では、現在の環境、図書館の対応、そして私たち図書館の責任が今後どうあるべきかについて、展望を共有し、知見を集約するために、構造化ディスカッション形式を用いました。すべての答えを導き出すことはできませんでしたが、議論は豊かで有益なものでした。
構造化されたコミュニケーションの重要性
コミュニケーションが役に立たず、進展につながらないのであれば、何の意味があるでしょう?この精神に基づき、グローバル評議会が参考にしたディスカッション・ガイドを共有したいと思います。あなたの図書館で、構造化された正式な協議を行うための方法として、是非ご活用ください。
- 1-5段階評価で、人種的・社会正義運動への継続的な対応において、私たちの機関はどの程度の成果を上げていると感じますか?
- 私たちの地域における人種的、社会的、市民的、経済的な正義は、今どのような状態にあるのでしょうか?
- 人種的・文化的公平性の問題に取り組むために、私たちの機関・図書館は何をしていますか?
- 正式な回答はありましたか?
- 私たちはスタッフや多様性に関連した雇用問題(採用、定着率、昇進など)に目を向けていますか?
- 私たちの機関は、「文化の盗用」や「コレクションの脱植民地化」について、どのような対策や懸念を持っていますか?
- 図書館はこの分野でどのような責任を担わなければならないでしょうか。
- 私たちの機関は、変化を導くために、地域社会の他の資源と提携していますか?
- 探求したい未活用の機会が残っていますか?
- この議論のどのような部分を(もしあれば)もっと深く掘り下げてみたいと思いますか?
- 今日の会議からの(個人的な)最大の収穫は何ですか?
- 今日の議論から、私たち(および私)が今できる行動はありますか?
以下は、同様のガイドラインに基づいたグローバル評議会の議論の概要です。
現在の環境
会議冒頭に簡単な意識調査を行いましたが、私たちの図書館では現在、人種や社会正義についての議論は行われていますが、まだやるべきことがたくさんあるというのが一致した意見でした。
米国のグローバル評議会の代表者(OCLCメンバー図書館から選出された図書館員)は、「Black Lives Matter」運動、歴史的な人種差別、そして彼らのコミュニティでの影響についての背景と知見を提供しました。米国外からの代表者は、この運動の広範囲にわたる世界的な影響と、米国での問題が、アボリジニ、先住民、ファースト・ネイション(カナダに住んでいる先住民のうち、イヌイットもしくはメティ以外の民族)の権利の問題として世界の他の地域にも反映されていることを報告しました。私たちは、最近の事件とジョージ・フロイド氏の死をめぐって悲しみの声を上げ、体系的な人種差別の問題は個人にとってもコミュニティにとっても対処が難しい問題であり、図書館はコミュニティのリーダーとしての独自の立場にあるということで全員が一致しました。
今日の図書館は何をしているのか?
多くの図書館では、司書が多様化する機会を増やすため、職員の配置や採用方法を再検討しています。また、コレクションや昔からの方針について歴史的に偏りがなかったかどうか評価することで、使用されている言語や内容を検討しています。議論の中で湧き出てきた多くの感情の中には、グローバルな図書館として、これらの問題にもっと一緒に取り組んでいきたいというものがありました。しかし同時に、地域的な違い、図書館の種類、サービスを提供しているコミュニティのニーズによって、対応や是正の方法は変える必要があることも認識しました。
学術機関では、キャンパスの多くが抗議活動やその他の活動家の活動に巻き込まれていることが多いことを指摘しています。これらの活動を支援する上での図書館の役割は、教育、意識の向上、議論の促進、機関の対応の強化を提唱することが中心となっている場合が多くあります。ある機関のスタッフは、同窓会の寄付者や昔からの後援者による驚くべき反発を経験したと話しています。議論の中で、図書館の中立性とコミュニティの擁護という概念は、図書館と図書館職員が時に意見を異にする大きな問題であることが指摘されました。
(あなたの、私の、そして)私たちの図書館の責任とは?
議論のモデル通り、私たちの会議は解決策を探すことで終わりました。これは、私たちの代表者の一人からの力強い質問に要約されています。「私たちが中立でないなら、何者だというのでしょうか?」
この質問は、私たちが調査した他のトピックと同様、もっと多くの注意を払うに値するということに皆が同意しました。
それで、何をすべきでしょうか?私たちは以下のことを始めることができます。
- 促し続けること、教育し続けること、疑問を投げかけ続けること、情報を提供し続けること。これが私たちがこれらの議論を前進させる方法です。より良い情報、教育、リテラシーが役に立たないような人種や社会正義についてのコミュニケーションはありません。
- 物理的にも仮想的にも自分たちの場所を持たない疎外されたグループに機会と資源を提供することに力を入れる。これにより、他のコミュニティ、ビジネス、市民、組織のパートナーとの間で、より可視性とアクセス性が高まり、「参加する機会」を提供します。
- 私たちのコレクション、コミュニケーション、サービス、マーケティング、採用活動において、私たちがこうありたいと思う世界をモデル化します。
このような議論は常に難しいものですが、絶対に必要なものです。グローバル評議会のメンバー全員が積極的に率直で正直に協力してくれることに感謝します。
これが、図書館の専門家や地域社会のパートナーとのネットワークの中で、さらなるコミュニケーションのきっかけになることを願っています。
OCLCグローバル評議会2021年の重点分野は、国連17の戦略的開発目標(SDGs)のうちの5つです。これら5つの目標のうち2つ(SDG10「不平等の削減」とSDG16「平和、正義、強力な制度」)は、図書館における人種的・社会的正義に関する私たちの活動に直接影響を与え、今回の円卓会議のきっかけとなりました。今年の研究とプログラムの活動については、Lorely Ambrizの紹介記事をご覧ください。
当記事の詳細はこちらから≫
目次へ戻る▲
(紀伊國屋書店 OCLCセンター)
掲載の商品・サービスに関するお申し込み・お問い合わせ先
株式会社紀伊國屋書店 OCLCセンター
電話:03-6910-0514 e-mail:oclc@kinokuniya.co.jp