図書館をつくる

OCLC News 第51号

2021.05.25

OCLC News 第51号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。

目次

ILLの納期を大幅に短縮するExpress programとその技術

現在1,000館以上の図書館が、OCLCの「Express digital delivery program」に参加しています。これは資料が利用者の手に届くまでのターンアラウンドタイムを、OCLCのリソースシェアリングサービスに関わるスマート・フルフィルメント機能を活用して、極限まで短縮する取り組みです。

作業フローを簡易化し、費用を抑えることを主眼に置いて構想されているので、Express programはOCLCのWSILLネットワークを通して18時間以内に記事・論文やその他電子資料を提供している図書館を参加対象にしています。プログラムの一部として、参加図書館は既に利用しているTipasa、ILLiad、WorldShare ILLのサービスを、追加費用なしで可能な限り最速のサービスを提供する為に活用できます。

Express programに選ばれた図書館は、サービスへのコミットメントを示し、また模範的なサプライヤーとして認識され、期待以上のサービスを提供してきました。Express programは、相互協力的なプログラムである為、参加館は資料をスピーディーに提供するだけでなく、同じスピードでリソースシェアリングサービスを受けることもできるのです。

UC Berkeley Libraryの図書館間サービス担当長のパトリック・シャノン(Patrick Shannon)は以下のようにコメントしています。
「昨年のパンデミックを経験してもなお、OCLCがExpress programを開始したのを見ることができて勇気づけられました。UC BerkeleyのILLスタッフは、自館の利用者だけでなく、世界中の学者・学生の研究を支援する、アクティブかつ熱心なプログラムの参加者です。」

Express programはスマート・フルフィルメントが資料提供をいかにスピードアップさせられるかの一例です。全てのOCLCリソースシェアリングサービスに関わるスマート・フルフィルメント機能は、図書館が利用者の高い期待を越えて見せられるよう設計されています。

OCLC副社長のメアリー・サウアー・ゲームズ(Mary Sauer-Games)は、以下のようにコメントしています。
「今日の洗練された情報の探索者は、必要な資料がいつでも、どこでも、素早く入手できることを期待しています。新たな資料提供機能に加えて、OCLCの継続的なスマート・フルフィルメント機能強化は、OCLCのリソースシェアリングサービスによるスピードと利用者の満足度を、別次元に引き上げます。」

スマート・フルフィルメント機能は、ポリシーデータ、貸出履歴、ライセンス許諾契約、希望されているフォーマットを、自館、地域、世界で現時点で入手可能なリソースと比較します。その後、自動的に履歴データをもとに検討して最も早く資料を提供できる受付館を選択します。

スマート・フルフィルメント機能の機能強化には、以下が含まれます。

  • Automated request manager:
    Automated request manager は利用者が必要な資料を素早く入手できることを確実にします。図書館は、サービスが電子・紙媒体双方の資料へのリクエストを自動的に処理するよう設定します。図書館スタッフが全てのリクエストを手動で処理する必要性をなくしますが、正確に管理することができます。
  • Smart lender strings: 
    Smart lender stringsは、履歴データから最も早く資料を提供できる受付館を自動的に予測し、選択することにより、ターンアラウンドタイムを最適化します。また特定の館にばかりリクエストが行ったり、処理能力以上のリクエストが行かないようにバランスをとる機能が備わっています。
  • Real-time availability: :
    Real-time availability機能があれば、図書館が利用者に、必要とされる時間内に届けられるのを確実にできるよう、紙媒体の資料がいつ、どこで利用可能かわかります。
  • Dynamic group functionality: 
    Dynamic group functionality は、ターンアラウンドタイムが18時間以内であるとか、地域内で貸借費用が無料である館など、特定の条件を満たす図書館グループを特定し、管理します。

OCLC Director of Resource Sharing のピーター・コリンズ(Peter Collins)は以下のようにコメントしています。
「OCLCリソースシェアリングネットワークは、世界最大の図書館コミュニティをリンクさせます。ネットワーク上のデータを用いて、タスクを自動化し、最適な受付館を選択し、ターンアラウンドタイムを予測することができます。コストカットが厳しい時代に、OCLCリソースシェアリングシステム及びサービスは、図書館スタッフの時間を節約し、資料提供をスピードアップさせ、利用者の期待を越えることができます。」

Library on-demandsmart fulfillment に関する機能強化について、是非リンク先からOCLCのビジョンをご覧になって下さい。

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OCLCサービスとシェアード・プリントに関する機能

近年図書館やコンソーシアムは、学術レコードの保存や、利用率の低い資料を保存するコストの分担や、責任ある除籍によって、図書館スペースを有効活用することを目指しています。そのような図書館にとって、シェアード・プリント(Shared print、共同管理)の重要性はますます高まってきています。
OCLCは、図書館がWorldCat®を通してシェアード・プリントのコレクション構築戦略を立て、対象資料の管理を支援するサービスとサポートを提供します。シェアード・プリントは図書館業務の様々なエリアに関わる為、OCLCのサービスはそれらをカバーする多くの機能を有しています。OCLCの特定のサービスのご契約があれば、シェアード・プリントのデータを、貴館の既存のワークフローに組み入れることが可能です。
以下で、シェアード・プリントにおける資料の保存状況を確認する方法をご紹介します。末尾のA quick reference tableでは、OCLCサービス中のシェアード・プリントの機能に関するハイレベルな概要をご覧頂けます。より詳細な情報は、oc.lc/sharedprintをご覧下さい。

サービス1:FirstSearch

FirstSearchはWorldCat local LHRにあるシェアード・プリントにおける情報に簡単にアクセスすることができます。FirstSearchユーザーはシェアード・プリントプログラムの対象となっているレコードだけに検索結果を絞り込むことができ、またどの図書館で保管されているか見ることができます。

利用可能なお客様

FirstSearchはWorldCat Discoveryをご契約の機関がご利用頂けます。

可能な事

WorldCat の検索を通して、LHRに基づいたシェアード・プリントにおける保存状況を確認できます。

確認できるシェアード・プリントに関するデータ

  • どの機関が保管しているか
  • どのコンソーシアムが保管しているか
  • レコードあたりの保存数
  • 特定のタイトルを保管している図書館のリスト

FirstSearchでシェアード・プリントに関するデータにアクセスする方法

  1. 詳細検索画面の「場所の条件(Limit availability to)」セクションで「シェアードプリントのコミットメントのみ (shared print commitments only)」にチェックを入れる。
  2. 検索結果もしくは検索結果詳細画面で、「入手オプション (Availability)」におけるコミットメントの数を探す。
    ※ 以下のXXX部分を確認下さい。
    全世界の所蔵館: XXX (X 保持への取り組み)
    Libraries worldwide that own item: XXX (X Committed to Retain)
  1. 「資料の所蔵館 (Libraries that Own Item)」ページの、「シェアードプリントのコミットメント(Shared Print Commitment)」列で、保管している機関を探す。

サービス2:Connexion

Connexionのブラウザは、日常のカタロギングで使用しているインターフェイスのシンプルな画面で、貴館と世界の図書館のシェアード・プリントのコミットメントを確認することができます。個々のレコードのシェアード・プリントのコミットメントを変更する為にConnexionのブラウザでLHRを編集することができます。

利用可能なお客様

Connexionをご契約のお客様がご利用頂けます。

可能な事

  • 個々の機関もしくはコンソーシアムのシェアード・プリントのコミットメントの検索、確認
  • シェアード・プリントのコミットメントのレコードのアップデート

確認できるシェアード・プリントに関するデータ

  • 個々の機関のシェアード・プリントのコミットメント
  • コンソーシアム単位のシェアード・プリントのコミットメント

Connexionでシェアード・プリントに関するデータにアクセスする方法

  • 機関単位のコミットメントが確認したい場合は、Keyword/Numeric Search sectionでShared Print Institution (sh:)を選択し、機関のシンボルを検索して下さい。
  • コンソーシアム単位のコミットメントが確認したい場合は、Keyword/Numeric Search sectionでShared Print Group (sg:)を選択し、コンソーシアムのシンボルを検索して下さい。

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―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
次世代メタデータに関するオランダ語円卓会議: NACOやWorldCatを超える発想を
2021年4月13日 ティティア・ファン・デル・ヴェルフ

このブログ記事は次世代メタデータに関するOCLCリサーチディスカッションシリーズの一環として、2021年3月8日に開催されたオランダ語円卓会議ディスカッションの報告です。

このセッションには、メタデータ、図書館システム、レファレンス業務、全国書誌、関連事務処理などの経歴を持つ、オランダとベルギーの学術機関と文化遺産保護機関を代表する図書館員が参加しました。参加者は熱心で、率直で、思慮に富む人々ばかりでしたので、楽しい雰囲気の中で建設的な知識交換が行われました。

マッピング作業

次世代メタデータ・プロジェクト図 (オランダ語セッション)

他の円卓会議での議論と同様に、参加者はまず、自分の地域における次世代メタデータのプロジェクトや、他の地域で認識している新たな取り組みを把握することから始めました。結果として得られたマップには、書誌データと文化遺産データのプロジェクトが強く現れています(マトリックスの左上と左下の象限を参照)。オランダ国立図書館の次世代メタデータ研究プロジェクトのうち、以下のようなものがリストアップ、説明されました。

  • メタデータの自動生成では主題のタグ付けや名称典拠レコード作成をサポートするツールを確認、テストしています。
  • Entity Finderは、RDAでの実体(個人名、著作、表現形)を典拠レコードと書誌レコードの両方から抽出するために開発されているツールです。

デジタル遺産レファレンスアーキテクチャ (Digital Heritage Reference Architecture: DERA)は、オランダのデジタル遺産に関する国家戦略の一環として開発されました。DERAは、遺産情報を、合意された慣行や規約に従って、リンクトオープンデータ (Linked Open Data: LOD) として管理・公開するためのフレームワークです。Van Gogh Worldwide (フィンセント・ファン・ゴッホの作品のみを集めた大規模なデータベース)プラットフォームは、DERAの適用例であり、オランダの17の異なる文化遺産機関や個人コレクターによって保存されているゴッホの美術品に関するメタデータを、APIによってソースシステムから引き出しています。

これは、エルゼビアとオランダの研究機関との間で昨年締結された契約に基づくもので、研究機関のRIMシステム、エルゼビアのデータベースと分析ソリューション、オランダの研究助成機関のデータベースに基くオープンサイエンスサービスを共同で開発するものです。このNL-オープン・ナレッジ・ベースは、大学の「持続可能な開発目標」の達成状況を監視するダッシュボードなど、新たなアプリケーションにつながる可能性を秘めており、研究インパクトの分析を大幅に改善することができます。

何が私たちを前に進ませないのでしょう?

マッピング作業では、最先端のプロジェクトが紹介されましたが、参加者は、次世代のメタデータへの移行ペースに焦りを感じていました。ある参加者は、PIDの統合、ローカル典拠、外部ソースとのリンクなど、移行支援作業のために複数のツールを使用しなければならないことに不満を感じていました。また、別の参加者は、価値連鎖にはまだ多くの効率化の余地があると指摘しています。

 “サプライチェーンを考えると、データがたくさんあるのに、ゼロから始めるのはおかしいです。本が発売されるときには、すでに記述が行われていて、図書館で一からやり直す必要はないはずです。

また、このグループは、多くの書誌データセットがすでにリンクトオープンデータとして公開されている中で、それらを意味のある方法で相互に接続するためには、他に何が必要なのか?と考えました。

何が私たちを前進させないのか、という疑問が議論の中心となったのです。

外部データを信頼する

ある参加者は、図書館はリンクするデータソースに慎重であると示唆しました。典拠ファイルは永続的で信頼性の高いデータソースですが、新たに登場したリンクトデータのエコシステムにはまだ対応するものがありません。信頼性と持続性に関する規約がないことが、図書館がリンクトデータとのパートナーシップを結ぶことを躊躇したり、外部データ(Wikidataなどの確立されたソースであっても)に依存することをためらう理由かもしれません。結局のところ、データソースへのリンクは、信頼とデータ品質に対する認識の表れなのです。

話し合いはデータモデルに関するものに移りました。どのリンクトデータを自分で作るのか?それをどのようにデザインし、他のデータとリンクさせるのか?参加者の中には、「著作」のような重要な概念の意味について、まだ合意や明確さが不足していると感じている人もいました。他の参加者からは、使用する概念の意味を定義することこそがリンクトデータの目的であり、この機能によって複数のオントロジーを共存させることができる、言い換えれば、もはや高いレベルの基準で意味を固定する必要はない、という指摘もありました。

唯一無二のセマンティックモデルなどありません。すでに他の人が定義したデータを参照すると、その情報に対するコントロールを放棄することになり、それがリンクトデータを適切な方法で取り扱うことに対する精神的な障壁となります。すべてのデータを自分のサイロに保存して管理する方がはるかに安全です。しかし、それを手放すことができた瞬間、世界は自分一人では実現できないほど豊かになるのです。

リンクトデータという観点から考える

話題は、目録担当者のトレーニングの必要性に移りました。参加者の一人は、リンクトデータの考え方を学ぶことから始めて、リンクトデータのグラフを作る練習をしたり、レゴブロックで遊ぶように様々な可能性のある構造で遊んだりすることが役に立つと考えました。このように、リンクトデータの可能性や、リンクトデータを実践した結果についての理解がまだ浅いというのが、このグループの意見です。

私たちは、自分たちがメタデータの発行者と自覚し、他の人たちから見つけられるようにする方法を学ばなければなりません。他の人たちが誰であるかは分かりませんが、私たちは、米国議会図書館のNACOWorldCatよりももっと大きなことを考えなければなりません。私たちはもはや、自分たちが作成したレコードの話をしているのではなく、比類のないレコードの断片の話をしているのです。なぜなら、多くの断片はすでに他の場所から来ているものだからです。私たちはこのことを理解し、自問しなければなりません。大きな流れの中で私たちの役割は何でしょうか?これは非常に難しいことです。

グループはこのような議論を図書館内で始めることが非常に重要だと考えました。しかし、具体的にはどうすればいいのでしょうか?大きなテーマなので、図書館のリーダーシップチームから始めなければなりません。

私の図書館には関係ない

グループ内のある大学図書館のリーダーは、これに反応して言いました。

印象的なのは、この課題に直面している図書館の数が減っていることです。() [私の図書館では] もうほとんどメタデータを作成していません。() 今でも自分たちで作っているものといえば、学生の社交クラブの写真を記述する程度で、() もうほとんどありません。メタデータはごく一部の専門家だけのテーマになってしまったのです。

グループは、この観察について、図書館がサービスを提供するコミュニティが持つ発見ニーズの重要性を見落としているのではないかと反論しました。その一方で、この意見は、私たちが認識しなければならない現実を反映していると同時に、視野に入れなければならないものでもあります。しかし、残念ながらその時間はなく、セッションは終了しました。それでも、これについてはまだこの先も対話を続けていく必要があります。

次世代メタデータに関するOCLC Research Discussion Seriesについて

2021年3月、OCLC Researchは2つのレポートに着目した以下のディスカッションシリーズを行いました。

  1. Transitioning to the Next Generation of Metadata” (次世代メタデータへの移行)
  2. Transforming Metadata into Linked Data to Improve Digital Collection Discoverability: A CONTENTdm Pilot Project
    (デジタルコレクションの発見性を高めるためのメタデータからリンクトデータへの転換: CONTENTdmパイロットプロジェクト)

円卓会議はヨーロッパの異なる言語で行われ、参加者は自らの経験を共有し、トピック分野への理解を深め、今後の計画に自信を持つことができました。

開幕全体会議で、議論と探求の場が開かれ、テーマとそのトピックが紹介されました。OCLC Researchのブログ「Hanging Together」では、8つの円卓会議ディスカッションの概要を公開しています。本記事は最終回であり、第1回英語セッションイタリア語セッション第2回英語セッションフランス語セッションドイツ語セッションスペイン語セッション第3回英語セッションの報告記事が先行して掲載されています。

4月13日のクロージング・プレナリーセッションでは、各円卓会議での議論を総括します。このウェビナーへの登録はまだ受け付けておりますので、ぜひご参加ください。
*このウェビナーは終了しています。

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―OCLCスタッフの投稿 Community Center Notesより―
透明性と包括性:一流のディスカバリーサービスの証

2020年6月、米国情報標準化機構(the National Information Standards Organization 、NISO)はOpen Discovery Initiative (ODI)に関する推奨指針の改訂を承認しました。この改訂にあたっては、PALNIアソシエイトディレクターのNoah Brubakerが、WCDの利益が優先され、考慮されることを確実にする為に大きく貢献しました。様々なアウトプットが為されましたが、その中もODIはコンテンツプロバイダ、サービスプロバイダ、図書館の視点からコンテンツディスカバリー環境を査定するための調査を執り行いました。この結果、ODIが改訂を計画することができる7つのキーエリアを優先させることになりました。

版元のような機関でなく、コンテンツ・ニュートラルな機関のディスカバリーのサービスプロダクトマネージャーとして、私は情報の探索者たちが一つの検索場所から、幅広いレンジの版元の資料を見つけられるようにすることに焦点を置きました。我々はこれを世界の名だたるコンテンツ・プロバイダ3,100社以上のコレクションからなり、セントラルインデックスへのアクセスを提供し、包括的な検索結果をもたらし、また特定のトピックやコレクションをえこひいきしないWorldCat Discoveryを通して行います。

ユーザーエクスペリエンスを改善し、ODI以前に発表されたような業界のベストプラクティスに合っていることを確実にする為に、我々は何年もの間、目覚ましい機能強化を施してきました。ユーザーがサービスを使用する方法を完全に最新のものにし、将来のイノベーションをサポートする為に技術インフラを増加させる追加のプロジェクトも進行中です。

貴館が契約しているコンテンツのディスカバリに加えて、オープンコンテンツも利用者のディスカバリにおいて重要な役割を果たしています。私はオープンコンテンツの可視性とアクセシビリティを強化するために政府機関、版元、アグリゲーター、図書館、利用者コミュニティと協働するOCLCのワーキンググループの一員です。

WorldCat Discoveryにおいて最も関連のあるリソースを検索結果に出すために、ライセンスが必要なコンテンツに加えて、オープンコンテンツに特権を与える活動、また利用者にスムーズなアクセスを提供する為に、業界のリーダー(例:Unpaywall)とパートナーシップを結ぶ活動をしています。

つまるところ、我々は断固たる決心で、直感的なディスカバリーとスマート・フルフィルメント機能によって、ユーザーを自館から世界の図書館までに及ぶ範囲の資料に繋げる検索エクスペリエンスに焦点を当てているということです。是非2020年6月のNISO RP-19-2020のアップデートに関する我々の取り組み「Open Discovery Initiative: Promoting Transparency in Discovery」をご覧になって下さい。

WCDご契約機関の皆様は、NISOが提供するテンプレートを確認することで、自館の適合性を確かめてみてください。更には、メンバー館の皆様は、ボランティアとしてODI Standing Committeeの活動に参加頂く事もできます。詳細は、WCDのコミュニティセンター(※リンク先はOCLC Community CenterのWCD関連ページにつき、WCDをご契約の機関のみご覧になれます。)にログインしてご覧になれます。

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―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
研究データに偏りはないか―研究データ管理に活かすバイアス認識
2021年4月21日 ブライアン・ラヴォア

Photo by Bálint Szabó on Unsplash

COVIDパンデミックが深刻化する中、予防接種が注目されています。JAMA Network Openに掲載された最近の論文では、過去10年間に行われたワクチン接種の臨床試験において、様々な人口動態層の人々が適切に参加していたかどうかが検証されています。著者らによると、適切ではなかったことを示す検証結果が出ています。”米国で行われたワクチン臨床試験では、人種・民族的マイノリティグループのメンバーと高齢者の割合が低く、一方で女性の割合が高かった。” また、”疫学的に重要な感染症を対象としたすべてのワクチン臨床試験において、試験参加者を多様にする目標を盛り込むべきである “と結論づけています。

 

先日、同僚のレベッカ・ブライアントと私は、シンシナティ大学図書館OCLC Research Library Partnershipのメンバー)の研究・情報学部門のアシスタントディレクター、ティファニー・グラント博士と、研究データの偏りというテーマで、興味深く、示唆に富んだ会話を楽しみました。グラント博士は、収集データには、結果に影響を与えるすべてのグループを含むべきであると述べ、この問題を端的にまとめています。JAMAの記事が示すように、必ずしもそうではない場合もありますが、医療のように重大な分野での意思決定や政策決定に著しい影響を与える可能性があります。

研究データに偏りがあることは、以前から認識されていました。例えば、1990年代後半から2000年代初頭にかけてヒトゲノムプロジェクトが開始されたことで、この問題に対する認識が高まりましたし、人口動態グループ間での医療結果の違いも観察されました。そして、いくつかのギャップを解消するための取り組みも行われています。そのひとつ、米国国立衛生研究所の「All of Us 研究プログラム」は、少なくとも100万人以上の多様なグループから収集した健康データのデータベースを構築することを目的としています。このプロジェクトの根拠は明確に示されています。”病気の予防や治療のための個別の計画を立てるため、研究者は私たち一人ひとりを特徴づける違いについて、より多くのデータを必要としています。多様な人々が参加することで、重要な発見があるかもしれません。これらの発見は、すべての人にとってより良い医療の実現につながるかもしれません。”

あるグループで観察された知見を他のすべてのグループに外挿すると、推論が甘くなることが多いため、研究者はデータ収集戦略を立てる際にこの点を考慮する必要があります。査読プロセスは、この点を見落としている研究を発見するためのフィルターとして機能するはずですが、それはどの程度機能しているのでしょうか?私たちの仕事や社会生活の他の多くの側面と同様に、ここでも無意識のバイアスが働いている可能性があります。査読者の一部が問題を認識していないために、計画に欠陥のある研究がすり抜けてしまうのです。

グラント博士は、研究データの偏りの問題を解決するには、「教育」が重要だと考えています。研究者は、データ収集の際に起こりうるバイアスの原因を認識し、研究結果の解釈や一般化にバイアスが与える影響を理解するためのトレーニングが必要です。問題解決の第一歩は、問題があることを認識することです。研究データの偏りに対する取り組みが進んでいる分野もありますが、グラント博士の見解では、この問題に対する大学内での認識を高める余地はまだまだあります。

学術図書館はこの問題を支援することができます。ワークショップやトレーニングプログラムを提供したり、関連する情報資源を集めたりすることによってです。シンシナティ大学では、図書館員が研究チームに組み込まれていることが多く、この問題に関する専門知識を共有する絶好の機会となっています。研究データの偏りについての認識を高めることは、研究室、カレッジ/スクール、研究機関などの他のキャンパスユニットと提携する機会でもあります(研究支援サービスに関するキャンパス間のパートナーシップをどのように開発し、維持するかについての詳細は、社会的相互運用性に関する最近のOCLC研究レポートを参照してください)。

現在、多くの教育機関で平等性 (Equality)、多様性 (Diversity)、受容性 (Inclusion)のEDIトレーニングが実施されていますが、研究者向けのEDIカリキュラムの一環として、研究データの偏りを取り上げたモジュールを導入することも考えられます。また、博士課程やポスドク、その他の初期キャリアの研究者を支援する専門的な開発プログラムでも、この分野に焦点を当てることができます。多くのEDIについての取り組みは、個人的な交流に関する問題や、この分野に参加していないグループのメンバーをより多く採用することに焦点を当てているようです。研究者にとっては、責任ある研究の実施に関連するEDIの問題に焦点を当てた追加プログラムで、このトレーニングを補完することが有益かもしれません。言い換えると、EDI関連の問題は研究過程でどのように現れ、研究者はどのようにしてそれらに効果的に対処できるのでしょうか?データサイエンスにおける公平性を高めることを目的としたプロジェクト「We All Count」が提供しているトレーニングがその好例です。

また、研究資金提供者は、研究データの偏りを軽減するために、社会的弱者の参加に関する研究計画のガイドラインを作成したり、ガイドラインへの対応状況に応じて助成金提案を採点する基準を設けたりすることができます。資金提供者による大きな「アメとムチ」は、意識を高め、行動を変化させるための強力なツールなのです。

研究データの偏りは、研究データ管理 (RDM) の偏りにも及びます。保存されたデータセットへのアクセスやアクセス能力が公平でない状況も偏りの一種です。多くの研究助成機関がすでに行っているように、データセットを「オープン」な条件で保存することを義務付けるのは良いことですが、データセットが誰でもアクセスできて使用できるシステムではない場合、その義務の精神は損なわれてしまいます。研究データに偏りが生じるリスクは、データの保管、記述、保存などのキュレーション活動を含め、研究ライフサイクル全体を通じて存在すると認識することが重要です。

今回の対話では、STEM分野 (特に医学) における研究データの偏りに焦点を当てましたが、この問題は社会科学や芸術・人文科学の分野でも注目されるべきものです。ここにまとめたのは、この分野で議論すべきトピックのほんの一例であり、それぞれに解明すべき点が多くあります。私たちは、この重要な問題について議論を始めてくれたグラント博士に感謝するとともに、RDMやその他の研究支援サービスに関する継続的な取り組みの一環として、今後もこの議論を続けていきたいと考えています。

他の多くの組織と同様、OCLCも公平性、多様性、そして受容性について考え、行動を起こしています。その活動の概要を確認し、OCLCのメンバーシップおよび研究部門で行われている取り組みをご確認ください。この記事をより良くするために有益な提案をしてくださったティファニー・グラント、レベッカ・ブライアント、メリリー・プロフィットに感謝します。

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(紀伊國屋書店 OCLCセンター)

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