人文社会系研究

2015年-2019年の記事を追加!The Times Digital Archive

2021.06.08

The Times Digital Archiveは英国の高級日刊紙『The Times』を創刊号よりページイメージで提供し全文検索を可能にしたデータベースです。これまで1785年から2014年分までを収録していましたが、2021年6月に収録年代が5年分追加され、2019年分までをご利用いただけるようになりました。

新聞界の巨人『The Times』

創刊当時は数ある日刊紙の一つに過ぎなかった『The Times』は 19世紀前半、進取の精神に富むオーナーと編集者の下、機械式印刷機や自前の特派員網といった新機軸を取り入れることで、多くのスクープを手掛け、社会の中で発言力を増す新興ミドルクラスの世論を代弁する形で発行部数を伸ばしました。

19世紀半ばには、その影響力は政権を崩壊させるほどの大きなものになり、他紙には到達できない特権的なポジションを新聞界で獲得するに至ります。

その後、19世紀後半から20世紀にかけて、安価なペニー新聞や大衆紙が登場すると、今度は、ゴシップ記事などで部数を伸ばす大衆紙とは一線を画し、高級紙市場という新しい市場を見出し、国内ではエリート層向けのクオリティー・ペーパーとして世論を導き、国外では世界の『The Times』として、時論、公論に影響を及ぼしました。

5年分の収録年代追加

この度、2015年から2019年までの5年間の記事(約21万ページ)が追加されました。5年間の記事が追加されることにより、総ページ数は 206万ページに及びます。

『The Times』で振り返る2015年ー2019年

2015年、ヨーロッパはテロリズムの恐怖に震撼させられました 。1月にはフランスの諷刺週刊紙『シャルリー・エブド』本社がイスラーム過激派に襲撃され記者らが殺害されました。11月にはパリ中心部のコンサートホール等を標的とする同時多発テロ事件が発生し、130人が死亡する大惨事となりました。

2016年はイギリスとアメリカが世界に衝撃を与えました。6月に実施されたイギリスの国民投票でEU離脱が決定、11月の米国大統領選挙では大方の予想に反して、ドナルド・トランプが勝利を収めました。

トランプ大統領は2017年の就任直後、TPP(環太平洋経済パートナーシップ協定)から離脱する大統領令に署名、就任2年目にはイラン核合意からの離脱を表明、就任3年目には温室効果ガス排出削減のための枠組みパリ協定からの離脱を国連に通告、国際的協調よりも自国を優先する姿勢を押し出しました 。
東アジアでは2017年に北朝鮮が核実験と核ミサイル発射実験を強行し、情勢が緊迫化します 。

2018年には初の米朝首脳会談が実現し、「朝鮮半島の完全な非核化」を目指すとの共同宣言を発表したものの、非核化実現のロードマップが示されることはありませんでした。対中貿易赤字に業を煮やしたトランプ政権による輸入品に対する関税引き上げ措置に端を発した米中貿易摩擦は、中国による報復措置を招き、貿易戦争の様相を呈しました。中国国内では2018年の憲法改正により国家主席の任期が撤廃され、習近平主席に権力が集中する傾向が顕著になりました。

香港では2019年の逃亡犯条例改正案に反発して学生らによる大規模デモが発生、一国二制度の形骸化が浮き彫りになりました。

左:2015年11月14日・表紙、中央:2016年6月24日・表紙、右:2016年11月・表紙

研究資料としての魅力

『The Times』は数ある新聞の中でも研究資料としての汎用性が高く、過去の出来事を記録する史料、同時代の国際政治に影響を及ぼした帝国のメディア、訃報記事をはじめとする人物情報源、『オックスフォード英語辞典(OED)』収録典拠数1位(2010年時点)を誇る英語史研究資料、デジタル人文学のコーパス等々、幅広い観点からの利用が期待できます 。

収録年代の追加により『The Times』を235年分、ご利用いただけるようになりました。この機会にどうぞご検討ください。

(センゲージ ラーニング株式会社)

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