人文社会系研究

音楽史の宝庫RILM Music Encyclopedias

2021.10.16
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RILM Music Encyclopediasは、音楽関連の著名なレファレンス・事典を一括調査・全文アクセスすることを可能にしたデータベースです。そのグローバルな収録内容は、教育から研究まであらゆる段階での調査の需要を満たします。収録されている約60タイトルの中から、その一部をご紹介します。

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Opernlexikon/Opera catalogue/Lexique des opéras/Dizionario operistico

Franz Stieger. Opernlexikon/Opera catalogue/Lexique des opéras/Dizionario operistico (Tutzing: Hans Schneider, 1975–1983) 11 vols.; 1903 p. [1043 p.; 328 p.; 532 p.]

Franz StiegerのOpernlexikonは、最も頻繁に参照されているオペラ目録の1つです。バレエ、オラトリオその他の舞台作品のタイトル、作曲家、台本作者も掲載しています。オペラ・セリアのリスト、タイトルの相互索引、台本作者の同定などが特徴的です。Nachträgeと題される最後の2巻は、正誤と補足です。掲載舞台作品のタイトル数は60,000点を超え、その規模は他のオペラ目録を凌駕しています。各作品の初演地、初演日(判明分)、ジャンル、幕数が記載されています。掲載作品の中では、特に1920年より前に制作、上演された作品の情報を提供する点で価値があります。オーストリア国立図書館の音楽部門司書Franz Grasberger氏による序文では、未刊情報も踏まえての本目録の価値を強調しています。本目録の編者Franz Stieger(1843-1938)の評伝についても、他の資料では得られない情報が含まれます。

Dizionario universale dei musicisti

Carlo Schmidl. Dizionario universale dei musicisti (2nd ed.; Milano: Sonzogno, 1937-38) 2 vols. and supplement; ii, viii, 2454 S.

出版者、音楽史家Carlo Schmidl(1859-1943)編纂、イタリアの音楽家の初期の重要な人名辞典として広く知られています。初版刊行から約半世紀後にを経て、第2版が大幅増補改訂され、1巻から2巻となり、補遺もつきました。作曲家に関する項目には作品リストや初演の詳細情報が含まれています。また、音楽人名辞典としては珍しく、イタリアの文学者と、彼らと音楽の関係についての記事も掲載されている点がユニークです。

Biographisch-Bibliographisches Quellen-Lexikon der Musiker und Musikgelehrten

Robert Eitner. Biographisch-Bibliographisches Quellen-Lexikon der Musiker und Musikgelehrten der christlichen Zeitrechnung bis zur Mitte des neunzehnten Jahrhunderts (Leipzig: Breitkopf & Haertel, 1900–04) 10 vols.; iv, 4950 p.

Robert Eitnerは音楽を独学で学び、1868年に今なお存続するGesellschaft für Musikforschung(音楽研究協会)を設立、音楽学の活動を開始しました。いくつかの出版シリーズに着手した後、その規模と野心的な試みにおいて独創的な”Quellen-Lexikon”に力を注ぎました。Eitnerがヨーロッパ各地の図書館で仕事をしていた当時、多くの館は音楽単体の目録を所有しておらず、それらの必要性を認識していた点で、彼の功績は極めて大きいといえます。音楽資料のドキュメンテーションのパイオニアであり、 “music bibliography is the foundation of all historical knowledge”(序文)(音楽目録はあらゆる歴史的知識の基礎である」(序文)という有名な言葉を残しました。

技術の進歩により、ドキュメンテーションの前提条件が根底から変化した今日においても、Eitnerの仕事はその有効性を維持し続けています。Eitnerが引用したコレクションの多くが戦争で失われており、Eitnerがのこした参考文献が唯一のものです。本書は手稿・印刷物の一覧に留まらず、資料を地域の文脈の中で捉え、有名無名の楽曲、人物、音楽機関についての洞察を提供し、そのことが本書を音楽史の一部としています。情報源の辞書として知られる”Eitner”は、音楽の情報源研究の古典であり、音楽を研究する上で不可欠なレファレンスです。

Algemene muziek encyclopedie

Jozef Robijns and Miep Zijlstra, eds. Algemene muziek encyclopedie (2nd ed.; Haarlem: De Haan/Unieboek, 1979–84) 10 vols.; 2667 p.

音楽史と音楽用語の百科事典”Algemene muziek encyclopedie”の初版(6巻)は1957年から1972年にかけてベルギーのゲントで出版されました。August CorbetやWouter Paapを筆頭にベルギーやオランダの著名な音楽学者が多数寄稿しています。ベルギーの音楽学者でルーヴェン大学の教授、ブルージュ音楽院の司書Jozef Robijns(1920-93)は、Miep Zijlstraとともに第2版(10巻)を編纂しました。第2版では、音楽史、楽器構造学、音楽理論の研究中心となる側面を、古典的なカノンに属さない音楽も含めてカバーしています。ベルギーとオランダに重点を置いた本書は、低地諸国の音楽文化の情報を参照するのに特に有用です。

Biographie universelle des musiciens et bibliographie générale de la musique

François-Joseph Fétis. Biographie universelle des musiciens et bibliographie générale de la musique (2nd, expanded ed.; Paris: Firmin Didot, 1866–81) 8 vols.; 5321 p.

著名な音楽評論家・音楽教育家のFrançois-Joseph Fétis(1784-1871)は、1835年から1844年にかけて”Biographie universelle”の初版(8巻)を出版しました。本辞書は、19世紀の単著の音楽レファレンスの中で最も印象的なものの一つです。初版には西ヨーロッパの音楽家たちの詳細な評伝情報が掲載されています。第2版は2巻の参考文献補遺が付随し、1878年から1880年にかけてArthur Pouginによって編集されました。Biographie universelleに掲載された音楽家の包括的な評伝には、強硬な意見を表現することを恐れなかったFétisの性格がよく表れています。

Fétisは1827年には19世紀の最初期かつ最も影響力を持った音楽専門誌のひとつ Revue musicale を創刊し、1833年から亡くなるまでブリュッセル音楽院長を務めました。ヨーロッパ全土の音楽仲間と人脈を持ち、”Biographie universelle”に掲載された多くの人物と個人的に書簡のやりとりをしていました。”Biographie universelle”は、19世紀のフランスおよびヨーロッパの音楽生活を、その中心にいた一人の著述家の目を通して知ることができる基本資料です。

Großes Sängerlexikon

Karl-Josef Kutsch, Leo Riemens, and Hansjörg Rost, eds. Großes Sängerlexikon (4th ed.; München: K. G. Saur Verlag, 2003) 7 vols.; ix, 5371 p.

“Großes Sängerlexikon”(通常、創刊時の編集者の名前にちなみKutsch/Riemensと略記されます)は、声楽家に関する世界で最も包括的な辞書とされています。有名無名、そしてほとんど忘れられた人も含め、世界中のオペラ、オペレッタ、オラトリオ、宗教音楽、歌曲など、西洋の古典声楽分野で活躍する声楽家をカバーします。1950年代に、レコードや声楽家の伝記収集家Karl Josef Kutsch(1924年生)とオランダの音楽学者Leo Riemens(1910-85)が本書の制作に着手、Riemensの死後は、高校教師のHansjörg Rost(1942年生)が中心となり、1994年に正式な共同編集者となりました。第4版は、429ページの初版(1962年)から大幅に増補改訂されています。7巻構成で、16世紀から現在までの声楽家の伝記約2万件を収録します。各伝記記事には、芸名、通称、声区、日付情報が記載されています。この情報に続いて、音楽関連を含む経歴が詳述され、主要作品、重要な契約・出演リスト、声の種類、主要人物に関しては文献・録音関連のレファレンス他が記載されます。

Großes Sängerlexikonは、16世紀後半以降の歌唱芸術を支配してきたオペラ、オラトリオ、アリア、カンタータ、独唱声楽曲、宗教関連の声楽曲など広範囲を網羅し、可能な限り最新の情報を提供します。歌を愛するすべての人のためのレファレンスです。

Hugo Riemanns Musik-Lexikon

Hugo Riemann, ed. Hugo Riemanns Musik-Lexikon, ed. by Alfred Einstein (11th ed.; Berlin: Max Hesse’s Verlag, 1929) 2 vols.; vii, 2146 p.

一人の人間が手がけた最後の包括的な音楽百科事典の一つで、ドイツの音楽学者、理論家のHugo Riemann(1849-1919)が初版を出版しました。1882年の初版から1916年の第8版まで、大半をRiemann自身が編纂・出版、Riemannが手掛けた最後の版となった1919年の第9版は、Riemannの死後、音楽学者Alfred Einsteinがナチス・ドイツから強制移住させられるまでに完成させました。なおEinsteinはその後の版の増補・改訂も手がけています。その後、英語圏でEinsteinの名が知られるようになったことで、本書は英米の音楽学分野で周知・評価されるようになりました。

第11版は初めて2巻構成で出版され、取扱分野が広がったことで注目に値します。一方で、前版に掲載されていた多くの人物情報を、さらに重要と思われる人物情報と差し替えている点で、1920年代後半の時代精神に沿ったものであり、この時代の1920年代のドイツ他ヨーロッパ諸国の音楽を研究するための優れた情報源となっています。

Real-Lexikon der Musikinstrumente

Curt Sachs. Real-Lexikon der Musikinstrumente, zugleich ein Polyglossar für das gesamte Instrumentengebiet (New York: Dover Publications, 1964) xxiii, 452 p.

1913年にCurt Sachs(1881-1959)が出版した”Real-Lexikon der Musikinstrumente”は、200年もの期間の楽器をおそらく最も包括的に調査し、ドイツにおける楽器研究のパイオニアとされています。その価値は言うに及ばず、古代ギリシアの木管楽器アウロスから、中国寺院の楽器、ペルーのsilvadoresまであらゆる民族、国の楽器を網羅し、楽器の名前をアラビア語、キリル文字、ギリシア語、ヘブライ語、サンスクリット語で表記し、文献学的な側面を重視しています。何十年もの間、Sachsは手元の1冊に補筆・修正を行っており、彼の死から5年後、妻のIreneがそれをもとに第2版を発行しました。この改訂版では、初版の200枚の図版を引き続き掲載、さらい600項目を改訂、民族楽器やヨーロッパ以外の地域の楽器を取り上げた500項目が追加され、参考文献とあわせて巻末付録にまとめられました。

Musical instruments: A comprehensive dictionary

Sibyl Marcuse. Musical instruments: A comprehensive dictionary (New York: Doubleday, 1964) xiv, 608 p.

Sibyl Marcuseの辞書は、SachsのReal-Lexikonに掲載された資料の大半を取り入れ、必要に応じて修正、拡張、さらに膨大な数の新項目を追加し、読者のために多くの相互参照を用意したものです。Marcuseは、先史時代から今日の電子楽器に至るまで、世界中の楽器に関する数千におよぶ項目を提供しました。西洋の楽器を幅広く紹介する他、東洋、アフリカ、アメリカ大陸、ポリネシアなどで使われていた楽器の定義や解説を提供する項目も掲載しています。遠方地域の楽器の情報も提供しています:アフリカのブッシュマンと呼ばれた人々の楽弓ha、コンゴの円筒形小型太鼓lumbambamや木製カウベルndingi、コンゴとアンゴラの楽弓wurumbumba、片方の鼻孔で吹くガボン共和国のabeng、若者が二人一組で演奏するアマゾン川流域の木製トランペットyurupuri、ブラジルの打楽器の一つxaque-xaque、ホンジュラスの楽弓bum-bum、コロンブス以前のトルテカ帝国の貝殻のトランペットehecacozcatl、のダルシマー(打弦楽器)の1種でチベットのyan-ljin、日本の神社の入り口に吊るされ参拝者が叩く鰐口、ロンバルディアの笛uffolo、スペイン北部のうなり板 zurrumbera、ドイツのファゴット「ソーセージバスーン」、夜半に野生動物を追い払うために鳴らされるバスクのホルンabilosen adar、カズー(バズーとも呼ばれる)に似たヨーロッパで発見されたユーナックフルート。

本書には、信号装置、うなり板から、ステッキ杖バイオリン、筏形チター、うなりごま、ピブゴーンまで、様々な鳴り物が含まれます。すべての項目に相互索引が提供され、語源や、英語の用語と同義の外国語の用語も掲載されています。その広汎性により、本書は音楽家、音楽学者、民族音楽学者、学芸員にとって不可欠のレファレンスであり、文化人類学者、考古学者、社会学者他の研究者にとっても有益な情報が多数収録されています。

Neues historisch-biographisches Lexikon der Tonkünstler

Ernst Ludwig Gerber. Neues historisch-biographisches Lexikon der Tonkünstler (Leipzig: A. Kühnel, 1812–14) 4 vols.; xxxii, 974 col.; 823 col.; 942 col.; 844 col.

”Historisch-biographisches Lexikon der Tonkünstler”(1790-92)は、ドイツの作曲家Ernst Ludwig Gerber1746-1819)制作した2巻構成の音楽辞典を、完成後にJ.F. Reichardt、E.F.F. Chladni他が大幅に追加し、Gerber自身が収集した新たな資料(特にMartini、Burney、Forkel、Reichardt、Chladnyの作品)と統合したものが、4巻構成の”Neues historisch-biographisches Lexikon der Tonkünstler”のベースとなっています。”Neues historisch-biographisches Lexikon der Tonkünstler”は、新たな資料と照らしあわせた上で全面改訂、情報追加、項目削除が行なわれました。Gerberは批判的なアプローチを目指したわけではなく、音楽学者、有名な作曲家、声楽家、熟練したアマチュア、音楽出版社、古代から現代までのあらゆる地域の楽器製作者の生涯や業績を盛り込んだ歴史的な音楽家の人物事典を作りあげました。わずかな欠点はあるものの、本書は出版以来、特にGerberが同時代の偉大な音楽家たちとの親交があったことから18世紀後半の音楽に関する独自の価値ある情報源と評価されています。一部は翻訳され、Choron-Fayolle、Sainsbury、Lichtenthalらが編纂した辞書類にも掲載されています。その後も学術界から注目され続け、新版発行に向け、Gerber自身がさらに加筆、Carl Mainberger(1816年)やF.S. Kandler(1817-20年)他が補足資料を提供しましたが、ついに完成には至りませんでした。

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(紀伊國屋書店 デジタル情報営業部 伊佐)