図書館をつくる

OCLC News 第56号

2022.01.19
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OCLC News  第56号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。

目次

―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
国際ILLツールキット: 相互貸借コミュニティの協力が生んだ名作
デニス・マッシー

国際ILLツールキット内の翻訳済リクエストテンプレート

国際ILLツールキットは、OCLC SHARESリソースシェアリングコンソーシアムのメンバーが始めた、無料で利用できるクラウドソースツールで、世界的なリソースシェアリングをより容易にするために設計されています。ツールキットの出現は、国際的な資料共有に前向きなILL貸出図書館の情報に対する長年の要望を満たす、胸躍る出来事です。 また、このツールキット誕生の物語は、世界のコレクション共有に携わる人々が、そのスキルと創造力を駆使して、研究者と彼らが必要とする資料の間に立ちはだかる多くの物流上の障害を克服するため、常に団結していることの好例と言えるでしょう。

ツールキットに含まれるツール

国際ILLツールキットは、次の3つの主要コンポーネントから構成されています。

  • 世界中のILL貸出図書館の連絡先、受け渡し情報、支払い情報などが記載されているリスト。この内容は増え続けています。

リストは、米国の図書館と米国以外の図書館に分かれています。 この記事を書いている時点で、米国の貸出図書館35、その他43カ国の貸出図書館216が掲載されており、毎月新しい機関が追加されています。

  • 国・地域別国際ILLのコツとヒント

例えば、オーストラリアの図書館の総合目録、カナダ税関を通過しやすくする荷物への貼付物、国際図書館機関連盟(IFLA)が管理する国際ILLガイドラインへのリンクなどがあります。

  • その言語に堪能な図書館の専門家と共同で作成した、各図書館でコピー可能な翻訳済みILLリクエストテンプレート

現在、次の非ラテン語圏の5言語を含む11言語のテンプレートがあります: アラビア語、ヘブライ語、韓国語、日本語、ロシア語

起源の物語: ツールキットの誕生とその背景

私は、パンデミックの発生以来、OCLC SHARESリソース共有コンソーシアムのメンバーのために、週次バーチャル対話集会を開催しています。人々はそこに集まり、サポートし合い、共通の課題について議論し、解決策についてブレインストーミングを行っています。 2021年3月4日の主な議題は、OCLCのWorldShare ILLリソースシェアリングプラットフォーム上の貸出館ではない、海外のILL図書館の連絡先やポリシー情報を見つけるのが難しいということでした。

WorldShare利用の国際的な図書館の多くは、世界各地の1万館以上の蔵書を集めたOCLCの世界的目録であるWorldCatにその書誌情報を登録していますので、どのような資料を所有しているかを調べることは非常に簡単です。 しかし、WorldShare ILLを利用していない他の多くの海外貸出図書館は、自分たちのローカル目録以外の所蔵情報を提供していません。 また、OCLC WorldShare ILL上のすべての図書館は、OCLC Policies Directoryで貸出方針、業務情報、料金を示すことができますが、WorldShare ILL上に存在しない海外ILL貸出館のための要覧は存在しません。

SHARES対話集会では、オハイオ州立大学図書館のブライアン・ミラーが、彼の作成したカンニングペーパーを紹介してくれました。それには、WorldShare ILLでアクセスできず、直接貸し出してもらっている数十の米国外の図書館情報が記載されています。ペンシルバニア大学のラピス・コーエンは、このカンニングペーパーを自分用に改良したバージョンには特定の国から借用する際のヒントも含まれていると話しました。この対話集会では、多くの人が国際的なILL図書館に関する独自のカンニングペーパーを作成したと報告しています。これらを集め、組み合わせることが、当然次に進めるべきステップだろうと思われました。

ブライアンとラピスはその課題に立ち上がり、単なるカンニングペーパーの統合をはるかに超えるプロジェクトを立ち上げたのです。 私はインフラを提供しました。 それは、SHARESの議論に基づいて、対話集会の参加者から提案されたすべてのデータポイントの列を持つGoogleシートをセットアップする事です。 ブライアンとラピスは、カンニングペーパーを統合するだけでなく、ILLリクエスト管理システムで貸出館タイプが「その他」(手動リクエスト)であるリクエストトランザクションを検索しました。 この「その他」のリクエストのほとんどは、WorldShare ILLに登録されていない海外貸出館への依頼でした。 ブライアンとラピスは、スプレッドシートで結果リストを統合し、データを整理、強化し、2週間もかけずにWorldShare ILLに貸出館として参加していない200以上の国際的ILL図書館のディスカバリー、連絡先、リクエスト方法、料金、支払方法、送付方法の情報が記載されたツールを作成しました。

もっと多くの料理人が、よりおいしいスープを、国際的な味付けで提供できるかのように

最初にアイデアがひらめいてから2ヶ月後の2021年5月までに、ブライアン、ラピスと私は、ILL listservsを通じて、リソースシェアリングの仲間と交流し、様々な図書館組織の資料共有委員会と会談し、国際ILLツールキットをリソースシェアリングのコミュニティーに広めるよう積極的に活動していました。 米国図書館協会レファレンス・利用者サービス部会資料アクセス共有転換部門国際ILL委員会のあるメンバーの反応が、このツールキットの評判を物語っています。”すごい!(進水式のように)シャンパンのボトルを割ってもいい?”  ツールキットは、明らかに長年のニーズを満たすものです。

何より良かったのは、ツールキットに多くの人の目と手が加わることで、大幅な改良がなされた事です。米国図書館協会レファレンス・利用者サービス部会資料アクセス共有転換部門国際ILL委員会のもう一人のメンバーであるエモリー大学のジェニー・ヴィッティが、様々な言語でILLリクエストを行うための小さなメールテンプレート集を開発したと聞けば、これは是非見なくては!となりました。ブライアンとラピスはジェニーの例を参考に、各機関の言語スペシャリストと協力して11言語のテンプレートを開発し、ツールキットの新しいタブに追加しました。国際図書館連盟のリソースシェアリング・ドキュメントデリバリー常任委員会との会合を待たずに、ブライアンとラピスは、米国外機関からのILLリクエストを電子メールまたは図書館ウェブサイト上のリクエストフォームで受け付けてくれる米国の図書館を募集し、ツールキットの価値を飛躍的に向上させました。 この情報は、ツールキットの新しいタブとして追加されています。 毎月、世界中の図書館が貸出図書館リストにその名称と必要情報を追加しています。

次のステップへ

もちろん、今後も貸出図書館やヒント、より多くの言語でのリクエストテンプレートは追加し続けたいと考えています。また、Google Sheetsより永続性のあるフォーマットでツールキットを利用できるようにするためのオプションも検討中です。 長期的には、ブライアン、ラピス、私の3人は、ツールキットが私たち3人に依存することなく、将来にわたってグローバルなリソースシェアリングのコミュニティに価値を提供し続けられるよう、後継者育成計画を立てることに取り組んでいます。 私たちもいくつか考えていますが、皆さんからのご提案もお待ちしています。

私たちは、国際ILLツールキットの存在を世界中に広め続けていますが、その価値を説明する必要がほとんどないことに気づいています。リソースシェアリングを実際に行っている人にとって、この価値は一見して明らかだからです。2022年2月17日 (木)、米国東部時間午前11時、英国時間午後4時 (日本時間2月18日 (金) 午前1時) から始まる無料ウェビナーで、このツールキットについて説明する予定です。 このウェビナーは、OCLC Research Library Partnershipと米国図書館協会レファレンス・利用者サービス部会資料アクセス共有転換部門国際ILL委員会の共同開催で、どなたでもご参加いただけます。 ライブで参加されたい方はこちらからご登録ください。また、イベント終了後すぐに、セッション録画へのリンクをお知らせいたします。

ブライアン・ミラーとラピス・コーエンは、国際ILLツールキットの作成において、最大の功労者です。 また、OCLC SHARESや地球規模のリソースシェアリングコミュニティの多くも、その開発に協力してきました。 これは、世界をより良い場所にするためにコミュニティが団結した素晴らしい例です。

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New Model Library: パンデミックの影響と「最新型図書館」に向けた進化

OCLCは2021年10月、新たなリポート”New Model Library: Pandemic Effects and Library Directions“(New Model Library: パンデミックの影響と「最新型図書館」に向けた進化)を公開しました。

新型コロナウィルス感染拡大によるパンデミックは、世界中のありとあらゆるタイプの図書館に影響を及ぼし、図書館のリーダーたちへ、急速に変化するコミュニティと所属する機関のニーズに対応することを余儀なくしました。

OCLC Researchは世界11ヶ国の29名の図書館リーダーにインタビューを行い、パンデミックの間の経験や、自館をコロナ禍に対応させ、未来に向けて進化させる為に描いているビジョンについて語ってもらいました。OCLCはこれらの変容―リーダー達がいかに戦略的に変わりゆく利用者のニーズと期待に対応したか―を、最新型図書館(New Model Library)へのムーブメントと表現します。

ジャニス・ウェルバーン(Janice Welburn)による序文から始まるこのハイレベルなリポートは、「業務に関する経験」、「コレクションに関する経験」、「利用者サービスに関する経験」の章に分かれ、各章ごとに図書館リーダーたちの発見と推奨したい慣行や、パンデミックの影響が大きかった以下4つのエリアに起こっている最新型図書館へのトランスフォーメーションをまとめています。

  • Agility(敏捷性)
  • Collaboration(コラボレーション)
  • Virtualization(可視化)
  • Space(図書館スペース)

このリポートを通して創り出されたフレームワークは、貴館が同僚達と共通点を見つけ、図書館運営の戦略立案の為のアイディアを見つけるのに役立ちます。OCLCは、こうして創られた基礎が貴館の経験と最新型図書館へ進化する為のアイディアを共有するのに役立つことを願っています。

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WorldCat Discoveryの新しいプロダクトロードマップが公開されました。

2022年1月に、WorldCat Discoveryの新しいプロダクトロードマップが公開されました。
更新されたロードマップでは、2022年1月から同年9月までに予定されている機能の追加・強化が確認頂けます。
予定された機能の追加・強化は、予告なく変更になる可能性がございますのでご了承下さい。

掲載の例:

  • Accessibility Insights for Webプラグイン(Chromeと Microsoft Edgeの拡張機能で、アクセシビリティ上の問題を発見できる。)を使用した検索結果の審査
  • ブラウザの設定でreduced motionが選択されている場合、「読み込み中」の文字を表示
  • フルテキストリンクから、代替リンクやライセンス規約にすばやくアクセス
  • パーソナライズされた機能の使用を推奨する為のサインインプロンプトを作成
  • 図書館スタッフもしくは地域の図書館へ所蔵を非表示にする*
  • IP認証の範囲により、非表示設定の所蔵を表示*
  • 現在のセッションの検索履歴を表示
  • サインイン時に、直近保存した資料を自動的にマイアカウントに追加
  • My Items(マイ資料)のデザインを変更。
  • 高精度のスペルチェック機能により、検索クエリの品質を向上。**
  • サインイン時に最新の検索を自動的にマイアカウントに追加
  • 検索結果を棚位置で絞り込み***

* WorldShare Management Services (WMS)ご契約の機関のみ。WorldShare Management Services は 2022年1月現在、日本では未提供のサービスです。
** WCD と自館 OPAC との「リアルタイム連動オプション」もしくは WMSのご契約が必要です。
*** WCD と自館 OPAC との「リアルタイム連動オプション」 もしくは WMSのご契約が必要です。また、ローカル所蔵レコード(LHR)の登録が必要です。ローカル所蔵レコードは、WorldCat書誌レコードに付随して、WMSでの表示を想定したOCLC機関シンボル以上の所蔵詳細情報を提供する個別の所蔵レコードです。

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(紀伊國屋書店 OCLC事業部)


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