2022年9月よりJKBooksの新商品として『WEB版 天皇皇族実録』(ゆまに書房)の提供を開始いたしました。WEB版公開にあたり、「天皇皇族実録」の魅力を三回にわたってご紹介いたします。今回の第一回目は「天皇皇族実録の説明」をさせていただきます。
第一回 天皇皇族実録の説明
ゆまに書房では2005年から「天皇皇族実録」を刊行し、多数の機関でご購入頂いております。当時、宮内庁書陵部所蔵の史料を書籍として刊行、販売することは難しいとされており、刊行時に際しては喜びをもって迎えられたと記憶しています。最後の補巻を刊行するまでには長い期間を要してしまいましたが、2019年に無事135巻+補巻の刊行を終えることが出来ました。まずはこの「天皇皇族実録」とはどんな内容なのかをご説明いたします。
『天皇皇族実録』とは
神武天皇より第121代孝明天皇に至る歴代天皇並びに光厳・光明・崇光・後光厳・後円融の北朝五天皇と、皇后以下後宮、皇親、皇親妃(但し、伏見宮・桂宮・有栖川宮・閑院宮の四親王家を除く)に関する事蹟を、当時現存したあらゆる文書・記録より渉猟し、編年体に載録した戦前期最高水準の実録です。
天皇皇族実録のスタイル
『天皇皇族実録』は各天皇・皇族ごとに編年体で編修され、『大日本史料』と同様に綱文を立てるとともに根拠となる史料を掲げる体裁となっています。綱文の記述の根拠となる史料は、宮内省図書寮(現宮内庁書陵部)を筆頭に内閣文庫(現国立公文書館内閣文庫)・東京帝国大学史料編纂所(現東京大学史料編纂所)など多くの機関や寺社、民間の所蔵者などから可能な限り、広く収集され、提示されています。また検討を要する問題があればそのつど案文を付して注意を喚起するなどの配慮もなされています。
根拠となった史料にはどのようなものがあるか
綱文の記述の根拠となった史料には下記のようなものがあります。当時において、歴史学上有用なあらゆる史料を渉猟して作成されました。
- 古事記、日本書紀を初めとする六国史。
- 天皇宸記や皇族の日記。
- 政権の中枢にいた貴族や僧侶の日記・記録、社家の記録・日記。
- 武家政権の編纂史書吾妻鏡。
- 政権内の重要な職掌に就いた公家の日記(関東申次に就いた西園寺家の日記など)。
- 歌集、歴史物語、歴史書(大鏡、今鏡、水鏡、増鏡、栄花物語、将門記、源平盛衰記、愚管抄等々)。
『天皇皇族実録』の成立と公開
『天皇皇族実録』は、大正9年5月宮内省図書寮において編修に着手され、昭和11年12月脱稿しました。作成された数はごく少部数で天皇をはじめ関係者のみに奉呈され、その後2001年になるまで非公開とされ、研究者の利用に供されることもありませんでした。原本はB5判和装、袋綴、和紙上質紙にタイプ印刷です。2005年ゆまに書房が宮内庁書陵部のご許可を得、影印版(全135巻+補巻1)として刊行、やっと多くの研究者に利用されるようになりました。更に綱文をデータ化することでこの度の電子版公開に至りました。
天皇皇族実録に書かれていること
「天皇皇族実録」の内容ついては下記の通りです。
- 『天皇皇族実録』は、編年体の史料集である『大日本史料』とほぼ同じ形式で、歴代天皇および后妃・皇族ごとにその事蹟を生涯にわたり編纂するものであり、皇室史ならびに宮廷社会の研究に必須の史料集である。ことに各時代の宮中の儀礼や年中行事のあり方を知るためにも利用価値は大きい。
- 『天皇皇族実録』には、歴代天皇の后妃および皇子・皇女以下、系譜関係の明らかな皇孫・皇曽孫・皇玄孫までの事蹟も収録しており、后妃・皇族の研究に資する点が多大である。
- 事蹟の典拠として公家の日記や古文書のような一級史料を用いているが、また和歌集や歴史物語などの古典文学作品も数多く引用して王朝文化の実相を豊かに示しており、文学史的にも、また思想史的にも貴重な史料集となっている。
次回は「Web版製作にあたっての苦労したこと」をご紹介いたします。
お問い合わせは、最寄りの弊社営業部・所、またはこちらまでお問い合わせください。
(紀伊國屋書店 デジタル情報営業部)