人文社会系研究

米国防総省の機密解除文書がデータベースに。ラムズフェルド機密メモ

2021.03.09

アメリカの外交政策、安全保障に関する新たな一次史料

2001年~2003年に、ドナルド・ラムズフェルドが長官として国防総省内で職員への指示や状況の把握に用いた短い機密メモ、通称「スノーフレーク(雪片)」を集めたデジタル・コレクション“Donald Rumsfeld’s Snowflakes, Part I: The Pentagon and U.S. Foreign Policy, 2001-2003”がProQuest社よりリリースされました。
※当コレクションは、アメリカの外交政策に関する機密解除文書を収集するシリーズ、Digital National Security Archive(DNSA)の新コレクションです。

2001年~2003年は、国防総省も直接攻撃を受けた9.11テロ、アフガニスタンへの軍事攻撃開始、そしてイラク戦争の開戦へと至る米国史上有数の激動の時期であり、ラムズフェルドはブッシュ大統領の国防長官として、米国の政策と軍事行動を主導したメンバーの一人です。スノーフレーク・メモは、この時期のラムズフェルドとその足下の国防総省内部の動きに新たな証言を加える、貴重な一次史料です。

スノーフレークとは

これらのメモは2011年にラムズフェルドの回顧録によりその存在と一部の内容が明かされたものの、国防総省が長らく開示要求に応じず、非営利団体National Security Archiveによる情報開示の訴訟によってこのたび初めて大規模な開示に至りました。

機密解除文書はその性質上、収集が断片的になりがちですが、幸いにもスノーフレークは大部分がまとまって管理されていたため、体系的な収集に成功しました。まずは当「パート1」のコレクションで、 2001年(1,193点)、2002年(2,679点)、2003年(2,400点)のメモを刊行します。近く「パート2」を刊行予定です。

スノーフレークは、冷戦以後の米国でもっとも重要な期間の国防長官、ドナルド・ラムズフェルドの関わったトピックスに関する、ほぼ1時間ごとの年表といえます。
9.11テロの衝撃から、対テロ戦争の始まり、ビンラディンの捜索、アフガニスタンでの長い戦争の始まり、イラクへの侵略と占領、ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官らホワイトハウスの職員やコリン・パウエル国務長官らとの内部紛争まで、当時のさまざまな問題についての証言を見出すことができます。
また、人事から食堂の管理まで、国防長官が扱ったペンタゴンの様々な内部情報についての文書も収録しています。スノーフレークと、それらへの軍および官僚機構からの応答は、当時の米国政府の最高レベルでの意思決定の過程を明らかにします。

当コレクションがカバーするトピックス

ペンタゴンの日常業務、国防総省の再編成の試み、部門間での共同性・連携を通じた米軍の近代化の試み、軍事予算の決定過程、予算抑制のための試み、軍事計画・調達・支出、9.11テロ、対テロ戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争の正当化、イラクへの侵略、核兵器、給付金・兵役期間・退役軍人など軍の給与の決定、米軍の情報機関、国土安全保障省やCIAとの関係、ラムズフェルドと国務省・国家安全保障会議との関係、NATOとの関係、ロシアをはじめ旧ソ諸国との軍事関係、ラムズフェルドとメディア・議会・市民との関係、グアンタナモ収容所の収容者・拷問、国際刑事裁判所における米国の戦争犯罪への責任追及に対する懸念、ビンラディンらテロリストの捜索、統合打撃戦闘機計画、海南島事件 など

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