吉川弘文館では、さまざまな史料集を出版してきました。なかでも、黒板勝美によって編纂された「新訂増補 国史大系」は、35年の歳月をかけた大事業であるとともに、日本史研究の根本史料として高い評価を得てきた、日本国内随一の史料集です。その「新訂増補 国史大系」がいよいよJKBooksシリーズとして刊行されました。刊行を記念して、「新訂増補 国史大系」の魅力を連載形式でご紹介します。
第1回は国史大系が日本の歴史の大きな縦の糸であるいう点を中心に、第2回はデジタル化の道のりについてご紹介しました。今回は最終回、「JKBooks新訂増補 国史大系」の魅力をご紹介します。
「新訂増補国史大系」全66冊を完全収録
新訂増補国史大系の収載書目は58書目にして、版面の頁数は約4万6,000頁、字数に換算すると約3,587万字に及びます。その膨大なデータをジャパンナレッジのプラットフォームでご利用頂けるようになりました。日本歴史の根本史料集を今まで以上に使いやすい形でご提供いたします。
99.99%の文字をテキスト化
前回ご紹介したとおり、最新の技術の初期認識によって、下駄の記号(〓)の数を大幅に減らすことができましたが、それでも認識できない文字が11,496字も残りました。これを吉川弘文館の社内校正によって潰していき、第4水準外の文字や、花押・印文など画像的な符号等々、どうしてもテキスト化できない文字は、延べ766箇所を残すばかりになっています。
この校正段階では、似通った文字だが意味はまったく違うというような、OCRの自動認識で間違えやすい漢字についても全て検査しましたので、極めて精度の高いテキストとして完成しています。
図:国史大系データ個別点検文字(誤りやすい文字)の一部抜粋
全文検索と見やすい画面表示
ジャパンナレッジLibでおなじみの検索機能によって、本文中の人名や事項等のキーワードで簡単に検索できるようになりました。また、ファセット機能を使って、書名や時代、ジャンルで検索結果を絞り込むこともできます。
表示される版面画像には、右脇に「目次」「書誌情報」「テキスト」が表示されます。版面画像と対照しながら、テキストを閲覧できるのでとても便利ですし、本文と頭注の込み入った体裁も見やすく処理されています。
『尊卑分脈』のテキスト化
組版がもっとも複雑な『尊卑分脈』ですが、電子書籍版(現在は販売終了)では系図の中の大きな文字で組まれた人名だけをテキスト化していました。今回の「JKBooks」では、人名の周囲に記載されている大量の個人の履歴等もすべて採取しています。
古代から中世にかけての代表的な氏族の系譜をまとめていますので、個別の伝記研究を初歩として、武士団研究のような一族の歴史、あるいは古文書の年代鑑定といった様々な分野で活用される重要史料の価値を存分に引き出していただきたいと思います。
利用価値の拡大
「JKBooks」は、膨大なPDFデータをパソコンで閲覧できるだけでも便利ですが、精度の高いテキストデータを検索することで、さまざまな研究に活用の幅が広がるはずです。
「新訂増補 国史大系」の完成から60年近く経ちました。この間、歴史・文学・法律など、それぞれの専門分野では「国史大系」を用いて詳細な研究が進められてきました。「JKBooks」によって、「国史大系」の日本史の根本史料という変わらない価値に加えて、 紙媒体の限界を越えた、分野を横断する広い視点から活用することで、新しい研究の扉が開かれることを期待しています。
おわりに
全3回にわたって、「国史大系」の魅力に迫ってまいりました。黒板勝美を中心とした編纂者や出版人たちの情熱を感じ取っていただけましたでしょうか。
思えば、第一次国史大系の刊行が始まったのは1897年のことであり、今年はちょうど125年目にあたります。図らずも、そのような年にリリースすることになった「JKBooks 新訂増補 国史大系」は、最新技術によって生まれ変わった利用価値の高いデジタルコンテンツであり、皆さまのご期待に応える充実した内容となっております。
これまでに発売した『ジャパンナレッジLibセレクトコンテンツ 国史大辞典』や『JKBooks人物叢書』とともに、日本の歴史および文化を研究する上で不可欠のコンテンツですので、是非ともご活用くださいますようお願いいたします。
参考文献
・坂本太郎・黒板昌夫編/皆川完一・山本信吉編『国史大系書目解題』上・下(吉川弘文館、1971・2001年)
・井野辺茂雄・丸山二郎「国史大系の編纂(一・二)」(黒板博士記念会編『古文化の保存と研究』吉川弘文館、1953年)
・黒板昌夫・斎木一馬・坂本太郎・丸山二郎・皆川完一・桃裕行・山田康彦・吉川圭三「〔座談会〕『新訂増補 国史大系』校刊の沿革(上・下)」(日本歴史学会編集『日本歴史』198・199号、1964年)
・坂本太郎「国史大系と黒板博士」「国史大系と丸山二郎氏」(『坂本太郎著作集11 歴史と人物』吉川弘文館、1989年)
・松島栄一「黒板勝美」(永原慶二・鹿野政直編『日本の歴史家』日本経済評論社、1976年)
・石井進「黒板勝美」(今谷明・大濱徹也・尾形勇・樺山紘一編『20世紀の歴史家たち(2)日本編 下』刀水書房、1999年)
・田口親『人物叢書 田口卯吉』(吉川弘文館、2000年)
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