これからの学び

朝読、紙でも電子でもOK―iPadで読む生徒が7割―【連載】ICTと学校教育

2017.06.19

聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)は昭和2年に旧制関東中学校として創立され、2017年に90周年を迎える伝統校だが、その一方タブレットや電子黒板を利用した取り組みに非常に力を入れているICT教育先進校でもある。2年前から1人1台iPadを配布する取り組みを開始し、学内にはwi-fi環境が完備され、ロイロノートをはじめTalknoteなど様々なアプリケーションを積極的に活用し、ほぼ全ての授業が何らかの形でICTに関わりを持っている。昨年7月には電子図書館サービスLibrariE(ライブラリエ)を導入。朝の読書運動(以下、朝読)や読書支援に利用している。

電子書籍は教育現場でどのように利用され、生徒はどのような感想を持っているのか。また、ICT教育の取り組みは生徒たちにどのような変化をもたらしているのか。
 
今回は聖徳学園の朝読の授業を見学させていただき、また先生方からICT教育にまつわる様々な取り組みについてお話を伺った。その内容を3回にわたって連載する。第1回は朝読の授業を紹介する。
 

朝読の授業 ―iPadで読む生徒が7割

朝読の時間になると、元気一杯に話していた中学1年1組の生徒たちが一転、静かに本を読み始めた。iPadで本を読んでいる生徒もいれば、紙の本を読んでいる生徒もいる。その割合はiPadで読んでいる生徒が7割、紙で読んでいる生徒が3割程度。ごく自然にiPadが朝読の授業に溶け込んでいる光景があった。
 

紙の本、電子書籍、思い思いに読む生徒たち

 
生徒たちは紙の本、電子書籍、どちらで本を読んでもよいことになっている。電子書籍は各自のiPadで聖徳学園の電子図書館サイトにアクセスし、自分専用のIDとPWを入力して借りることができる。図書館が開館するのは昼の12時からだが、電子図書館なら図書館が空いていない朝の時間帯でも本を借りられる。部活や勉強で忙しく、借りたり返却したりする時間がなかなか取れない生徒でも、気軽に本を読めるのがメリットだ。
 

聖徳学園の電子図書館トップページ。電子図書館サービス「LibrariE」を利用

 

朝読コーナーもサイト内に設け、生徒の本選びをサポート

 

生徒の反応は ―紙と電子、自分で使い分け

15分間の朝読が終了後、熱心にiPadで本を読んでいた男子生徒に話しかけてみた。読んでいたのは「記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方」(講談社ブルーバックス)。中1にしては難しい本を選んでいる。「最近物忘れが多いので読んでみたいと思った」と笑いつつ話してくれた。
 
どうして紙の本ではなく、タブレットで読んでいたのだろう。「いつもiPadで読んでいます。忙しくて図書館に借りに行く暇がないので…」とのこと。生徒によっては部活や勉強で忙しく、なかなか図書館に足を運ぶ時間がない子もいる。LibrariEの導入によって、図書館で本を選ぶ感覚で読みたい本を探し、読書を楽しむことが出来るようになった。
 

図書館の開いていない朝の時間でも、すぐに読みたい本を探して借りられる

これからどんな本が電子図書館に増えて欲しいか、聞いてみた。「役に立つ本が欲しいですね。小説とかじゃなくて、勉強になる本が良いです」と話す。電子図書館の利用統計を見ると、意外にも新書など勉強に関わる本が利用の半分を占めているという。電子図書館のトップページには、図書館司書お勧めの本が並んでおり、全ての本が書影つきで表示される。少し難しそうな本でも「読んでみようか」と思う効果があるのかもしれない。

人気の「科学の本」コーナー。生徒が読んでいた「記憶力を強くする」はこの特集に載っている。

多様な本との出会いを生んでいることが伺える

その一方で、紙の本と電子書籍を使い分けている生徒もいる。週に2冊は本を読むという、図書委員も務める本好きの生徒が(iPadで)読んでいたのは、ライトノベル「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」(SBクリエイティブ)。今日はiPadで読んでいたが、紙の本で読むことも多いという。「電子書籍だとかさばらないのはいいけど、紙の方が読みやすいです。今までずっと紙の本を読んでいたので、まだ慣れなくて」と話す。

紙の本を読んでいる生徒も3割ほどいる

 

聖徳学園の生徒はiPadに踊らされることなく、紙の本、電子書籍両方を自分自身で判断して使い分け、自分に合った媒体を選んで利用し、読書を楽しんでいるようだ。

 

(紀伊國屋書店 電子書籍営業部 荒川)

 

第2回に続く (次回:図書館司書・新倉晃先生に聞く、電子図書館導入の背景)