OCLC News 第74号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。
第74号はOCLC Researchが公開したオープンアクセス出版物の発見可能性に関する論文、IDEAに関する取り組みのご紹介です
目次
―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
OCLC Researchがオープンアクセス出版物の発見可能性に関する論文を公開
2024年10月21日 ティティア ファン・デル・ヴェルフ
学術図書館利用者のためのオープンアクセス出版物発見可能性の改善に関する研究報告書が公開されました。これは、学術的な査読付きオープンアクセス(OA)出版物を、図書館利用者がより発見しやすくするための戦略に関する研究です。調査結果は、オランダの7つの学術機関で実施された調査に基づいています。図書館スタッフにはオープンアクセス出版物発見に関する取り組みについてインタビューを行い、図書館利用者にはオープンアクセスに関わる経験について調査を行いました。これらの調査結果を統合すると、オープンアクセス出版部の発見可能性を改善する機会について新たな洞察を得ることができました。
OAは利用可能性から発見可能性へ: 橋渡しのために必要な事
“Improving Open Access Discovery for Academic Library Users” 表紙
私たちはUniversiteitsbibliotheken en Nationale Bibliotheek (UKB) および Samenwerkingsverband Hogeschoolbibliotheken (SHB) と共同で、OA出版物の発見可能性調査を計画・実施しました。このオランダの学術図書館コンソーシアム2団体は、当初からオランダの学術出版物の完全OA化に向けた前進に貢献し、現在もその活動を続けています。まさにOAへの転換の最前線にあり、OA出版に多大な投資を行ってきた彼らは、OA出版物の発見可能性を評価し、OAの利用可能性と発見可能性の間に生じているギャップに対処したいと考えるようになっていました。
このギャップは、2018-2019年のOCLC Global Councilによる世界中の図書館におけるオープンコンテンツ活動の調査結果によって初めて明らかになりました。その結果は、学術図書館の投資における不均衡を明確に表しており、オープンコンテンツの発見を促進することよりも、以前はクローズドであったコンテンツをオープンにすることに多くの労力が費やされていることを示していました。しかし、ほとんどの回答者は、後者も同様に重要であると回答していました。また注目すべきは、回答者のほぼ全員が、OCLCは図書館がオープンコンテンツを発見できるようにサポートする役割を担っていると回答したことです。これは、オープンアクセスエコシステムにおけるOCLCの役割の重要性に対する心強い認識でした。
2021年、オランダの学術図書館コミュニティとの一連の知識共有協議で、上記の認識されたギャップと、利用者の発見行動におけるOAの役割をよりよく理解する必要性が確認されました。その結果、UKB、SHB、OCLCは、学術機関の学生、教師、研究者、教授の期待や行動が、OAを発見しやすくするための図書館の取り組みにどのように反映されうるかを調査する調査研究を行うことを決定しました。これが、Open Access Discoveryプロジェクトの発端です。
OA発見環境の整備: 図書館が果たすべき役割
私たちが聞き取り調査をした図書館職員は、OA出版物を発見可能にするための複雑な状況が出現したと述べています。図書館員が最善と思われることを行う一方で、新規参入業者がその領域を熱心に開拓していたが、OA出版物は彼らの従来の業務プロセスにはなじみませんでした。OA出版物をコレクションに加え、利用者のワークフローに統合するためのガイドライン、ベストプラクティス、ベンチマークは存在しませんでした。全国的な協力体制や、機関が執筆したOA出版物のメタデータを作成し公開するための新しいプロセスは整っていましたが、図書館スタッフは出版物の寄託やメタデータの品質に関する困難に直面していました。
我々の聞き取り調査に参加してくれた図書館スタッフは、自分たちの努力が利用者に変化をもたらしているとは認識していなかったようですが、我々の報告書によれば、実際に変化をもたらしていることが明らかになりました。
図書館は利用者が最初に検索する場所ではないという彼らの考えは正しかったものの、図書館の検索ページは最も検索されたシステムのトップ3に入っていました。利用者の調査回答は、利用者が発見する過程においてOAが果たす役割について、やや混乱していることを示しています。回答者は、OA出版物を検索したりアクセスしたりするのがあまり簡単だとは思っておらず、半数近くがOAについてよく知らないと回答しています。しかし、全文アクセスに障害がある場合、ほとんどの回答者がOAに頼っていました。OA化は彼らの最初の検討事項ではなかったものの、OA出版物の量は川の下流に向かって増加しており、彼らの発見、アクセス、利用のプロセスに影響を及ぼしています。これらの知見から、報告書では次のような見解が示されました。
「図書館スタッフの働きかけや指導は、利用者のOA出版に対する認識を高めることに主眼が置かれていました。利用者は、このような新しいタイプの出版物の発見、評価、利用について、さらなる指導を必要としていました。」
オランダの図書館コミュニティへ報告書を紹介
報告書を手渡す筆者たち
イクシェル ファニエルと私は、2024年10月8日にオランダのアメルスフォールトで開催されたOCLC Contactdag (連絡会議) で、UKBとSHBの代表者に調査結果と主な成果を盛り込んだ最終報告書を提出し、喜びと誇らしさを感じました。Contactdagは、OCLCの戦略的方向性や製品開発に関する最新ニュースに関心を持つオランダの学術図書館や公共図書館の専門家が毎年集まる場です。また、実務や革新的なプロジェクトの成果を共有する場でもあります。
OAディスカバリー・レポートを紹介する短いスピーチの中で、私はオランダの図書館コミュニティにとっての主な収穫を次のように述べました。
「図書館がOA発見に投資する価値があるかどうか迷っているなら、答えは明らかにYESです!」
報告書の表紙はオランダのポルダー (干拓地) の風景写真で、私たちの研究の舞台であるオランダにちなんでいます。また、OA出版物を発見可能なものにするために必要な苦労を例えたものでもあります。ポルダーは、溝を掘り、ダムや堤防を築いて低地から水を抜くことによって作られます。私は聴衆に向かって、ポルダーと同じように「まだまだやるべきことがたくさんあります。OAはまだ未開の地であり、開拓しなければならないの です。座って見ている余裕はないの です!」 と話しました。
次のステップ: より賢明な協力体制を
Conductdag セッショングループ
OCLC Contactdagの午後のセッションでは、参加者は分科会で調査結果、課題、機会、次のステップについて議論しました。多くの参加者は、報告書に反映されているように、OA発見のジレンマを認識していました。彼らはまた、OA発見可能性を向上させるための戦略を練るために、調査結果を利用することに関心を持っていました。
何度も話題に上ったのは、協力の必要性でした。参加者は、分野別のOAタイトルの選定や、OA資料に対する利用者の認識を高めるために協力することが、もたらす潜在的なメリットについて議論しました。参加者は、機関メタデータの公開、メタデータのハーベスティングにおける協力、メタデータの質を向上させるためのOCLCとの提携について、実践方法を共有することを望んでいました。また、図書館のワークフローと利用者のニーズの両方にとって有効な探索メタデータを提唱するために、最近のダイヤモンドOA出版構想に、学内および全国的に、より深く関与することについても話し合われました。これらのアイデアは、OA出版からディスカバリーまで、関係者を超えた協力の必要性を示しており、私たちの報告書の最後の言葉と見事に一致しています。
「OA出版物の発見可能性を真に向上させるには、関係者全員がライフサイクルの中で他者のニーズを考慮することが求められます。」
報告書で、OA出版物の利用可能性と発見との間のギャップを埋める方法についてより詳しく理解しましょう。
https://oc.lc/oa-discovery
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続いては同じOCLC Researchのブログ「Hanging Together」で連載している包括性、多様性、公平性、およびアクセシビリティに関するシリーズから2回分 (2024年8月6日、2024年8月20日) をお届けします。
―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
IDEAの推進: 包括性、多様性、公平性、アクセシビリティ、2024年8月6日
メリリー・プロフィット
2024年8月6日
WebJunctionの新しい講座: デジタルコレクションへコミュニティ中心のアプローチ
講座のソーシャルプレビュー
WebJunctionの新しい無料オンデマンド講座「A Community-Centered Approach to Digital Collections 」で、包括的で公平なデジタルコレクションを作成する方法を見つけましょう。この講座では、相互支援と信頼に基づいた尊重し合える関係を築き、維持することで、コミュニティ内の多くの声や語り手の物語を表現することの重要性を強調しています。受講者は、多様性に富むコミュニティ中心のコレクションを開発するために不可欠な手法を学びます。それにより、コレクションにおけるギャップを認識し対処すること、過小評価されているコミュニティや十分なサービスを受けていないコミュニティを特定してつながりを持つこと、有意義なパートナーシップを育むことを指導します。また、コミュニティとの長期的な信頼関係を維持し、彼らの声が継続的に反映され、尊重されるようにするための方法も紹介します。
このコースは、デジタルコレクション管理シリーズを補完する7つのコースから成り、学習者が作成したコレクションが、コミュニティ内のあらゆる人々、グループ、組織をどのように代表しているのか、あるいは代表していないのかを考えるよう促します。このようなアプローチを採用することで、文化施設は、デジタルコレクションがそのコミュニティの豊かさと多様性を真に反映していることを確認することができます。したがって、このコースは、コミュニティ主導のエンゲージメントに取り組むすべての人にとって貴重な参照資源となります。
寄稿: デール ・マッセルマン
先住民の利益を認識する: 来歴メタデータによるデジタル配列情報のラベリング
生物文化ラベル
先住民族研究の公平性及びイノベーション調整拠点 (Equity for Indigenous Research & Innovation Coordinating Hub (ENRICH)) の政策概要は、他の文化遺産に使用されている伝統的知識ラベルを拡張するものです。遺伝子配列に関する情報(すなわち、デジタル配列情報(DSI))の作成がますます容易になる一方で、研究手法は、謝辞や帰属表示に関する先住民の期待とは合致しなくなっています。生物文化ラベル (BCラベル) とは、先住民コミュニティがデジタル配列情報に関心を持っていること、共同研究に前向きであること、あるいはその配列に関して先住民族が持つその他の情報と研究者を結びつけることができる可能性があることを研究者に通知するものです。この来歴データは永続的な識別子を持つため、ORCIDなど他のPIDを使用する知識グラフに先住民の情報を結びつける役割も果たすことができます。この来歴メタデータは、「DSIの共有におけるFAIR & CARE原則に対応」しています。
これは、伝統的知識ラベルを提供するLocal Contextsが以前行っていた業績の延長であるため、私の興味を引きました。遺伝子研究データ/RDMに特化しているように見えるかもしれませんが、自然科学博物館の物理的なコレクションは遺伝的生物多様性情報の情報源となることが増えています。標本は遠い過去に収集され、先住民コミュニティからの来歴情報 (あるいは関連するフィールドノートや、個別の図書館/アーカイブシステムで管理されている他の資料) との関連が失われている可能性があります。このような情報をより大きな知識グラフの一部として再構築することで、伝統的な情報に対するデジタル主権を行使することに関心のあるコミュニティと、これらの情報源を結びつけることができます。
寄稿:リチャード・J・アーバン
学校司書告発に関する調査
NBCニュースの報道『テキサス州グランベリーの学校司書を告発する2年にわたる闘いの内幕』の冒頭には、次のように書かれています。「法執行官は何カ月もかけて入念に証拠を集めました。彼は何千ページもの資料を読み漁り、大量の文書の中で重要な箇所を強調しました。目撃者や容疑者とのやりとりを記録するためにボディカメラを身につけ、彼が犯罪の道具とみなしたもの、「本」を撮影しました。」NBCニュースとダラス・フォートワース放送局NBC5が入手した824ページの調査ファイルに基づき、この報告書は 「人種差別、ジェンダー、セックス、セクシュアリティを扱った本に対する右翼の反感が引き起こす事態についての並外れた考察 」を提供しています。この事件は、「セックスやLGBTQの人々が描かれた本への子供たちのアクセスを制限しようとする保守派による全国的なキャンペーンの中で、図書館員を起訴しようとした試みについて、これまでで最も詳細かつ感情的な描写を提供」しています。最終的に、3人の匿名の学校司書は起訴されませんでした。
この詳細でぞっとする話は、憲法修正第1条の専門家によると、そのファイルに問題の本を借りた生徒の名前が含まれており、生徒のプライバシーの侵害であることも明らかにしています。スコット・ロンドン警視正補佐官はまた、司書が未成年者を犯罪の手助けに使ったことを証明するため、図書の配架を担当した学生ボランティアを特定しようとしました。もしそうなったとしたら、罪状は軽犯罪から重罪に引き上げられたでしょう。ロンドン警視正補佐官が有害と判断した本の中には、トニ・モリソンの1970年の小説『The Bluest Eye』も含まれていました。
寄稿: ジェイ・ワイツ
時間を包括的に考える
ブレア・マックイーン氏は、大学図書館協会(ACRL)のブログ「Toward Inclusive Excellence(TIE)」へ2024年7月10日に投稿した「学術図書館におけるクリップタイム」の中で、時間に関する規範的期待がいかに学術図書館におけるアクセシビリティの低さを生み出しているかについて述べています。マックイーン氏は、クリップタイムを「時間を理解して物事を進めるための非線形的方法であり、しばしば障害に伴う発作、挫折、疲労を考慮に入れている」と説明し、注意欠陥多動性障害(ADHD)の人が度々遅刻したり、慢性疲労の人が頻繁に病欠したりする例を挙げています。クリップタイムは、障害を持つ人たちにとっての時間に対する認識と要求、双方の差異を認めるもので、時差ぼけの人と同じタスクを実行する場合、しばしば「余剰時間」として現れることが多いものです。マックイーン氏は、短時間の休憩を頻繁に入れること、生徒が内容を理解できるようにプリントを提供すること、生徒が自分のニーズに合ったスピードと時間で学習できるよう、生徒が個別指導の予約を取ることを奨励し、彼女がいかに単発の指導セッションにおいてクリップタイムを考慮に入れて指導しているかを説明しています。
ADHDを持つ私は、これを表す用語や「クリップタイム」という言葉を耳にする以前から、時間盲を経験し、その対処法を学んできました。カレンダーのリマインダーやタスクリストといった複雑なシステムで失敗した時には、同僚たちに迷惑をかけたこともありましたし、「あと数分で着く」という約束が1時間も過ぎてしまった時には、夫に忍耐を強いることもありました。マックイーン氏の投稿は、彼女の経験に基づいて学術図書館に的を絞って述べていますが、クリップタイムについての理解不足は、図書館の利用者にとっても職員にとっても、私たちの職業において広く取り組むべき問題でしょう。遅刻の問題のように見えても、それは理解と配慮を必要とする隠れた障害の症状かもしれないのです。
寄稿: ケイト・ジェームズ
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―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
IDEAの推進: 包括性、多様性、公平性、アクセシビリティ、2024年8月19日
メリリー・プロフィット
2024年8月20日
禁書と先住民の児童文学
アメリカの公共放送、ナショナル・パブリック・ラジオのポッドキャスト番組「コード・スイッチ」のエピソード『名誉の印ではない: 図書禁止令が先住民文学に与える影響』では、図書禁止令が先住民の児童文学に与える影響について考察しています。インタビューに答えるのは、児童文学の専門家として高く評価されているデビー・リース博士です。リース博士は、先住民の子どもたちだけでなく、先住民の隣人、地域社会の一員、同胞についてより深く理解することで恩恵を受けるすべての子どもたちにとって、代表が大切である (自分と同じようなバックグラウンドを持つ人がロールモデルとなり、子どもたちに多くの影響を与えるので、代表となる人のイメージは大切だという考え) と説明しています。先住民の作家の本が発禁になるというだけで、すでにわずかではありますが、非常に重要な代表が排除されます。ハワイ人作家のヒナレイモアナ・ウォン=カルーは、その著書『カパエマフ』がヴァージニア州の図書館で発禁処分を受けたにもかかわらず、その問題にエネルギーを費やさない事にしました。「ハワイが私の本土です…ヴァージニアや他の州で何が起ころうとも、私にはコントロールできませんから」と述べています。
この例は、児童文学の重要性について有益な背景を示しています。私は、真偽を糺すリース博士の献身的な姿勢に長い間敬服しており、ウォン=カルーが彼女自身の著作において何が重要であるかに重きを置いていることに敬意と感謝の念を抱いています。
寄稿: メリリー・プロフィット
むかしむかしのおはなし: 幼い読者への支援
読書支援は長い間、公共図書館の中心的なサービスであり続けています。学齢期の子どもたちが学業の合間を利用して読書の練習をする夏期読書プログラムは、ほとんどの人にとってなじみのあるものでしょう。近年、COVID-19の大流行をはじめとするいくつかの要因による成績不振や読解力の低下が見られ、生徒たちはさらに遅れをとっています。一度遅れをとった生徒が追いつくことはめったにない、という研究結果もあります。公共図書館協会の2024年の会議では、図書館員たちが、他の公共図書館が同一、あるいは類似のプログラムを利用して、全米のより多くの地域で子供たちや家族に力を与えることができるようにと、奮闘する幼い読者を支援するために主催しているプログラムを紹介しました。これらのプログラムは、夏だけに限定されたものではなく、また一般的な夏の読書プログラムと同じ構成でもなく、在学中に支援が必要な生徒たちの格差を縮めるに役立っています。
私がこの記事に感銘を受けたのは、この2つのプログラムが、学習障害専門司書や早期学習スペシャリストといった肩書きを持つ司書にスポットを当てている点です。これは、公共図書館が、より高度な教育訓練を受けたスタッフによって、読み書き能力向上のためのプログラムを提供するサービスを拡大しているという重要な兆候です。学校や教師が過重労働と低賃金にあえぐ中、公共図書館に早期教育プログラム専門の職員が常勤していることは心強い限りです。教育へのアクセス不足は誰にとっても問題ですが、子どもたちが読書に遅れをとる時期が早ければ早いほど、将来成果が表れるのもそれだけ遅くなります。
寄稿: レスリー・A・ランガ
交差性 (Intersectionality) 啓発月間用の資源
交差性啓発月間である8月は、一人ひとりが複数の人口統計学的グループに所属している事への自覚という重要な概念が強調されます。Toward Inclusive Excellence (TIE) は 、ALAの大学図書館・研究図書館協会 (ACRL) が運営するブログで、あらゆるタイプの図書館が重要な考え方や取り組みについて情報を得るための資源をまとめています。TIEは、Resources for College Libraries (RLC) の協力のもと、『A Selection of Titles to Commemorate Intersectionality Awareness Month (交差性啓発月間を記念した選書タイトル)』として重要な資料を集め、多様 (diverse) で包括的 (inclusive) な教育機関の促進を支援しています。掲載されている16の資料は、ジェンダーや性的指向、人種や民族性、階級、能力・障害スペクトラムなどの社会的指標と、それらがどのように相互作用しているかを取り上げています。
この概念の基礎となる考え方は、アメリカ南北戦争以前から存在していましたが、「Intersectionality」という用語は、法学者のキンバリー・クレンショーが1989年にシカゴ大学リーガル・フォーラムで発表した画期的な論文『Demarginalizing the Intersection of Race and Sex: A Black Feminist Critique of Antidiscrimination Doctrine, Feminist Theory, and Antiracist Politics (人種と性の交差点を脱周縁化する:反差別の教義、フェミニスト理論、反人種差別主義政治に対するブラック・フェミニスト批評)』で初めて使われました。
寄稿:ジェイ・ワイツ
図書館の職場におけるニューロダイバーシティ (神経多様性) に関する調査開始
ワシントン大学情報学部 (OCLCシンボル: WAU) は、ニューロインクルーシブ (発達障害等を神経・脳の多様性として受け入れる) 職場調査への参加者を募集しています。2024年9月15日に締め切られるこの調査は、現在、または過去5年以内に学術図書館または公共図書館に勤務していたニューロティピカル (ニューロダイバージェント (=発達障害等を持つ人) 以外) の図書館員および図書館管理者を対象としています。これは、IMLS (米国博物館・図書館サービス機構) が資金を提供する研究プロジェクト「Empowering Neurodivergent Librarians (発達障害等のある図書館員に力を与える)」の次の段階です。このプロジェクトチームは、「インクルーシブな未来の図書館員を準備し、全国の図書館専門職における神経多様性のインクルージョンとエンパワーメントを全体的に改善するために」、米国の図書館とMLISプログラムのための研修資料を作成する予定です。
ワシントン大学情報学部は、以前のIMLS助成金の成果として、2023年にAutism-Ready Libraries Toolkit (自閉症対応の図書館ツールキット) を作成しました。これは、自閉症児とその家族にサービスを提供する公共図書館スタッフを訓練するための優れたオンライン資源です。今回のプロジェクトで作成される資源に期待するとともに、同情報学部が図書館における神経多様性について研究を続けていることを称賛したいと思います。
寄稿:ケイト・ジェームズ
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シリーズ:OCLCあの時この時 (6)
これもOCLC Newsletter?
このシリーズは1973年から2005年にかけて発行されていたOCLC Newsletterの記事を中心にご紹介していますが、今回はOCLCのアーカイブコレクション内のOCLCミュージアムにある、一風変わったOCLC Newsletterの話題です。
ロシア語のOCLC Newsletter
ご覧のように表紙にはOCLC Newsletterとはありますが、その他の部分はキリル文字となっています。訳すと「OCLC速報 “OCLC Newsletter”の抜粋刊行 1996 No. 1」と記載されているようです。モスクワのロシア国立公共科学技術図書館から 1997年に発行されたようです。
目次を見るとOCLC Newsletterのno. 219 (January/February 1996), no. 220 (March/April 1996), no. 221 (May/June 1996) からの抜粋訳である事が分かりました。
果たしてこれは定期的に刊行されていたものなのか?ですが、WorldCatには以下のような書誌レコード (OCLC #37359265) があります。上記画像の元となった冊子体からOCLCが作成したデータで、初号と最終号の情報不明ですので、この前後の号が刊行されたかどうかは定かではないようです。
また、OCLC #1406768387はOCLCのアーカイブコレクションにアップされている電子版のデータです。
英語版の同号の目次と比較すると、確かにいくつかの記事を抜粋してロシア語に訳している事が分かりました。
no. 219にはロシア国立公共科学技術図書館とOCLC Forest Pressがデューイ十進分類法の初のロシア語翻訳に関する契約を締結した話題が掲載されています。
「デューイ十進分類法第21版のロシア語への翻訳に関する契約が締結」の記事
no. 220では特集「FirstSearchとNetFirstを使用したWeb検索」が取り上げられています。
「FirstSearchとNetFirstを使用したWeb検索」の記事 (特集の一部)
no. 221にはロシア、アメリカ、ドイツの目録専門家がサンクトペテルブルクのロシア国立図書館に集い、ロシアの目録規則と英米目録規則第 2 版(AACR2)をどのように調和させ、書誌・典拠データの交換と利用を促進するかを検討する会議が開催された話題が掲載されています。
「MARCフォーマット問題に関するロシアの目録作成者会議」の記事
主に上記の記事の紹介用に作成された翻訳ではないかと推定できます。
1996-1997年頃といえば、チェチェンでの第一次紛争から停戦合意の時期になります。その後、現在に至るまでの状況は皆さんご存じの通り。ロシアにも図書館の相互扶助を理念とするOCLCサービス利用館が80以上あります。どの国の図書館関係者もそれ以外の人も安心・安全な世の中となる事を願ってやみません。様々な国のレコードがWorldCat内で場所を争うことなく同居し、リンクが広がっていくように、人間もこの星の中に存在できる日は来るのでしょうか。
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(紀伊國屋書店 OCLC事業部)