図書館をつくる

OCLC News 第54号

2021.10.19
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OCLC News 第54号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。

目次

  1. Tipasaの利用機関がますます増加中
  2. ―OCLCのリーダーたちが知見や経験を共有するブログ Nextより―
    図書館の活動を地球規模の課題へつなげる: どう始めるの?
  3. ILLリクエスト作成をシンプルにして利用増加
    ― SAE InstituteのWorldShare ILL導入の例から―

Tipasaの利用機関がますます増加中

Tipasa*WorldShare ILL契約に追加して利用するサービスで、図書館スタッフのみならず、図書館利用者も自らのアカウントでログインしてILLリクエストの作成や確認を行うことができるサービスです。
* Tipasaは2021年9月時点で日本では未提供のサービスです。

ここ数ヶ月で、20以上の図書館がTipasaを導入し、今や全世界で340以上の図書館がTipasaを通してILLを行っています。最近ユーザーに加わった機関には、以下があります。

  • インディアナ州バトラー大学 Butler University, Indiana (IIB)
  • サウスカロライナ軍事大学(シタデル) The Citadel, South Carolina (SCN)
  • インディアナ州デポウ大学 DePauw University, Indiana (IDU)
  • イースタンケンタッキー大学 Eastern Kentucky University (KEU)
  • ローガン大学 Logan University, Missouri (MU9)
  • ネヴァダ州立大学 Nevada State College (NEVST)
  • ニューヨーク州ナイアガラ大学 Niagara University, New York (VVN)
  • ニュー・ジャージー州ライダー大学 Rider University, New Jersey (RID)
  • ミシガン州スプリング・アーバー大学 Spring Arbor University, Michigan (EES)
  • カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院 UC Hastings Law, California (CUH)
  • サザン・ミシシッピ大学ハッティズバーグキャンパス University of Southern Mississippi (MUS)
  • サザン・ミシシッピ大学ガルフパークキャンパス University of Southern Mississippi, Gulf Park Campus (MLA)
  • オハイオ州ライト州立大学 Wright State University, Ohio (WSU)

上記のTipasaユーザーの図書館は、クラウドベースのTipasaで大量のILLリクエストを処理し、ルーチン作業を自動化し、図書館スタッフとユーザーに使いやすいインターフェースを提供しています。Tipasaはまた、図書館側の負担が大きいITサポートや、サーバ管理や、広範囲にわたる設定やトレーニングなしに図書館がユーザーのニーズに応えるのを助けます。

ローガン大学の最初のILLマネジメントシステムとして、Tipasaはより多くのスタッフがILL業務に携われるようにし、また図書館ユーザーに初めてILLアカウントを提供しました。ローガン大学レファレンス・Eリソース担当のシェリル・ウォルターズ(Sheryl Walters)は、カスタマイズ可能なタグ付け(tagging)やスタッフ注記がコミュニケーションを改善したこと、またユーザーたちがリクエスト管理を行えるようになり好評であることをコメントしました。

シタデルのサポート・コレクションサービススペシャリストのパメラ・キング(Pamela King)は、ILLシステム2つを含めて計6つの図書館システムの移行を経験したことがあります。

今回の移行は最も簡単でスムーズでした。どこにいてもリクエストを処理できるので、Tipasaは私の日々の業務を簡単にしました。他のスタッフは、Tipasaを使うとILL業務が楽しいので、ILL業務をしたがっています。図書館利用者に関しては、Tipasaの使い方のガイダンスはほとんど必要とされていませんでした。一度リンクが起動すれば、もうログインしてリクエストを作成していました。Tipasaへ移行したことは、ILLに関して行ったもののうち、ベストな決定の一つでした。

ライト州立大学リソースデリバリーサービス部門長のマット・シュレフラー(Matt Shreffler)は以下のようにコメントしています。

ILL業務を行うスタッフがわずかしかいない小規模な図書館としては、Tipasaの柔軟性やアクセシビリティに驚いています。Tipasaの使い方について経験値を得ながら、どのようにサービスを改善できるか考えるのを楽しみにしています。

Tipasaが貴館にどのような利益をもたらせるか、更に情報がほしい方は、OCLCにご連絡下さい。

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―OCLCのリーダーたちが知見や経験を共有するブログ Nextより―
図書館の活動を地球規模の課題へつなげる: どう始めるの?

クリスチーナ ロドリゲス

世界中の図書館のリーダーたちと一緒に仕事をしていると、組織の目標という点で興味深い矛盾が存在していることに気づきました。世界中の図書館は固有で、且つ多様なコミュニティにサービスを提供していますが、その仕事の核心部分では、非常に似通った視点と原則を共有しています。同様に、図書館は世界的な関心事に目を向けながら、ユーザーのニーズに合わせて戦略や戦術を調整することができます。地球規模の関心と地域の状況という異なったレベルの二者をどのように結びつけるかを探るのは、非常にやりがいがあり、時には面倒なことでもあります。

この1年間、私はOCLCグローバル評議会、及びOCLC Researchと協力して、そういった結びつきを調査してきました。2019年の秋には、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に注目し、図書館が地球全体の持続可能性により良く取り組めるように、図書館同士で、また外部の組織と連携するための枠組みとして、目標をどのように利用できるかの検討を始めました。

そこへCOVID-19が襲いました。世界中の図書館が、それぞれの地域で取り組まなければならない、まったく新しい共通の課題を抱える事となったのです。

COVID-19の課題に取り組む図書館の活動と、SDGsに取り組む私たちの活動の類似性を目の当たりにして、興味深くもあり、また触発されることも度々ありました。パンデミックは、図書館の種類や場所、規模にかかわらず、私たちが同様の問題を共有していることを示しています。同じように、SDGsは、図書館だけではなく、我々皆が直面している問題を反映しており、さまざまな要因にまたがる持続可能性を織り込んでいます。

OCLC グローバル評議会は、共通の課題をめぐって共に語り合うことの価値を理解しています。過去数年にわたり、OCLCグローバル評議会は、OCLC Researchと協力関係を結び、地球規模の図書館コミュニティが関心を持つ分野に基づく調査を依頼してきました。2020年のテーマは 「Global Perspectives on Discovery and Fulfillment (発見と充足のためのグローバルな視点)」でした。その前の年は「Open Content Activities in Libraries (図書館におけるオープンコンテンツへの取り組み)」でした。今年SDGsを選んだ理由は、図書館が世界中で教育を推し進め、公平性を高める道筋を計画するのに有益な素晴らしい枠組みをSDGsが提供しているからです。

地球規模の目標へつなげる

SDGsは全部で17項目ありますが、OCLCグローバル評議会は、国連が「a shared blueprint for peace and prosperity for people and the planet, now and into the future (現在そして将来にわたる、人類及び地球の平和と繁栄のための共通行動計画)」と呼んでいるものを中心に、図書館同士が交流し、意思疎通する機会が最も多く提供できると考えられる以下5つの目標を選びました。

  • 質の高い教育をみんなに (SDG 4)
  • 働きがいも経済成長も (SDG 8)
  • 人や国の不平等をなくそう (SDG 10)
  • 平和と公正をすべての人に (SDG 16)
  • パートナーシップで目標を達成しよう (SDG 17)

これに関する話し合いや進捗状況共有を支援するために、OCLCは昨年、SDGsに関する5つのウェビナーを開催しました。これらのウェビナーでは、世界中のメンバーリーダーが参加し、持続可能性の目標に向けた取り組みをどのように始めたのか、学術図書館や公共図書館の具体的な事例などのトピックを取り上げています。

これらのプレゼンテーションは、あなたの図書館が持続可能な開発計画のどの段階にあったとしても、貴重なアドバイスと洞察を与えてくれます

図書館とSDGs-私たちの研究成果

現在の図書館におけるSDGsへの認識と図書館計画におけるSDGs利用状況をよりよく理解するために、OCLCグローバル評議会とOCLC Researchは世界的調査を行い、1,721名の図書館関係者から回答を得ました。内訳は、アメリカ大陸の16カ国から1,125名、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)の63カ国から448名、アジア太平洋の20カ国から148名です。その結果の概要はこちらです。

このレポートから得られた重要な発見のひとつは、回答者の大半が国連SDGsについてある程度知っているものの、アジア太平洋地域(APAC)とヨーロッパ・中東・アフリカ地域(EMEA)の図書館員は、少なくともある程度知っている割合がアメリカ大陸(AMER)の図書館員に比べて、著しく高いということです。

これは、アメリカや世界各国の同僚とSDGsについて議論した私自身の経験とも一致するものです。このプロジェクトを始める以前、私はEMEAやAPACの多くのメンバーと比べてSDGsについてあまり詳しくありませんでした。

また、図書館計画にSDGsを取り入れている頻度や、関連活動で最も重要なものは何かについても調査されています。

しかし、なぜあなたの図書館が興味を持ち、参加しなければならないのでしょうか?

共通の目標とコミットメント

レディング大学図書館長であるスチュワート・ハント氏は、最近のブログ記事で次のように述べています。

戦略的な変革が意味するものとは、私たちがサービスを提供している人々、組織、コミュニティが重要と見做している具体的結果に基づいて、努力を向ける方向を決定することです。外部目線で言うと、図書館関係者内で、または他の産業や地域で広く共有されている目標を取り入れて考えるのに役立ちます。例えば、多くの図書館やパートナー組織は、国連の戦略的開発目標(SDGs)に合わせて計画を立てています。他の図書館や組織がSDGsをどのように利用しているかをよりよく理解することは、あなたの計画が変革をもたらし、外部との関連性を保ち、より戦略的なものであり続けるために役立ちます。

全く同感です。私たち図書館員がこのような全世界で共有されている目標を使って戦略的計画を立てることができれば、他の図書館や多くのパートナー組織で行われている考え方や作業を活用することができます。

SDGsを今日から始めるには

COVID-19のパンデミックの下で、利用者の基本的なニーズを満たすため、図書館員には迅速な戦略の変更や多くの激務が課せられました。世界的なパンデミックはこれまでも、そしてこれからも非常に困難なものですが、個々の図書館、グループ、パートナー組織が協力して問題を解決していく様子には元気づけられてきました。

同様に、多くの図書館がその地域ですでに行っていることとSDGsの間には、自然な共時性があります。これらの世界的な指針が利用者固有のニーズと交わったところでは、図書館の計画とパートナーシップをより成功に導かせるような共通の発想、目標、ツールが得られるのです。

地域の図書館活動とSDGsを明確な結びつけを始めれば、図書館がいかに世界的に役割を果たしているか、私たちが共有する未来にとって不可欠な分野で重要な貢献をしているかを、利用者やコミュニティに理解してもらうことができます。このようなローカルからグローバルへの計画は、現在のパンデミックの問題をはるかに超えています。そしてこの計画を実行に移すために、メンバーの皆様やより広い範囲の図書館関係の皆様と協力できることを楽しみにしています。

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ILLリクエスト作成をシンプルにして利用増加
― SAE InstituteのWorldShare ILL導入の例から―

アメリカのフロリダ州に本拠地を置き、1976年に設立された SAE Instituteは、世界23ヶ国に50以上のキャンパスを持ち、音響エンジニアリング、CG、グラフィックデザイン等に関する教育を提供しています。所蔵コレクションの99%以上がデジタル媒体ですが、ごくわずかに紙媒体の資料も所蔵しています。コロナ禍に伴うロックダウンの初期に、デジタル資料キュレーターのクリストファー・パロ氏(Christopher Paroz)は、裏側で図書館スタッフがどのような方法を取るにせよ、学生が紙媒体の資料のスキャンを簡単に取り寄せられる方法が必要だと考えました。

他社製品を含めたシステムの調査を行った所、他の図書館の多くがユーザーにとってはわかりづらい”予約リクエスト(holds request)”という機能を使っていることがわかりました。実物を貸借したり、スキャンPDFを取り寄せる方法がいくつもあってわかりにくいと、ユーザーに敬遠されてしまうと思いました。

パロ氏とスタッフは、WorldCat® Discovery(WCD)とともにWorldShare® Interlibrary Loan(WSILL)の導入に取り掛かりました。WCDにおける資料の利用可否やインターフェース上の言葉遣いをわかりやすくし、ILLリクエスト送信フォームをカスタマイズすることにより、「コピーを入手(get a copy)」ボタン一つであらゆるILLリクエストを作成できるようになりました。

セットアップが完了した後、パロ氏は図書館スタッフへのトレーニングもまた簡単であったと述べています。

我々の新たな統合されたリソースシェアリングサービスは、ほとんど同じシステムを使っている4つのシンプルなワークフローを統一しました。スタッフたちはあっという間にプロセスをマスターし、ILLモジュールが既に機能していたので導入もすぐに終わりました。WCDへの切り替えも、スムーズに終わりました。

結果として、デジタル化リクエストが一夜にしてなんと450%も増えました。

利用者は、どの紙媒体の資料のコピーでも、また自館でそれを所有していてもいなくても、ILLモジュールを通してリクエストすることができます。いくつもあるリクエストフォームの中でどれが最適か考えたり、裏側で図書館スタッフがどのような手段で取り寄せるか考えたりする必要はありません。リクエストボタンを押すだけで良いのです。

WSILL導入は利用者と図書館スタッフの皆に恩恵をもたらしました。図書館スタッフは図書館資料がより活用されるようになったことを喜び、学生は使いやすさを気に入り、教員は学生たちが図書館資料をより参照するようになったことに感謝しています。また学校側も、図書館資料の利用増加と革新的なソリューションの双方に驚いています。

WSILLに関する詳しい情報は、こちらをご覧下さい。

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(紀伊國屋書店 OCLC事業部)


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