新しいオープンアクセスモデルにより2023年刊行の全てのコンテンツが自由に利用可能に
2022年4月5日(火)(米国太平洋夏時間)、大手非営利学術出版社Annual Reviewsは、今後18ヶ月の間に、Subscribe to Openという新しいモデルのもと、全51タイトルの学術雑誌の2023年巻号を誰でも自由に利用可能とすることを発表しました。これらの学術雑誌は、天文学、環境科学、ゲノム科学、海洋科学、公衆衛生、社会学など、科学分野全般を扱っており、高い被引用数を誇ります。
2021年にAnnual Reviewsは、144,000以上の研究発表から情報を纏め、1,200のレビュー論文を出版しました。Annual Reviews の代表取締役社長兼編集長であるリチャード・ギャラガー氏は、「それぞれの論文は、あるテーマに関する現在の理解を捉え、科学の未来を描くのに役立つ知識の宝庫であり、どこに住んでいても、どこで働いていても、すべての研究者や学生が利用でき、さらに政策立案者や活動家、企業や労働者、医師や患者など、より多くの人々が利用できるようにすることで、研究に基づくより迅速で包括的な社会の進歩に貢献することができる」と語ります。
Subscribe to Openは、あらゆる分野の読者と著者に、オープンアクセスへの即時、透明、かつ公平な転換を提供します。このモデルでは、既存の購読機関に雑誌の購読をご継続いただき十分な支持が得られた場合に、それぞれの最新号がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとでオープンアクセス出版されます。購読数が必要数に達しなかった場合は、引き続き年間購読料金を支払った購読機関に所属するユーザーのみがアクセス可能となります。
アイオワ州立大学図書館副館長・学術コミュニケーション・コレクション担当のカーティス・ブランディ氏はこのモデルについて次のように解説しています。「Subscribe to Openモデルは、図書館がその価値観に沿ったコレクション支出を行うことを可能にします。それは著者と読者の双方に公平性を提供します。論文掲載料(APC:Article Processing Charge)を利用するオープンモデルでは、支払いが困難な著者の眼前に障壁をもたらします。Subscribe to Openはこの問題をエレガントに回避し、すべての人に公平な解決策を提供します。」
過去の試験導入において、ちょうど4月5日に2022年巻号が刊行となった「Annual Review of Public Health」では、有料アクセスの時と比較して利用数が8倍に増加しました。2020年に、新型コロナウイルス感染症の大流行を受けて、Annual Reviewsは一時的に全タイトルへのアクセスを開放しました。その結果、すべてのジャーナルで読者数が大幅に増加し、平常時の4倍以上を記録しました。このような実際に生じた影響から、同社は全タイトルでSubscribe to Openの導入を進めることになったのです。
ノーベル生理学・医学賞受賞者でカリフォルニア大学バークレー校の分子細胞生物学教授であるランディ・シェクマン氏は、「Annual Reviewsがフルオープンアクセスモデルに移行することは、世界中の研究者に大きな利益をもたらします。Annual Reviews誌の元編集者として、またeLifeの創刊編集長としてオープンアクセスを推進する私は、彼らの持つ全分野の学識を誰もが利用できるようになることを嬉しく思います。」とコメントしています。
ローレンス・バークレー国立研究所のエネルギー技術分野の主任研究員であり、Annual Review of Environment and Resources(同誌は既にSubscribe to Openによるオープンアクセスを試行中)の共同編集者であるアショク・ガドギル氏は、「現在、地球そして我々の種が直面する最大の問題に関する最先端のレビュー誌であるAnnual Review of Environment and Resourcesは、誰でもどこでも無料で閲覧できるようになりました。最高の科学に厳密に根ざした政治的中立な視点から、私たちが共有する課題を深く理解する機会をすべての人に提供しています。」と述べています。
このニュースは、2022年4月5日(火)午前8時(米国太平洋夏時間)に開催されたイベント「Subscribe to Open Developments from Annual Reviews」でメディアに発信されました。パネリストは以下の通りです。
- トレーシー・L・メアレス氏(イェール・ロー・スクールのThe Justice Collaboratory創設者でありウォルトン・ヘイル・ハミルトン法学教授、Annual Review of Criminology共同編集者)
- カーティス・ブランディ氏(アイオワ州立大学図書館副館長・学術コミュニケーション・コレクション担当)
- リチャード・ギャラガー氏(Annual Reviews代表取締役社長兼編集長)
モデレーターは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ヤング・リサーチ・ライブラリー司書、Annual Reviews業務執行委員であるバージニア・スティール氏が務めました。パネルディスカッションの模様は、こちらからご覧いただけます。自動翻訳ですが日本語字幕を設定でお選びいただけます。(2022.04.08更新)
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(紀伊國屋書店 雑誌部 江崎)