Wiley Digital Archives – The Royal Geographical Society (with IBG)の収録コンテンツをとりあげながら、地理学者や地理的発見、探検に対するトピックをご紹介する連載の最終回です。
前回までの連載記事:
Wileyサイト:https://www.wileydigitalarchives.com/rgs/
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エベレスト探検
活用分野
探検、エベレスト遠征、ネパール、中国、地政学、地理学、地図製作、文化人類学、環境研究、写真、気象変動、西欧の脱植民地化
歴史的背景
世界最高峰の山、エベレストはヒマラヤ山脈の頂に位置し、ネパールと中国の国境が山頂を通っています。この地を調査するために、1921年に初めて英国遠征隊が結成されます。この遠征隊は、地図を製作し、頂上へのルートを発見することを目的とし、新たに設立されたエベレスト委員会(Mount Everest Committee)による資金提供を受けました。20世紀初頭、頂上を目指して複数回にわたる遠征が行われましたが、医学的な問題、疲労、酸素不足、未経験、そして死にさえ直面しました。
Various Newspaper Cuttings and Photographs, 1924 Expedition.” Everest Expeditions, 5 May 1921. Wiley Digital Archives.
人
エドモンド・ヒラリー(Edmund Hillary)は、エベレスト山頂に人類で初めて到達したとされています。
Gregory, Alfred. “Full Length Portrait of Hillary and Tenzing.” RGS Images Online, 1 Mar. 1953. Wiley Digital Archives.
ヒラリーが有名な理由
1953年に第九次エベレスト遠征隊が発足、ヒマラヤ委員会(Joint Himalayan Committee)より資金提供が行われました。ウィルフリッド・ノイス(Wilfrid Noyce)とアヌル(Annullu)が既にサウスコルを踏破しており、このサウスコル経由で頂上を目指すべく、チャールズ・エヴァンス(Charles Evans)、トム・ボーディロン(Tom Bourdillon)の各々が率いる2つの登山隊が結成され、初登頂を目指して出発しました。彼らは無事南頂には到達しましたが、装備の関係でそこで撤退せざるを得ませんでした。
その2日後、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイ(Tenzing Norgay)が第二陣として登頂に挑み、酸素ボンベの力を借りて1953年5月29日に初登頂を果たします。彼らはサウスコル経由のルートを使いました。頂上でのわずかな滞在の間に、彼らは写真を何枚か撮影し、雪の下にお菓子を埋めました。
数年にわたり、この偉大な成果に対して世間を悩ませた1つの疑問は、実際には二人のどちらが先にエベレスト山頂に到達したかということでした。長い思索の後、テンジンがエドモンド・ヒラリーであると断じ、その結果ヒラリーが実際にエベレスト山頂に初めて到達した初めての人類であるとされ、その業績により後にナイトの称号を得ました。
ヒラリーとテンジンの成功はエベレスト遠征隊の初結成から32年後で、以降、何千人もの人がこれに続きました。
王立地理学会アーカイブに含まれる関連コンテンツ&特別コレクション
地図、手稿、歴史的な写真、探検報告、世界中の偉大な探検家の個人所有物、エドモンド・ヒラリー、テンジン・ノルゲイ、ジョージ・マロリー(George Mallory)、チャールズ・ブルース(Charles Bruce)、エドワード・ノートン(Edward Norton)、モーリス・ウィルソン(Maurice Wilson)の旅行関連資料、遠征のための装備(例:様々なエベレスト遠征で使われた酸素ボンベセット) 他
“Mr. Samuel Turner (New Zealand Alpinist).” Everest Expeditions, 1 July 1924–27 Aug. 1925.
“Mt. Everest Postcards.” Everest Expeditions, 1924–1980.
“Oxygen Apparatus.” Everest Expeditions, 28 Feb. 1922–24 Feb. 1927.
英国王立地理学会アーカイブについて
Wiley Digital Archves – Royal Geograhical Society (with IGB)アーカイブは地理学関連の思索のあらゆる側面をとりあげ、協会図書室の資料を、膨大なアーカイブ資料や地図コレクションと共に収録します。10万以上の地図・海図に加え、手稿、フィールド記録、書簡、描画、写真、パンフレット、世界地図、地名辞典、その他の出版物や未刊行資料を含みます。
本アーカイブは、地理学が歴史、探検、植民地主義、外交政策、天然資源、文化研究、文化人類学、民族学に与えたインパクトに焦点をあてます。研究者は最初期の地理的な素描から、1486年から20世紀にかけての地図・海図、そしてさらに世界地図や地名辞典を含む世界最大の地図・海図のプライベート・コレクションの1つを探求することができます。本アーカイブに含まれるコレクション群は、学際的な調査や教育に新たな道を拓くと共に、世界で最も重要な地理学アーカイブの1つを保存する役割をも担っています。
(資料提供Wiley)