自然科学

Wiley Digital Archives – 英国科学振興協会による科学史コレクション-科学の職業化

2021.02.22
baas

はじめに

我々が抱くビジョンは、科学が文化と社会の中核を担う世界である

Our vision is of a world where science is at the heart of culture and society

British Science Association

英国科学振興協会による科学史コレクション(1830年代~1970年代)ワイリー・デジタル・アーカイブのご案内

The British Association for the Advancement of Science (BAAS, 英国科学振興協会) は、1831年に創設されました。その目的は、それまで富裕層によって自助的に取り組まれていた科学を、社会的経済的発展の中核として政府の財政支援を受けるプロフェッショナルな活動へと転換させることでした。本アーカイブは、ダーウィンからラムゼーまで、それぞれの時代に最も影響力を持つ科学者たちの業績、思索、相互作用を関連づけ、1830年代から1970年代までのイギリスの科学史を分野と大学を横断して記録したものです。

Wiley Digital Archives – BAASアーカイブは、著名な英国大学の豊富な資料により補完されています。今まで、このたぐいまれなアーカイブの90%以上が電子化されていませんでした。本アーカイブには、科学的発見の150年、科学の中心地としての英国の台頭についての資料が収蔵され、研究者にとって非常に貴重な内部からの視点を提供しています。

本稿より複数回にわたり、現代科学の形成に至る道のりを、その節目を示すアーカイブ中の資料とともに読み解きます。
英国科学振興協会による科学史コレクション (1830年代~1970年代) デジタル・アーカイブについての詳細は、以下サイトをご参照ください。

科学の職業化

活用分野

科学の進歩、神学、発展、政府、再開発、科学史、協会の創設、科学の職業化

歴史的背景

英国の協会は自らをBAASと呼ぶことによって、当初より他の学術的協会、特に王立学会 (Royal Society) とは根本的に一線を画す組織を目指してきました。科学史家、ジャック・モレルはBAASを「科学の職業化を目指した初の国家的圧力団体」と表現しました。

1830年の英国では、科学は富裕層の個人により支配され、宗教や神学を通して科学的世界が捉えられることもしばしばありました。1830年、チャールズ・バベッジは「英国における科学の衰退」を示した論文を発表しました。物理学者でBAASの創設者の1人であるデビッド・ブリュースターは、この論文について「自分が知る中で最も辛いテーマ」で「何か効果的なことを行うときであり」、「英国の科学復興のために協会を設立すべきである」とバベッジに書き送りました。

こうして1831年、BAASは創設されました。英国科学界は、科学を富裕層の娯楽から組織だった中核へと変貌させ、知識の共有、庶民の教育、科学の振興に尽力しました。

printed material

“Printed Material for the 1924 Annual Meeting, 1923-1924.” Archive of the British Association for the Advancement of Science, 1923–1924. Wiley Digital Archives.

オリバー・ロッジ(Sir Oliver Lodge )

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Lodge, Oliver. Photograph of Sir Oliver Lodge Together with the [Original] Negative and a [Modern] Print Taken from the Same. 1930. Wiley Digital Archives.

ロッジが有名な理由

英国の物理学者で著述家のオリバー・ロッジ(1851年~1940年)は、リバプール大学の物理学科初の教授で、無線電信の発展に寄与したことで名を馳せました。コヒーラと呼ばれる電波で送信されたモールス符号の検波器を完成させ、印字機で紙に書き起こせるようにしました。

大衆を対象とする教育者の第一人者としても記憶され、ロッジの講義と芝居がかった実験のデモンストレーションは、ときに非常に多くの人々の関心を集めることもありました。ロッジがいくつかの地方団体の会員であったのは、彼の心霊的かつ政治的な信念が様々な背景、社会階級にある多くの人々との出会いをもたらしたからです。彼が執筆した刊行物は1500を超え、毎週行った講義で大衆とふれあい教育を実践するという努力により、史上初の優れた科学コミュニケーターの一人として有名になりました。1915年、第一次世界大戦中に一番下の息子が戦死し、晩年はアーサー・コナン・ドイルと共に心霊主義および心霊現象について熱心に調査し、著述するようになりました。

英国科学振興協会アーカイブに含まれる関連コンテンツ&特別コレクション

1912年までの学生時代のノートなどを含む実験ノート30冊、写真、ルーズリーフ・ノート 、印刷資料、ロッジ、デイビーズ、フィッツジェラルドなどとの書簡。

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Lodge, J. Oliver. Physical Notebook No. 1. 1870–1872

Photographs of Sir Oliver Lodge

Sir Oliver Lodge, Sir Oliver Lodge, [1933-1936]

Autograph manuscript notebook

Lodge, Oliver. Autograph Manuscript Notebook. 1885–1886

Autograph letters

Lodge, J. Oliver. Autograph Letters Form Lodge to an Unknown Correspondent, Dated 6 and 10 Feb 1896 from Liverpool, on the Use of Phosphorescent Substances in an Experiment. 6–10 Feb. 1896

(資料提供Wiley)

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