人文社会系研究

創立60周年のSIPRI、核軍縮に逆行する現状を分析:SIPRI Yearbook 2026

2026.07.28

シプリ年鑑2026年版の刊行は、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の創設60周年に当たります。

国際平和と安全保障のために紛争や重要な協力体制の問題に関する科学的なリサーチを行い、国際紛争の平和的解決についての理解に貢献することを使命として1966年に設立されたSIPRIは、世界の平和研究の最前線で独立かつ中立を保つ研究機関としてその役割を担ってきました。

過去60年間、冷戦時代の超大国の対立、ソビエト連邦の崩壊がもたらした米国による単極秩序、2001年9月11日を契機としたテロとの戦い、そしてこの10年間、国際安全保障政治の中心的力となる大国間競争の復活といった時代を通じ、SIPRIは世界各国の軍事動向を分析した報告「SIPRI年鑑」を毎年刊行しています。
地球規模の紛争、国家間の紛争に対処する平和活動についての幅広い研究に加え、新ミレニアム以降、SIPRIの研究調査は気候変動や食糧安保なども含む広範囲の人間の安全保障に関わる問題も対象とするようになりました。

シプリ年鑑2026年版に寄せて

直近の10年間は国際的な戦略環境が根本的に変化した。現在の大国間競争という局面においては二つの推進要因が挙げられる。すなわち技術先進国間の大規模な紛争とアメリカ合衆国の同盟体制の衰退である。
ロシアのクリミア併合とウクライナ侵攻はポスト冷戦時代のヨーロッパの東西分裂の再来をもたらした。同時に、中国の台頭と米国との国家間競争は激しさを増し、グローバルなパワーバランスを変容させている。これらに加えて、世界的な核秩序を支える三つの基盤が崩れ、核不拡散体制は危機に瀕しており、軍事技術の急速な進展により国家間の競争が激化している。

今後の平和研究の課題は、以下の4つの大きな枠にまとめられるだろう。すなわち、超大国間の競争の鎮静化、先端技術や地政学的な変化に応じた新たな軍備管理の枠組みの構築、人間の安全保障を脅かす紛争の要因についての理解と対処、そして将来の戦場や新たな軍事技術の影響を予測し備えることである。
平和研究は、局限的な方向すなわち狭義の国家安全保障の問題にのみ取り組むことや防衛研究に埋没すること、「ハード・セキュリティ」を優先するあまり人間の安全保障問題を捨て置くことといった方向へと引き込まれることを避けなくてはならない。平和研究は、独立した総合的な学問分野として維持される必要があり、その目的は単に紛争を研究することにとどまらず、敵対関係や衝突を安定化させ、最終的にはより持続的な平和の形を支援することにある。

(SIPRI所長カリム・ハッガグ氏によるSIPRY YEARBOOK 2026 Summery 巻頭の”REFLECTIONS ON THE CHALLENGES OF SYSTEMIC DISRUPTION AND THE FUTURE OF PEACE RESEARCH”より抄訳  )

2026年版(第57版)には2025年のデータが含まれています。

  • 世界全体および各地域の武力紛争と紛争管理、和平プロセス、平和維持活動の概要
  • 軍事費、国際武器移転、武器生産の動向、とくに世界的な安全保障体制の崩壊による影響の検証
  • ミサイルおよび無人航空機の拡散と武力紛争における利用拡大
  • 核保有9カ国における核戦力の最新化。核軍備管理については、中国、ロシア、米国間の対話や多国間フォーラムでの協議、12日間の戦争中にイランの核・軍事インフラに対して行われた一連の軍事攻撃
  • 通常兵器の管理および非人道的兵器の規制、化学・生物兵器使用に関する調査と禁止に向けた法的仕組
  • 自律型兵器システムに関与する人工知能、サイバースペース、宇宙安全保障の国際的ガバナンス
  • デュアルユースの技術と製品および武器貿易の管理、武器貿易条約、多国間の武器禁輸措置、輸出管理体制の動向ならびにこれらの管理に関する欧州連合(EU)の法的枠組みを検証

 

 

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シプリ年鑑(2026年版)

(紀伊國屋書店 学術洋書部)