2024年1月10日に、JKBooks「Web版史料纂集第2期」がリリースされます。これを記念して、リリース2カ月前の2023年11月10日に、四国大学石井悠加先生、八木書店柴田氏・佐藤氏を迎え、図書館総合展でフォーラムを開催しました。
本連載では、上記フォーラムの内容の一部を編集、抜粋してお届けしています。第2回は「史料纂集」・「群書類従」の版元である八木書店・佐藤氏より、Web版の使い方とメリットについてご紹介いただきます。
なお、上記フォーラムの動画はこちらよりご視聴いただけます。前回の記事はこちらです。
【佐藤 早樹子氏】
株式会社八木書店出版部。大学院博士課程にも所属。専門は日本古代史。ジャパンナレッジ版「史料纂集」開発担当者の一人。学術出版の編集者と日本史の研究者、 両方の視点と専門的知見から編集、開発に携わっている。
「史料纂集」、待望のデータベース化
続きまして、ただいまご説明いたしました「史料纂集」と「群書類従」のWeb版について、使い方とそのメリットをご説明させていただきます。
これまでに、「大日本史料」、「大日本古記録」、「国史大系」といった日本の歴史・文学の研究に必須の資料は、既に研究機関やジャパンナレッジでデータベースが公開されております。「群書類従」も、2014年にジャパンナレッジにてデータベース化をいたしました。
ところが「史料纂集」はこれらと並ぶ重要シリーズでありながら、長らくデジタル化が実現していませんでした。それが今年、ようやく満を持して初のデータベース化をしたものが「Web版史料纂集」です。「Web版群書類従」と同じくジャパンナレッジの1コンテンツとして、他のJKBooksやジャパンナレッジLib収録コンテンツとの連携が実現し、より高度な文献調査がオンラインで手軽にできるようになりました。
また、フルテキストデータでの検索により、専門研究からレファレンスまで幅広く対応することも可能になりました。では、より具体的に、Web版では何ができるのか、どんなメリットがあるのかをご説明いたします。
Web版の検索機能
「Web版史料纂集」の検索機能
こちらは、ジャパンナレッジでの「Web版史料纂集」の検索画面イメージです。
上部の赤枠で囲った部分が検索ワードを入力する部分です。AND/NOT検索や、複数条件での検索も可能です。青枠で囲った部分には、検索語句を含むページが、書名、記事の年月日といった情報とともに一覧表示されます。このとき、検索語句の前後を含むテキストがスニペット(本文の一部分のこと)表示され、ヒットした語句は黄色くハイライト表示されます。
さらに、検索は様々な条件で絞り込むことができます。「Web版史料纂集」の場合、オレンジの枠の部分では、記事の年月日で細かく絞り込むことができます。もう少し大雑把な区分で絞り込みたいという場合は、緑色の枠の部分で、時代ごとに絞り込めます。紫の枠の部分では収録書名で絞り込むこともできます。
「Web版群書類従」の検索機能
続いて「Web版群書類集」の画面です。検索語句の入力や一覧表示については「史料纂集」の場合とほぼ同様です。
大きく異なるのは、左側の絞込み条件です。「Web版群書類従」では、オレンジの枠の部分で「群書類従」に収録された資料のジャンル、緑色の枠の部分で、冒頭でご説明しました3種類のシリーズで絞り込むことができます。
Web版のメリット―横断検索、閲覧画面
横断検索
こうした検索によってどんなメリットがあるかといいますと、語句の用例を迅速に収集できる、ということが挙げられます。
データベース化以前は、何百冊もの本をすべてその手でめくらなければならなかったのが、Web版の登場により、ものの数秒で、しかも様々な絞込み条件も付け足しながら、調べられるようになりました。そうすると研究のスピード、研究環境そのものが、それまでと劇的に変化するということが言えるでしょう。
閲覧画面
また、Web版の検索結果は一覧表示で終わりではありません。検索結果一覧の、青文字の部分をクリックいたしますと、それぞれの詳細な画面を表示します。例として、今回は「Web版史料纂集」の画面でご説明いたします。こちらは「Web版群書類従」の場合もほぼ同様だとお考え下さい。
紙面画像(青枠) |
テキストデータ(赤枠) |
書籍の紙面PDFを表示 |
書籍の紙面情報に基づくフルテキストデータ |
拡大/縮小が可能 |
新字で統一 |
印刷/ダウンロードが 可能 |
検索語句のハイライト |
|
データのコピー&ペーストが可能 |
まず右側の赤枠で囲った部分をご覧ください。こちらには紙の書籍をもとに作成されたテキストデータが表示されます。なお、歴史史料では旧字や異体字といった、現代で使用される漢字とは形が違う漢字がたくさん使われているのですが、それらはすべて新字に統一したデータとなっておりますので、歴史史料に慣れていない方でも利用しやすくなっております。
また、このテキストデータはコピー&ペーストができますので、論文やレポートに引用したいときに大変便利です。そして、左側の青枠で囲った部分には、書籍の紙面PDFが表示されます。こちらの画像は拡大・縮小ができ、印刷やダウンロードも可能となっております。
Web版の大きな特長が、テキストデータと紙面画像を同時に提供するという点です。既に申し上げましたように、テキストデータはコピー&ペーストができますので、論文やレポートに史料を引用する際の手間を大幅に短縮し、作業を効率化することができます。
さらに、書籍の紙面画像を並べて表示することで、紙面に含まれる視覚情報をカバーすることができます。たとえば、紙面の1行目をご覧いただきますと、途中から小さい文字で2行になっておりますが、これは「割書」とか「割注」と呼ばれる書き方のひとつです。こうしたものは、テキストデータにしてしまうと、どうしても情報として抜け落ちてしまうのですが、隣に紙面画像を表示することで、紙面特有の情報も確認しながらテキストデータをご利用いただけるメリットがございます。
まとめ―Web版「史料纂集」・「群書類従」とはなにか
まず、「史料纂集」・「群書類従」、それぞれスライドにお示ししました特長をもつ紙書籍の資料コンテンツがございます。
それらに、新たにフルテキストデータ、その全文検索機能、そしてオンラインでいつでも紙面画像を閲覧できる機能がプラスされたデータベース、それがWeb版「史料纂集」・「群書類従」です。「史料纂集」・「群書類従」、双方のWeb版をお使いいただくことにより、各分野の研究のさらなる発展に寄与できることを期待しております。
次回は、「史料纂集」と「群書類従」のWeb版を使う事でどのように文献調査に活用できるのか、石井悠加先生にご紹介いただきます。