図書館をつくる

OCLC News 第59号

2022.05.20
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OCLC News 第59号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。

目次

Internet ArchiveがWorldShare® Interlibrary Loanネットワークに参加

Internet ArchiveはOCLCのWorldShare Interlibrary Loanネットワークに参加し、ILLパイロットプログラムの一環として、WorldShare ILL、Tipasa®、ILLiad®を使用している図書館からのリクエストに対応するようになりました。Internet Archiveは、何百万もの無料の書籍、映画、ソフトウェア、音楽、Webサイトなどを集めた非営利の図書館です。

Internet Archive (OCLC シンボル: IAILL) の所蔵データはWorldCatに追加されており、紙媒体のコレクションの約10,000の逐次刊行物に由来する数百万の記事のレコードがWorldCatに加わりました。

ILL料金

インターネット・アーカイブにより無料で提供されます。

Internet Archiveへのリクエスト方法

Internet Archiveへの記事のリクエストは、WorldShare ILLネットワーク上の他の図書館にリクエストするのと同じ方法で行うことができます。スタッフインターフェースの所蔵ページで、貴学が必要とする年/巻をInternet Archiveが所蔵していることを確認したら、受付館コード(Lender string)にシンボルIAILLを追加するだけです。

オートメーション機能をお使いのお客様の場合

さらに、オートメーション機能をお使いの場合は、Custom Holdings Pathの最初のグループにIAILLを追加しておくことをお勧めします。貴学の依頼リクエストをInternet Archiveが最初に受け、その迅速なターンアラウンドタイムを実現する為には、シンボルIAILLしか含まないグループを作成することもお勧めします。

Internet Archiveのリクエスト資料送付方法

Article Exchangeでリクエスト資料を送信します。提供される記事はすべて、テキストが検索・編集できるようにOCR*を使用してスキャンされたPDFフォーマットです。
*Optical Character Recognition (OCR) は、ページの画像だけでなく、文字情報を認識してデータとして取込みます。

Internet Archiveの応答時間

Internet Archiveは迅速なサービスを提供しており、ほとんどの場合、数時間以内にリクエストに対応します。平均的なターンアラウンドタイムは37分です。

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リンク先はOCLC Community CenterのWSILL関連ページにつき、WorldShare ILLをご契約の機関のみご覧になれます。
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―OCLC ResearchのブログHanging Togetherより―
帰って来たプリント版?
2022年5月11日 ブライアン・ラボイエ

Photo by Amador Loureiro on Unsplash

数年前、LOCKSS、Portico、Internet Archiveのような組織が、デジタル資料へのアクセスの脆弱性を補うことを使命として現れました。最近では、物理的にアクセスできない紙媒体のコレクションへのアクセスを保護するために、デジタル資料が利用されるようになりました。COVID-19パンデミックの初期には、図書館がロックダウンされ閉鎖されたため、紙媒体コレクションへのアクセスが大幅に制限されました。これに対し、米国の大学図書館が中心となり設立され、所蔵資料のデジタルアーカイブを行うコンソーシアムであるHathiTrust は新たに「緊急一時アクセスサービス」(Emergency Temporary Access Service、略称ETAS)を立ち上げ、当該の資料のプリント版を所蔵していれば、著作権で保護されたデジタル版へのアクセスを一時的に提供するようにしました。このように、プリント版のコレクションは、仮想化(デジタル化)によってアクセス可能になったのです。

紙媒体の資料をパンデミックに適応させる

パンデミックによってもたらされた状況に対して図書館スタッフが行った最も初期の対応には、利用者とプリント版コレクションを再び結びつける革新的な方法も含まれていました。OCLC ResearchのNew Model Libraryプロジェクトでは、世界各地の図書館のリーダーにインタビューを行い、パンデミックという新しい状況に対する図書館の対応についての見解や、図書館業務や環境の変化の結果として生じる図書館の未来についてのビジョンについて聞き出しました。調査の結果、2020年4月から7月にかけてインタビューした29人の図書館リーダーのうち25人が、パンデミックの結果としてすべての対面サービスが停止したと報告していることが判明しました。しかし、2020年7月初旬までに、12の図書館がいくつかの対面サービスを再開しており、その中で最も多く挙げられたのは、利用者がドライブスルーのように図書館から資料を受け取ることができる新しい「カーブサイド」ピックアップサービスを含む、現物資料の貸し出しでした。

プリント版資料へのアクセスを回復することの重要性は、2020年春にREALMプロジェクト(REopening Archives, Libraries, and Museums)の第一段階が開始されたことによっても強調されました。OCLC、IMLS (Institute of Museum and Library Services)、バテル記念研究所 (Battelle Memorial Institute)とのパートナーシップによるREALMプロジェクトは、利用者に貸出される紙媒体の資料を通してCOVID-19ウイルスが拡散することを防ぐ為の取り扱い方法を調査しました。また、多くの図書館が、図書館の蔵書や図書館間貸出(ILL)で借用した現物資料を利用者の自宅の住所に発送する郵送サービスを開始または拡大したことにより、プリント版コレクションへのアクセスはさらに改善されました。

ETAS、REALM、そして現物資料のカーブサイドピックアップのような努力は、図書館コミュニティが紙媒体コレクションへのアクセスを重視し続けていること、そして資料にアクセスできなくなった時に生じるであろう混乱を表しています。しかし、パンデミック以前は、プリント版コレクションについては全く異なる認識が定着していたようです。多くの図書館スタッフが紙媒体コレクションの「縮小」戦略を求めていたことは、プリント版コレクションの大部分を図書館から離れた書庫に移動させる努力や、図書館の物理的スペース制限を緩和するのに役立っている、紙媒体コレクションのレコードの保持と保存の責任を分散させる手段としてのシェアード・プリント(Shared print、共同管理)イニシアチブの出現からも明らかです。紙媒体のコレクションは、図書館の建物の中で、より価値の高い活動に再利用できる希少な物理的スペースを消費していると考えられていました。より広い意味では、印刷物は過去の遺産であり、多くの図書館が将来を想像する場所ではないと考えられていました。

パンデミックの経験が記憶に新しい今は、紙媒体コレクションの将来について新たに検討する良い機会です。再評価をするにあたっては、パンデミックの間、学術図書館と公共図書館の両方において、プリント版コレクションへのアクセスが事実上強く見過ごされていたという事実の検討から始めると良いでしょう。”New Model Library: Pandemic Effects and Library Directions“(New Model Library: パンデミックの影響と「最新型図書館」に向けた進化)の調査結果は、図書館の指導者たちが、パンデミックの影響としてだけでなく、COVID-19が現れる前から存在していた、図書館コレクションを再構築するというトレンドの影響により、プリント版コレクションが変化しつつあることを認識していることを示しています。

しかし、図書館のリーダーたちから聞いた重要な反対メッセージは、学術図書館や公共図書館がサービスを提供するコミュニティでは、プリント版コレクションが依然として高く評価されているということでした。この点は、パンデミックによって印刷物へのアクセスが途絶えたときに、はっきりと浮き彫りにされました。

パンデミックがプリント版コレクションにもたらしたもの

パンデミック以前にプリント版コレクションに影響を与えていた傾向、例えば、図書館スペースの圧迫、資料の利用率の低さ、高価な電子リソースへの予算の再配分などは消えておらず、紙媒体コレクションは今後も新しい状況に適応させられ続けるでしょう。しかし、「New Model Library」調査に携わった図書館のリーダーたちに話を聞くと、図書館スタッフがプリント版コレクションの将来像を再構築していく上で検討に値するいくつかのポイントが浮かび上がってきました。

ポイント1:パンデミックは、プリント版を優先的に利用する人々がいることを再認識させるものであった。

この意味で、パンデミックによって必要となった電子リソースへのシフト(HathiTrust のETASや電子ブックやその他のデジタルリソースの提供強化など)は、これらのコミュニティのメンバーにとっては、より便利な代替手段ではなく、プリント版コレクションへの物理的アクセスが完全に回復するまでの必要かつ一時的な措置であるとみなされるでしょう。

ポイント2:プリント版コレクションは、電子資料へのアクセス手段を持たない利用者にとって重要なセーフティネットとなる。

すべての人が、デジタル化されたコレクションを効果的に利用するために必要なハードウェア、ソフトウェア、ネット環境、デジタルリテラシーを備えているわけではありません。こうした図書館利用者にとって、書籍やその他のリソースにアクセスする手段として、紙媒体資料はかけがえのない存在です。例えば、ある図書館のリーダーは、図書館のスタッフが、オンラインアクセスができない人々に紙媒体資料を届けるために、学校やシェルターに持参したり、フードバンクのかごに入れたりして、特別な努力をしていると話してくれました。

ポイント3:プリント版コレクションがなくなることはないが、パンデミックはアクセスや利用の方法が大きく変わる可能性を予見させた。

パンデミック発生時、図書館スタッフは図書館の敷地内に入ることなく利用者と印刷物を結びつける新しい方法を見出しましたが、こうした工夫のいくつかは、図書館スペースが再開された後でも存続しているかもしれません。例えば、スタッフは利用者とプリント版コレクションの間に立ち、ビデオ会議などのコミュニケーションチャンネルを利用して、プリント版コレクションの閲覧や検索を支援するという役割を担うようになるかもしれません。また、利用者主導の購入プログラムが拡大し、図書館のコレクションに加えられる前に、注文された資料が個人の自宅やオフィスに直接発送されることも考えられます。

プリント版コレクションと図書館の未来

これらのことは、図書館が「本の倉庫」であるという古い認識を復活させるべきであると言っているのではありません。「New Model Library」のインタビューでは、図書館のリーダーたちが希少な図書館スペースに対して相反する要求を強調する例が多く見られましたが、この点はパンデミックのずっと以前から図書館スタッフが痛感していたことです。また、電子・デジタル資料の提供や利用の拡大は、利用者がバーチャルな選択肢に慣れ、使いこなすようになるにつれ、パンデミックが縮小しても続くと思わます。このことは、紙媒体資料の発行部数とILL数を減少させると同時に、オンラインリソースライセンス費用を吸収するためプリント版資料から多額の予算を再割り当てすることを定着させるかもしれません。

図書館は、物理的空間でのプリント版コレクションの提供と、仮想空間での電子・デジタルコレクションの提供との間で、適切なバランスをとる必要があります。そしてこの為には、パンデミックの経験の結果、独自の変革のプロセスを経た図書館コミュニティのニーズと期待によって、段階的に情報を得る必要があります。

しかし、図書館スタッフがこのバランスを取るときでも、意思決定を支える重要な公理は、紙媒体コレクションは依然として価値ある資源であるということです― 一部の人にとって好ましいアクセス手段であると同時に、テクノロジー資源にアクセスできない人のためのセーフティネットとしても。個人がプリント版コレクションにアクセスし利用する手段は変わるかもしれません。場合によっては、バーチャル環境を活用することもあるかもしれませんが、図書館の紙媒体コレクションの重要性が変わることはありません。図書館スタッフが自分たちにとって最適な「最新型図書館モデル」を形作る準備をしているとき、図書館の未来においてプリント版コレクションが重要な役割を果たし続けることはおそらく間違いないでしょう。

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WorldCatの何百万ものレコードを強化・改善する絶え間ない努力

OCLCのメタデータクオリティチームは、貴学の資料がディスカバリー、リサーチ、ILLサービスを通じて、世界中のユーザーからよりアクセスしやすくなるよう、一貫してWorldCatレコードの改善に取り組んでいます。自動化されたシステムと手動によるエンリッチメントを組み合わせて、毎月平均400万件のWorldCatレコードのレビュー、削除、マージ、エンハンスメントを行っています。さらに、毎月280以上のコレクションをWorldCat knowledge base*1に追加し、45,000のコレクションを強化・改善しています。このような作業により、情報を求める人が必要な資料を、図書館で利用可能になった時点ですぐ、簡単に見つけることができるようになります。
*1 WorldCat knowledge base は 2022年5月現在、日本では未提供のサービスです。

私たちは最近、WorldCatレコードをさらに向上させるための2つの取り組みを開始しました。まず、個々の書誌レコードの件名標目を、WorldCatで利用できるようにした多くの典拠ファイルによって管理し、充実させることを開始しました。また、WorldCat knowledge baseレコードに、より多くのOCLC番号を追加しています。

2022年3月にこれらの取り組みを開始して以来、すでに4,000万件以上のWorldCat書誌レコードを強化・改善し、350万件以上のWorldCat knowledge baseレコードにOCLC番号を割り当てています。今後数ヶ月の間にさらに3億5千万件のレコードを改善し、世界中の図書館や情報検索者にとってより価値のあるものにする予定です。

典拠ファイルをよりよく組み込むために、既存の書誌レコードの件名を典拠ファイルにリンクさせることによって標目をコントロールしています。また、カナダ・フランス語のRépertoire de vedettes-matière(RVM)から英語の典拠ファイルへマッピングされているもののような、典拠ファイルをまたぐ標目を持つレコードを充実させることも行っています。これにより、質の高いレコードの維持が容易になり、図書館利用者がどの言語で検索してもリソースを見つけることができるようになり、標目典拠形が変更された場合でもレコードが確実に更新されるようになります。

また、現在OCLC番号がないWorldCat knowledge baseのレコードにOCLC番号を追加することで、貴学が契約している電子コレクションの可視性とアクセス性を向上させることができます。これらのレコードに貴学の所蔵資料を追加することで、WorldCat Discovery®に表示されたり、MARCレコードとして配信されるようになり、時間を節約することができます。ユーザーは、より完全な電子リソースコレクションから必要なものを見つけてアクセスすることができ、利用者はご契約中のタイトルがユーザーから利用可能であることを確認することができます。

貴学の図書館がWorldShare Management Services(WMS)をご利用中の場合、これらの恩恵は自動的に受けることができ、ユーザーは利用可能になり次第、これらの機能の恩恵を受けることができます。WMSを利用していない図書館では、WorldShare Collection ManagerでWorldCatの更新設定を確認し、これらの強化・改善された書誌レコードを受け取れるかどうか確認してください。通常のMARCレコードのダウンロードには、新たに割り当てられたOCLC番号を持つknowledge baseコレクションのあらゆるタイトルが含まれます。必要に応じて、WorldShare Collection Managerへのアクセスをリクエストしてください(OCLC Cataloging and Metadata Subscriptionに含まれています)。

現在進行中のWorldCatの品質改善についてご質問がある場合は、半月に一度のAskQCオフィスアワー(oc.lc/askqc)にご参加いただき、OCLCのメタデータ品質チームと直接お話頂けます。

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(紀伊國屋書店 OCLC事業部)

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