ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、略称SIPRI)により1969年に創刊されたシプリ年鑑(SIPRI Yearbook)は、軍備・軍縮・国際安全保障についての権威ある客観的データを提供するレファレンスとして、世界的な評価を受けています。
世界の核弾頭数はわずかに減少、進む核兵器の近代化
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、SIPRI年鑑2022年版(第53版)において、2021年の核弾頭数のわずかに減少したが、核保有国による核兵器の近代化は継続的に進められ、今後10年間では核兵器が増加すると予想しています。
核保有国9か国の2022年初頭の核弾頭数は12705個と推定され、うち約9440個が使用可能な状態で備蓄されており、そのうち3732個がミサイルや航空機に搭載され、約2000個(そのほぼすべてがロシアまたは米国のもの)が発射可能な状態にあり厳戒態勢下に置かれていると推定されています。2021年、ロシアと米国の使用可能な軍事備蓄の核弾頭数は、横這いの状態に保たれたものの、戦略的兵器の更なる削減及び制限のための措置に関する条約、新START(2010年から)では、非戦略核弾頭の総保有量を制限していないことにも注意を促しています。
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冷戦後の核兵器の減少に終止符を打つ兆し
SIPRIの大量破壊兵器プログラムのシニアフェローであり、米国科学者連盟(FAS)の核情報プロジェクトのディレクターであるハンス・M・クリステンセン氏は、「冷戦終結後の世界を特徴づけてきた核兵器削減が終わったことを示す明確な兆候がいくつもある」と述べています。また、同プログラムのディレクターであるウィルフレッド・ワン氏は、「すべての核保有国が核兵器を増加またはグレードアップしており、それらの国による核のレトリックと軍事戦略における核兵器の役割は先鋭化している。これは非常に憂慮すべきことだ」と述べています。
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核兵器が使用されるリスクは冷戦後、最大
2021年、核武装した国連安全保障理事会の常任理事国(P5)である中国、フランス、ロシア、英国、米国は、2022年1月3日に発表した共同声明にて、「核戦争には勝てないし、決して戦ってはならない」と確認したものの、P5のすべての加盟国における核兵器の増強を進めているとSIPRIは指摘します。また、ロシアは、ウクライナでの戦闘を背景に核兵器の使用可能性を公然と示唆し、各国の交渉は戦争のために停滞。SIPRIのダン・スミス所長は「昨年は核抑止、核軍縮の両面で大きな成果があったが、核兵器が使用されるリスクは冷戦の最盛期以来のどの時期よりも高くなったと思われる」と述べています。
より詳しく(SIPRIウェブサイト)
SIPRI年鑑の最新版では、核軍備管理および核不拡散の問題を詳細に扱うほか、2021年の通常兵器、武力紛争と紛争管理に関する地域別概要、軍事支出、国際武器移転、武器生産に関する詳細なデータと考察、化学および生物学兵器への対処に関する詳細な情報も含みます。
シプリ年鑑の各版は、それぞれ直近の1年の国際情勢や軍事・安全保障上の主な出来事・問題関心を反映しています。最新版と過去の版とを併せて参照すれば、年を追っての変化をより明らかに把握することが可能です。シプリ年鑑が提供するデータの客観性・信頼性は、世界中の軍縮問題研究者から、高い評価を得ています。毎年最新版を欠かさずご購入されますよう、お薦めいたします。
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