図書館をつくる

OCLC News 特別号: Annual Report 2019–2020

2021.01.06
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OCLC News 特別号
商品情報をはじめ、OCLCに関する様々な情報をご案内致します。
今号は特別号として、Annual Reportをご紹介します。

『OCLC News』一覧 >>

目次

OCLC Annual Report 2019–2020 FOCUS 20/20 VISION

OCLC President & CEO スキップ・プリチャードからのご挨拶
未来へのビジョン、コミュニティへのフォーカス
– A vision for the future, a focus on community –

同僚の皆様へ

全ての健全な組織と人々は、変化し、受け入れなければなりません。それがOCLCのような世界規模の技術的共同体であろうと、図書館一館であろうと、変化し、前進する必要があります。2020年は多くの複雑で困難な変化をもたらしました。私たちの健康、予算、日常業務、スケジュールに混乱がもたらされました。時代に伴う変化で加速したものもあれば、消え去ったものもありました。

にも関わらず私は、他の様々な機関と同様、図書館がこの困難に果敢に挑戦し、コミュニティの中心で力強く災難に立ち向かう姿を見ました。アクセスに対する障壁、人種間の不平等、経済的な困難を乗り越えるのを見ました。

変化していく環境を切り抜けるにあたって、私は皆さまと一緒に働けたことに感謝しており、また大いに触発されました。皆様のコミュニティに対する貢献、リモートでサービスを提供するにあたっての勤勉さ、図書館を安全に再オープンさせる道筋をつくるにあたっての皆様の努力は、まったくもって驚嘆に値します。

多くの障壁があるにも関わらず、コミュニティの未来に関する共有されたビジョンを現実のものにする為、我々はともに働き続けました。

  • 世界最大の共同カタログとリソース共有インフラの高い利用率を維持
  • OCLC Wise®とWorldShare® Management Servicesの新たな利用機関と、図書館とユーザー、研究者、パートナーをより良く繋げる多くの新機能
  • パンデミックにおけるEZproxyとWorldCat Discoveryに対する急速な開発・機能強化
  • キャンパスの財政に関する図書館の役割における、よりダイレクトで実行可能な例となる、図書館業務を学生の成功を図るツールとするような新たな分析・リポートツール
  • WebJunctionにおける図書館員のラーニングが記録的な増加、前年比248%。
  • オピオイド危機、責任あるデータオペレーション、機械学習、リンクトデータなど図書館に関連する幅広い課題に関する多くの重要な研究リポート
  • そして最も重要な、どのように安全に図書館を再開するか知るためのリサーチ、ツールキット、そして実践集。

また、以下にあるように、OCLCは新型コロナウィルスによる危機に図書館が対応するための多くのプロジェクトに参加しました。そのいずれもOCLCだけでは達成されなかったもので、これらの重要なプログラムに参加してくれた世界中のパートナーたちに感謝します。

以前持っていた将来に向けた短期的なビジョンは、一年前とは違う見え方をしているでしょう。しかし、OCLCを導く価値と、図書館をいつもコミュニティにフォーカスさせ続けた価値は揺らいでいません。我々は更にその上を行くでしょう。

コミュニティに奉仕することにフォーカスし続けてくれてありがとうございます。このことが、これほどまでに私にとって明白だったことはありませんし、コミュニティにとってこれほど重要だったことはないと信じています。

Skip Prichard
OCLC President and Chief Executive Officer

2020年度を振り返って

2020年度が始まった時、今日の状況を誰が予期できたでしょうか?

2020年、世界は著しく変化しました。しかし世界規模のパンデミックの影響を受けても、図書館とOCLCは強靭かつ柔軟なマインドを以て、我々のビジョンにフォーカスし続けました。OCLCと図書館界はともにこの困難な状況でシャットダウンに対応し、図書館コミュニティと利用者のために働きました。

新型コロナウィルスに対処し、パンデミック後の世界に目を向けるにつれ、今日のニーズに対するソリューションを創造することと、明日の成功の為のソリューションを創造することは、新たなレベルの緊急度に達しました。我々皆がリアルから主にバーチャル環境でサービスを提供するようになるにつれ、OCLCのグローバルなネットワークを通じて人々を図書館に繋げ、図書館同士を繋げることもまた、新たな意味合いや重要性を帯びました。そして無料でOCLCの知見、知識、専門技術、サポートを共有するという貢献は、専門性を向上させ、互いに助け合うための我々の努力の中心にあり続けました。

コロナ禍へのスピーディーな対応

コロナ禍が拡大した時、当初OCLCは図書館スタッフがOCLCサービスを状況に対応させる為の情報を速やかに作成することに注力しました。その後、図書館スタッフがシャットダウン期間中にスキルアップをしようとした為、図書館のリクエストに応えて、業務に関することから、バーチャルラーニングに焦点を移しました。そして今年の終わりには、我々のフォーカスは再開を計画している世界の文書館、図書館、美術館の支援に移りました。

文書館、図書館、美術館の再開支援

アメリカ国内の図書館と美術館が新型コロナウィルスに対応しながら再開し始めた時、美術館、図書館、文書館の資料を扱う為の明確な情報の必要性は、ますます緊急度を高めました。REALMプロジェクトの一端として、OCLCと米国博物館・図書館サービス機構(the Institute of Museum and Library Services)、バテル研究所(Battelle)は、図書館、文書館、美術館で広くみられる素材の上でコロナウィルスがどのくらいの期間生存するのか調査を行いました。2021年9月まで続くこの調査は、図書館員と利用者をウィルスに曝さない為に素材をどのように扱うか、信頼性のある、科学的根拠に基づいた情報を生み出すための調査に基づいています。 OCLCはこのプロジェクトを管理し、調査結果を理解し、図書館、文書館、美術館がより自信をもって再開を計画できるよう助けるツールキットを開発しています。

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41号 REALMプロジェクト:現状報告
42号 REALMプロジェクト 2回目の実験結果公開
44号 REALMプロジェクト3-4回目の実験結果公開
45号 REALMプロジェクト5回目の実験結果及び6回目の実験内容とツールキット公開

バテル研究所にて科学者のMike Mladineo氏がサンプルの準備をしている所。サンプルはColumbus Metropolitan Libraryから提供された本のページなどがある。

スキルアップ機会の提供

図書館員が家での時間をスキルアップに使おうとしたことから、WebJunctionのコースカタログへの登録が大きく増えました。2020年の3月と4月には36,000人がWebJunctionのコースに参加し、2か月で昨年の学習者22,000人を超えました。WebJunctionの最も受講されていたトピック上位5つは以下です。

  • 怒っている利用者への対処法 Dealing with Angry Patrons
  • 扱いが難しい利用者への対処法 Dealing with the Difficult Patrons
  • 顧客重視: カスタマーサービスの新興トレンド Being Customer-Focused: New and Emerging Trends in Customer Service
  • 安全な図書館とレジリエントなコミュニティを護る要因を増やすには Cultivating Protective Factors for Safe Libraries and Resilient Communities
  • いつでも期待の上を行くカスタマーサービスを Service Excellence in Challenging Times

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40号 新型コロナウィルスによる図書館閉鎖中に WebJunctionで学ぶスタッフが急増

イベントのバーチャルへの移行

我々は速やかに、リアルでの会合をバーチャルイベントに変更しました。3月には、OCLCグローバル評議会がオンラインで行われ、続いて図書館とパンデミック対応に関する円卓会議が何度か行われました。グローバル評議会による新たな二人の評議員の選挙も、初めてオンラインで行われました。ヨーロッパでは、OCLCはすぐにイベントをオンライン切り替え、第一波中に46のウェビナーを行い、1,590名が参加しました。アメリカでは、5回シリーズのリソースシェアリングに関するオンラインイベントを行い、4,100名以上が参加しました。ALA Virtual 2020では、OCLCはVirtual Spotlight Sessionとして、“Circulating optimism: How library workers have shifted rapidly to engage and assist their communities”をプレゼンしました。

新型コロナ関連リソース構築

図書館が利用者とより大きなコミュニティに奉仕する新たな道を探るのを助けるため、いくつかの新型コロナ関連リソースページを作成し、所蔵資料へのリモートアクセスを提供し、OCLCサービスの利用をコロナ禍の状況に合わせて最適化し、他館と協力するのに役立つタイムリーな情報を紹介しました。このページは今までに50,000ビューを達成しています。

無料eコンテンツの追加

世界的なコンテンツプロバイダと協力して、パンデミックの間は無料でアクセスできるeコンテンツをOCLCサービスに追加しました。このコンテンツリストには88のパートナーからの100以上のコレクションが含まれています。ここにある情報にはまた、現在のパンデミックに関連した90以上のリソースも追加されています。

無料eコンテンツのリスト(Excel形式)

https://www.oclc.org/content/dam/oclc/covid-19/COVID-19-Partner-Content.xlsx

価値ある情報の共有

OCLCのリソースシェアリングチームはシャットダウン初期に、コミュニティのニーズで満たされていないものがあることを発見し、一週間と経たずにウェビナー“Managing your library’s ILL services during the COVID-19 crisis”を作成しました。ウェビナーには約1,300人が登録し、4,000ビュー及び(レコーディングの)ダウンロードを達成しました。差し迫ったILLの必要に基づき、更に追加のウェビナーとバーチャルオフィス・アワー(OCLCスタッフが待機していて相談できる時間)を設けました。ILLの貸借資料の安全な返却の為に、クラウドソーシングを用いた活動も開始され、現在資料の貸し出しを行う館を特定するツール、またその情報を検索・フィルターツールを用いて可視化できるマップなどが使えるようになりました。この活動には、世界で2,100館以上が参加しています。

互いに助け合う

The OCLC Research Library Partnership (RLP)は図書館が自信をもって学習し、活動できるよう、力を結集しました。リソースシェアリングコンソーシアムSHARESネットワークは隔週でオンライン対話集会を行いました。RLP研究サポートグループはオンラインで“COVID check-in”セッションを行い、参加者が大学の研究事業に対する新型コロナウィルスの影響について意見交換しました。またメタデータ管理に関するフォーカスグループも、「不確実性の時代のメタデータ管理」について意見を交わしました。

コミュニティを一つにまとめる

図書館同士が繋がり、ベストプラクティスを共有するため、オンライン対話集会“Libraries and the COVID-19 Crisis”を開催しました。これには2,100人以上が参加し、チャットを通して活発に意見交換し、経験やアイディアを共有しました。現在までに対話集会のウェブページは16,000ビュー以上を達成し、8,000人以上がイベントのレコーディングやパネリストと参加者によって共有されたリソースにアクセスしました。

サービスのインプリメンテーションをスピードアップ

学外から契約コンテンツへのリモートアクセスを24時間365日可能にする(※メンテナンス時除く)EZproxy hosted版への需要は伸び続けています。hosted版への移行をサポートする為、導入プロセスを最適化し、稼働までの時間を大幅に短縮しました。これにより、より効率的に設定を確認し、利用者をeコンテンツと繋げることが可能になりました。

今日のニーズへの回答と、明日の成功を創る

OCLCは2020年度も、システムやメンバーに奉仕する方法を改善する為、図書館と協働してきました。
我々の公立図書館が利用者・コミュニティとの関係を再構築するのを助ける努力は更に前進しました。
クラウドベースの図書館サービスプラットフォームには、学術図書館と図書館グループの成功に欠かせない
多くの新機能が追加されました。
また開発と革新を加速させる新たなAPIインフラを構築しました。
更には、新たな強化されたサービスを通して、図書館が紙媒体のコレクションを把握・管理するのを助ける
パイオニア的な働きをより発展させました。

最初の公共図書館向けコミュニティとの連携活性化システム

OCLC Wise®はコミュニティとの連携活性化システムで、公立図書館が新たな繋がりを作るのに活用されています。オランダでは既に75%以上の公立図書館で使われており、OCLCは2018年にアメリカにも導入されるとアナウンスしました。

2020年度、インディアナ州のAllen County Public Library (ACPL)はアメリカでWiseを利用開始した初めての図書館となりました。Anythink Librariesも導入を開始し、Chesapeake Public Libraryはコロナ禍におけるシャットダウン中にバーチャルローンチを行いました。この他、Bucks County Free LibraryとFayetteville Public Libraryも導入を行う予定です。

OCLCはヨーロッパにおいてもWiseの拡大に努めており、ベルギー・フランドルのデジタルソリューションを提供するNPO、Cultuurconnectから115館が加わりました。現在、Cultuurconnect から416の分館を有する149の図書館がWiseを利用開始しており、1,200万のアクティブなユーザーアカウントがあります。このプロジェクトにはフランドルの全315館の図書館が含まれており、2021年を通して段階的にWiseが導入されます。オランダでは、世界で最も革新的な公立図書館の一つであるDOK Delftも、Wiseのユーザーに加わりました。

初めてのクラウドベースの図書館サービスプラットフォーム

WorldShare® Management Services (WMS)のコミュニティは成長を続けており、世界で680の図書館がWMSを導入しています。現在23か国の図書館がWMSをクラウドベースの図書館サービスプラットフォームとして利用しています。200以上の新たな機能強化が行われ、そのうちの70%以上が、コミュニティからの要望に応えたものです。コミュニティの声は、図書館が業務プロセスを再設計し、利用者と相互作用する方法を改善するのに役立っています。最もポピュラーな変化のいくつかは、キャンパスの会計システムとの統合、トレーニング及びテストの為のWMSサンドボックス、エンドユーザーのトライアル調査をより簡単にするツールです。

今年、ケベック州の大学連合であるthe Bureau de coopération interuniversitaire (BCI)の図書館関係の分科委員会となっているケベック州大学図書館連合の18館が、WMSの利用を開始しました。これはOCLCにおいてはじめての、北米コンソーシアムに向けたフランス語によるWMSのトレーニングになります。

新たなWMSコミュニティのメンバーは、以下がいます。

  • 北米
    • the Canadian Museum of History and the Canadian Museum of War
    • Texas A&M University at Texarkana
    • Rensselaer Polytechnic Institute
    • Oklahoma City University and Law School
    • Cleveland Museum of Art
    • University of Central Arkansas
    • the law libraries at the Universities of Pennsylvania, Tennessee, and Arkansas at Little Rock
    • the Museum of Fine Arts, Houston
  • ヨーロッパ
  • 中東
    • Zayed University library in Dubai
    • Sultan Qaboos University in Oman
  • 東南アジア
    • the Vietnamese Germany University(ベトナム初のWMS契約機関)

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41号 WorldShare Management Servicesで共にイノベーションを
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製品開発における新たな“API first”アプローチ

API (application programming interfaces)は、モバイル端末、パーソナル(デジタル)アシスタント、その他デバイスをまたいで変わりゆくユーザーの期待にまとめて対応するための、OCLCのシステムをメンバーのシステムに繋げるキーです。2020年度に、OCLCは新たなAPIインフラを構築しました。このAPIインフラはクラウドに構築され、最高クラスの基準をクリアし、製品開発における「APIファースト」アプローチをサポートする、一貫し、かつ再利用可能なデザインパターンに従っています。このことは製品のユーザーインターフェースとAPI機能がより近くなることを確実にし、デベロッパーにより多くのOCLCサービスと相互作用し、パートナーと一体化し、より速く革新を進める柔軟性を与え、OCLCメンバーや関係者全ての利益となります。

我々はこの新たなAPIインフラを活用してWorldCat Metadata APIの新たなシェアードプリント機能に関する機能強化を行い、2020年後半にWorldCat Search API 2.0.のリリースを行いました。我々はこの勢いでOCLCの次世代のWorldCat Discovery APIを開発します。

シェアードプリントコレクションにおけるパイオニア的働き

OCLCのシェアードプリントコレクションにおけるパイオニア的な働きは加速しました。

図書館もしくは図書館グループがコレクティブコレクションの視点で所蔵を可視化することができるウェブアプリケーションGreenGlass®は、単館とグループプロジェクト合わせて400館以上で使われています。これらの図書館はこのサービスを紙媒体のコレクション管理に必要な情報、例えばどのタイトルを除籍し、保管し、デジタル化し、保管場所へ移し、特別コレクションに加えるかを判断する為の情報を得る為に使いました。

アンドリュー・W・メロン財団からの100万ドルの助成金を受けて、Center for Research Librariesとのパートナーシップのもと、定期刊行物の登録をサポートするためにシェアードプリント登録を拡大強化し、様々なOCLCサービスでシェアードプリントのコミットメントを見つける為の新たな強化された方法を開発しました。

WorldCatに登録されたシェアードプリントのコミットメントの数は、573,930件から2,370,533件に増え、400%にも達しました。

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39号 プリント版資料への対応選択に自信と透明性を
44号 OCLCと米国・研究図書館センターの共同管理用データインフラ整備プロジェクト完了
45号  図書館員の時間旅行、シェアード・プリント(紙媒体資料の共同管理)、図書館同士がよい存在であること

人々を図書館へ、また図書館同士を繋げる

2020年度はかつてなく繋がりの力が強調された年でした。
新型コロナウィルスによるパンデミックが世界中を瞬時に覆った時、OCLCサービスは図書館が利用者と、
また図書館同士で繋がり続けるのを助けました。
OCLCサービスを通して図書館は、コロナ禍でもなくならないバックオフィス業務と
ユーザーエクスペリエンスを改善することに焦点を当てつつ、
図書館コレクションへのアクセスを前進させ続けました。

図書館コレクションデータの、最も包括的なネットワーク

図書館コミュニティはWorldCatのレコード数を4億8,200万件へ、また所蔵数を29億件へと増やしました。出版社のパートナーは102の新たなコンテンツコレクションを、利用者と必要な情報へと繋げる為にWorldCat Discoveryのセントラルインデックスに追加しました。OCLCはまた、ヨーロッパの文化的遺産のデジタルプラットフォームであるEuropeanaとの協力のもと、重要でグローバルなリソースを追加することも続け、デジタル化された資料の何百万ものレコードをWorldCatへと追加し、これらのオープンコンテンツを簡単に発見可能にし、また図書館を通して利用者、研究者、学生に無料でアクセス可能にしました。

OCLCはTaylor & Francisとパートナーとなり、eコンテンツのメタデータワークフローを自動化し、図書館員の手を介す必要をなくしました。また図書館が効率的に新たなWorldCatレコードを作成するのを助けるため、Getty Art & Architecture Thesaurus (AAT)の典拠ファイルとRépertoire des vedettes-matière (RVM)典拠ファイルを追加しました。

世界最大のリソースシェアリングコミュニティ

OCLCはILLのグローバルネットワークを拡大し、WSILLプラットフォームを機能強化することで、図書館リソースシェアリングへのコミットメントを進めました。WSILLは新たなAutomated Request Managerでさらに改善され、Automationの設定が簡単になり、図書館員のILLリクエスト処理に必要な時間を節約し、またArticle Exchangeを通じてGet It Nowで購入した記事を利用者に届ける機能も改善されました。

今や300以上の機関がTipasa®を使っています。(※Tipasaは2020年末時点で日本では未提供のサービスです。)Tipasaは世界初のクラウドベースのILLマネジメントシステムです。このシステムは年中通して機能強化されており、既存のユーザーポータルの代わりとなる、改善されたアクセシビリティと刷新されたデザインを有するMy Accountインターフェースの導入もこれに含まれます。WMSとTipasaを両方ご契約頂いている機関の利用者は、新たなMy Accountの使いやすいインターフェースから、ILLリクエストと貸し出しの管理が可能です。

またOCLCのスマートなフルフィルメントを前進させる働きは、より詳細な所蔵情報を追加することで強化されました。これにはWorldShare ILLとTipasaインターフェースにおけるWorldCat knowledge baseの所蔵情報も含まれ、利用者がより素早く電子リソースを見つけられるようになりました。

OCLCはまた、コミュニティの要望に応えた、図書館のILL活動がコロナ禍の間も続けられることを確実にする機能強化もサポートしました。これらにはILLリクエストのaging periodを延長すること、コロナ禍の間も貸し出しを行う機関をわかりやすくするOCLC profiled groupsの作成、返却資料を受け入れている機関を特定し、貸借資料の返却に役立つ、コミュニティの手によるマップも含まれます。

関連した2020年のOCLC News

38号 スペイン国立研究協議会(Consejo Superior de Investigaciones Científicas)が OCLCのWSILL(WorldShare® Interlibrary Loan)ユーザーに
45号  コロナ禍におけるILL資料返却と期限超過の対応について

ディスカバリーサービスにおける他にはないユーザーエクスペリエンス

OCLCはThird Iron社のLibKeyディスカバリーツールをWorldCat Discoveryに統合し、検索結果からPDFファイルへワンクリックでアクセスできるようにしました。OCLCはローカルにおけるニーズを満たすために検索結果のフィルタや版のグルーピングを可能にするなど、表示機能を調節する為にWorldCat Discoveryでより多くのオプションを提供しました。利用者が検索に追加する語を見つけられるよう、複数の典拠ファイルをまとめて検索するように検索機能も拡張しました。

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36号 OCLCがThird Ironと提携し、シームレスな電子ジャーナルの接続と閲覧体験を提供

図書館の影響力と価値を示すアナリティクス

OCLCはEZproxy hosted版ログにおける膨大な数の電子資料の利用データを、図書館がよりよく理解するための、すぐに使える分析サービスであるEZproxy Analyticsをローンチしました。追加でご契約できる機能を使えば、EZproxy Analyticsはデータ保存、抽出、エンリッチメント、リポート、可視化などの全ての分析プロセスを管理することができます。これによって図書館が簡単にリソースの影響と価値を証明する知見を得ることができます。これらの知見はまた図書館がコレクションの最適化を行い、ベンダーとパッケージの契約に関する取引を行い、利用者にリモートで奉仕するより良い方法を探り、図書館サービスを学習成果に繋げる助けとなります。

関連した2020年のOCLC News

37号 OCLCの新サービスEZproxy Analyticsが、図書館に電子リソース使用に関する優れた洞察を提供
41号  EZproxy Analytics -マンチェスター大学での試験的利用-

知見、ノウハウ、サポートで貢献する

貢献は図書館員とOCLCのDNAに刻み込まれています。
OCLCは図書館業界を導くようなリサーチを通して、
図書館が未来に向けて考え、計画を立てるのを手助けします。
イベントやメンバーエンゲージメントを通して、
OCLCは図書館同士で知識を共有するような機会を設けます。
OCLCのオンラインコミュニティセンターでは、
お互いに専門的技術とサポートを共有しています。

リンクトデータにおける継続的リーダーシップ

OCLCは、図書館と学術コミュニケーションコミュニティで進行中である、リンクトデータ管理イニシアチブをサポートする“Shared Entity Management Infrastructure” (SEMI)を開発すべく、アンドリュー・W・メロン財団から240万ドルの助成金を受けました。

SEMIに至るまでに、OCLCはアメリカの16の図書館と協力し、Creating Library Linked Data with Wikibase: Lessons Learned from Project Passageを発行しました。この研究プロジェクトは、リンクトデータの技術的仕組みがわからなくても図書館リソースを記述できるような方法でリンクトデータを作成する実験を行いました。この試みは、現在のSEMIにおける業績へと至る道を開きました。

OCLCはまたデジタル化された文化的資料を発見し、評価し、利用することにおける、研究者の能力を増加させる方法を評価するCONTENTdmリンクトデータパイロットを完了しました。その間、図書館員のより良い記録環境での効率性を改善する方法も調査していました。このパイロットプロジェクトは文化的資料の記述を管理しするリンクトデータモデルを開発し、フルスタックのWikiベースシステムを構築し、その限度を計り、データエントリーとディスカバリを改善する新たなアプリケーションを作り出しました。さらに、実体(Entity)に標目(Heading)をマッチングさせるための照合サービス(reconciliation services)を最大限に利用しました。

関連した2020年のOCLC News

37号 OCLCがリンクトデータ管理構想を支援するインフラ整備に対してメロン財団の助成金を獲得
38号  OCLC Researchのリンクトデータ実験プロジェクト「Project Passage」
43号  リンクトデータはアーカイブ資料と特殊資料コレクションで進化する: OCLC RLPから新しい出版物「アーカイブ資料と特殊資料コレクションのリンクトデータ」
44号 リンクトデータが図書館にもたらす恩恵
45号  メタデータは次世代へ移行する

リサーチでライブラリアンシップの新たな分野を開拓する

アメリカの大学からなるコンソーシアムであるthe Big Ten Academic Alliance (BTAA) とともに準備された“Operationalizing the BIG Collective Collection: A Case Study of Consolidation vs Autonomy”は、BTAAのコレクティブコレクション管理における、コンソーシアム内の緊密なコラボレーションの恩恵について探求しています。リポートにおける共同作用へのアプローチは、他のコンソーシアムにも広く応用可能で、参考にできる教訓や推奨慣行が提供されています。BTAAの図書館は、そのコレクティブコレクションであるthe BIG Collective Collectionを、リポートにあるアウトラインに影響を受けて構築しました。

リポート“Responsible Operations: Data Science, Machine Learning, and AI in Libraries”は、図書館業務におけるアルゴリズム、データパターン、インテリジェント機器のより良い利用の為に研究が必要とされる7つの領域について定義しています。このリポートは大学、図書館、美術館、文書館等の70以上の図書館員と専門家の協力のもと作成されています。

Public Library Associationとの協働で、OCLCは3つのリポートを発行しました。

  1. Public Libraries Respond to the Opioid Crisis with Their Communities: Summary Report
  2. Public Libraries Respond to the Opioid Crisis with Their Communities: Case Studies
  3. Call to Action: Public Libraries and the Opioid Crisis

3はアメリカ全土を覆う公衆衛生の危機に図書館が地域で対応する方法を検討する為のテストされた方策を提供するリポートです。” Call to Action”は、地域のパートナーと協力してコミュニティにおける対応を策定した8館の公共図書館ケーススタディ及び政府機関、保健社会福祉機関、地域保険組織活動、図書館長らとの議論を基に作成されています。

Open Content Activities in Libraries: Same Direction, Different Trajectories—Findings from the 2018 OCLC Global Council Surveyは研究図書館と大学図書館からなる大規模なグループが投資を行う、現在および将来のオープンコンテンツ活動とそのエリアを統合しました。69ヶ国の511名からの解答者はオープンコンテンツ活動と大いにかかわっています。この調査は、統計的手法と機械学習を用いたオープンリサーチデータの管理や、デジタル化されたオープンコレクションの管理方法に新たなサービスが現れると予測しています。

メンバ―同士の繋がりを深める

OCLC理事会長、Los Angeles Public Library図書館長 John Szabo

全キャリアを通してOCLCと関わってきた図書館員として、OCLCと国際的な図書館員およびビジネスの専門家からなるその評議会とともに働けることを誇りに思っています。私は図書館の発展の為に細心の注意を払うOCLCリーダーたちやスペシャリストたちの仕事にインスパイアされています。評議会はOCLCのミッション達成の務めを負っており、いつも戦略的対話に従事しています。私は世界中の図書館と文書館は、サービスというミッションを信じ、共有する組織があるということで非常に幸運だと信じています。

世界各地の図書館を代表し、世界各地の図書館が直面する問題に対する意見を反映するメンバーの能力を強化させるために、我々はグローバル評議会を変容させ続けました。評議会はディスカバリーやフルフィルメントのフォーカスするエリアを選択し、2019年11月から2020年1月にかけてグローバルに行われた調査を主催し、68ヶ国から1367名が参加しました。結果はこちらからご覧になれます。

また2021年度に向けて、評議会は「持続可能な開発目標(the United Nations Sustainable Development Goals, SDGs)」をフォーカスエリアとして選択し、SDGs について理解するために14人の代表が予備調査を終えました。調査のインプットと展望を得るためにOCLCメンバーと共有されている調査ツールについて知らせるのに追加の調査が役立ちました。各図書館は2021年1月31日までにLibraries and Sustainable Development Goals surveyに対して回答するよう推奨されています。評議会は、OCLC理事会メンバーとIFLA次期代表のBarbara Lisonが、SDGsについて調査し、IFLAスタッフと協力できるか探るよう強く推奨してくれたことに感謝しています。

2020年度、OCLC理事会にはサンディエゴ大学の大学図書館長、Theresa S. Byrd博士が加わりました。オランダ・ユトレヒト大学の図書館員Anja Smit、香港理工大学図書館員のShirley Chiu-wing Wongも2021年度にOCLCグローバル評議会に加わる予定です。

2019-2020 OCLC理事会

非営利団体として、OCLCは15名からなる理事会によって統治されており、その半分以上は図書館員です。6名の理事は48名からなるOCLCグローバル評議会より選ばれます。

前列左から: Ginny Steel, John Patrick, Sarah Thomas, John Szabo, Skip Prichard, Cindy Hilsheimer, Barbara Lison.
後列右から: Kathleen Keane, Jim Neal, Theresa Byrd, Craig Anderson, Madeleine Lefebvre, Brady Deaton, Bernadette Gray-Little, Jacques Malschaert.

コミュニティのカタリストになる

地域評議会は共通のテーマ”Libraries Futures: Community Catalysts”(きっかけとしての図書館:あらゆるコミュニティを未来につなげる)を共有しました。23ヶ国から集まった400以上の図書館員が、50名以上のプレゼンターが登壇する2つのカンファレンスに参加しました。

  • 2019年10月、アリゾナ州フェニックスにて、アメリカ中から200名近い図書館員が集まり南北アメリカ地域評議会会議に参加しました。イベントには二つのプレミーティングが用意され、6つの基調講演が行われ、その他多くの参加者主導によるセッションがありました。アメリカ、カナダ、ドイツ、スロバキアから参加者が集いました。
  • 2019年11月、シンガポールで、11回目のAPRC会議(アジア太平洋地域評議会会議)が二日間に渡って行われ、19ヶ国から200名以上の参加者が集いました。全員参加かつメンバ―主導のセッションが行われ、メンバー同士のネットワーキングや現地の図書館訪問が行われました。
  • 11回目のヨーロッパ、中東、アフリカ地域評議会会議はオーストリア・ウィーンにて3月に開催される予定でしたが、新型コロナウィルス流行の影響でキャンセルされました。

アイディアと経験を共有する

2019年にギリシャのアテネにて国際図書館連盟(IFLA)総会が行われ、OCLCも参加しました。OCLCの参加とオピニオンリーダー的行動によって世界中の図書館界リーダーたちとの重要な繋がりを得ることができました。800名以上がOCLCのプログラム・活動に参加し、約3,000名がOCLCの展示を見たりイベントに参加したりしました。

米国・公共図書館協会(Public Library Association)のカンファレンスにおいて、5つの公共図書館から参加したリーダーたちがOCLCブースで“Community Engagement Spotlight Talks”を行いました。350名以上がこの10分間のプレゼンテーションを聞き、このプレゼンではいかにして図書館が重要な地域における対話を促し、インパクトを与えるためにパートナーとなり、価値あるコミュニティプログラムを作成しているかの良い例を紹介しました。OCLCはまたOCLC Community Engagement Awardを創設し、アメリカの公共図書館における素晴らしい地域と関わる活動を表彰しました。5,000ドルの報奨金も2021年度に授与される予定です。

280館以上の図書館のリーダーたちがOCLC Germanyの第15回annual Bibliotheksleitertag (Library Directors Day) 2019に参加しました。基調講演やスタッフのプレゼンテーションを通して、参加者たちは自館をより革新的で、デジタルで、ユーザー中心にするかのアイディアを探求しました。

OCLCのオランダにおける最大の、顧客と接するイベントであるContactdag 2019がロッテルダムにて開催され、オランダとベルギーから260名の図書館員が参加しました。イベントでは“Facts and Stories,”というテーマのもと、参加者とOCLCスタッフとリーダーたちが、いかにFact(事実)とStory(ストーリー)が知識とコンテクストを提供するかについて議論しました。

APRC会議における一枚

FY20 Financials

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